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ローカルフレンズ南大隅町編④ 風の人と土の人

  • 2023年09月07日

    今回のローカルフレンズ・梅木さんが運営するNPO法人「風と土の学び舎」。 
    町の外からやってきて、新しい風を吹かせる「風の人」。地域にどっしり根を張って生きる「土の人」。風の人と土の人が学びあうことが、町の「風土」を作るという思いが名前に込められています。 2週間にわたって滞在した、ローカルフレンズ南大隅町編。最後は、この町の象徴的な風の人と、土の人をご紹介します。
                           鹿児島放送局ディレクター 赤﨑英記

    夫婦で夢中!地元暮らし 

     この日、梅木さんの案内で向かったのは山間にある大久保集落。

     ここで畜産を営む大久保弘行さん・幾美さん夫妻です。築120年の民家で暮らしています

    弘行さん

    代々この家に住んでるんだけど、江戸時代にこのあたりに立ってた木で作ったんだと考えると歴史を感じる。昔の雑木は硬くて釘もたたないし、いまだに松ヤニも出てくる。丈夫なはずだよね。

    柱から松ヤニが

    生まれてからずっと、この町で暮らす「土の人」大久保さん。36歳の時、海外留学生のホームステイ受け入れを始めました。その名も、「からいも交流」。英語もほとんど話せない農村の皆さんが外国の人々と暮らすということで、当時はたびたびニュースに取り上げられたそうです

    からいも交流の思い出をまとめたアルバム
    弘行さん

    僕は8人兄弟の末っ子で長男。小さいころから跡継ぎだといわれてきた。田舎を出られないことで損をしたとか思いたくなくて、いろんなことに挑戦したいなって思っていたんです。

    これまで70人ほどの留学生を受け入れ、寝食を共にしてきた大久保さん。 講演の依頼で全国各地へ出向いたり、中国からの留学生が帰国後、結婚してパートナーを連れて突然やってきたことも。地元を出られない反動で始めたこの活動で、大久保さんは「目論見どおり、楽しい人生になった」と笑います。

    そんなお話を伺っているとお昼時。台所には妻・幾美さんの姿が。大変ありがたいことにお昼をごちそうしてくださるそうです。

    「じゃがいもの煮たくい」に、自家製の黒米を使った「和風ちまき」・・・。どこか懐かしくておいしい、気持ちまで豊かになる昼食でした。

    幾美さんは自ら栽培したもち米を使ったお餅やあくまき、野花で作ったブーケなどを物産館で販売しています。今ではよく見られる活動ですが、物産館ができる以前から、地域の女性たちとともに、小さな直売所を立ち上げ、運営していたそうです。

     

    幾美さん

    物産館で花束を買ったお客さんが、「どんなところで栽培してるんですか?」ってわざわざここへ見に来たこともあるよ。道端で摘んだ花なんだけどね(笑)お餅もお花も結構人気でね。売り上げをコツコツ貯めて、海外旅行にいったり。田舎で楽しくやってますよ。

    共に75歳のおふたり。畜産のお仕事の他に、いくつも習い事を掛け持ちして忙しい毎日を送っています。「赤﨑さん(ディレクター)も仕事ばっかりしていたらいかんよ。楽しみを見つけないと」・・・。人生のお手本に出会ったような気がしました。

    二人の出会いは梅木さんが大学生の時

     さて、大久保さんと、ローカルフレンズ梅木さんの出会いは、梅木さんが東京農大に通っていた19歳の時。からいも交流の活動に興味を持った梅木さんが、根占を訪れたことがきっかけでした。梅木さんは、このとき滞在した大久保家をはじめとした人々の温かさに触れ、移住を決意したそうです。

     

    梅木さん

    山とか海がきれいとか、場所の魅力もたくさんあるんですが、やっぱり人の魅力。ほんとに、一人一人個性がすごいですから。

     人を生かした町作り 「風の人」の挑戦 

    梅木さんが推す人の魅力。そんな南大隅町の宝を生かして、地域づくりをしようと奮闘する「風の人」がいます。

    大久保さん宅からもほど近い、栗之脇集落の民家。 実はここ、民宿なんです。

    オーナー有木円美さん(左)

     「私の同志です!」と梅木さんがご紹介してくれたこの方が、オーナーの有木円美(ありき・まどみ)さんです。

    鹿児島市出身の有木さんは、2017年に地域おこし協力隊としてこの町にやってきました。退任後もこの町に住み続け、7年目になります。

     

    有木さん

    本当に人に惹かれました。みんなで同じ方向に向かって頑張ろうっていう空気感というか、すごいなって。前進、前進の空気感の中にいるので、私もできることないかなって。

    梅木さんが「有木さんの職業は一言で説明できないんです」と言うほど、様々な形で町作りに力を注いできた有木さん。梅木さんのNPO法人スタッフや、地元のフリーペーパーやウェブサイトのライター、大工さんのお手伝いまで!そんな多忙な日々を送る中で、温め続けてきたのが民宿でした。

     

    有木さん

    南大隅町は素敵な町だけど、集える場所、泊まれる場所がもっと必要だと思っていました。 もともと商店だったというこの古民家を、他の町で町おこしに取り組む仲間や、地元の人たちの手を借りてリノベーションして、去年10月にオープンしました。

    カプセルタイプの寝室

    今回、私も1泊させて頂きました。カプセルタイプの寝室に五右衛門風呂、たくさんのわくわくする仕掛けが施されています。

    自分でまきをくべて沸かす五右衛門風呂

    中でも有木さんのお気に入りは、この棚。町のシンボル、辻岳をイメージして作ったそうですよ。

    翌朝、朝食は有木さん自ら腕を振るいます。

    地域のお母さん達が普段作っているようなお料理を心がけているそうです。

     

    有木さん

    私一人でおもてなしして何かを伝えられるとは全然思ってなくて、外から来てくれた人を地域の人と引き合わせて、勝手に仲良くなってみたいな。この町の「人の魅力」を感じてもらって、地元の人たちにとっても外からの刺激を得られる場所になっていけたらいいなと思っています。

    近所のお母さん達が交代で民宿を切り盛りする、「日替わり女将」などの取り組みも計画中なんだとか。町の外からやってきたからこそ気づけた「人の魅力」を生かした町おこしは、まだ始まったばかりです。

    滞在最後の夜

    2週間にわたる滞在も、いよいよ明日が最終日。ローカルフレンズ梅木さんの自宅に、今回お世話になった皆さんが集まり、送別会を開いてくださいました。

    宴も盛り上がった頃、梅木さんがこんなことを言い出しました。

     

    カメラを貸してもらってもいいですか?最後は私たちにインタビューさせてください!南大隅滞在の感想をお願いします!

    ディレクター
    赤﨑

    移住者をはじめ、町の外からやってくる人たちを普段から積極的に受け入れているからか、昔からの知り合いの様な居心地の良さを感じていました。外の皆さんの意見を否定せず、より南大隅町での暮らしをもっと楽しくする材料にしようとする姿、とても刺激を受けました。本当にありがとうございました!

    滞在の感想というよりは、みなさんへのお礼になってしまいました・・・。普段はカメラを向ける立場ですが、撮られるというのはこんなにも緊張するものなのですね。。。南大隅町の皆さん、本当にお忙しい中、あたたかく受け入れてくださり、ありがとうございました!

      • 赤﨑英記

        鹿児島放送局ディレクター

        赤﨑英記

        生まれも育ちも鹿児島市。2児の父。
        地元民放で送受信技術を担当後、 ディレクターとして、鹿児島の魅力を県内外に発信する職人やアーティストなどを取材。 2021年入局。

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