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どうなる!?電気料金 はじまった新制度

  • 2024年4月25日

去年6月、平均で2割値上げされた北海道の電気料金ですが、この4月から、さらなる負担増につながる制度の見直しの影響が続々と出てきます。再生可能エネルギーの普及のために国が料金に上乗せする賦課金は1キロワットアワーあたり2円あまり値上がり、値上がりした電気料金の激変緩和措置として国が行ってきた補助金も1キロワットアワーあたり3・5円分が5月で終了するため、合わせると、1か月あたり300キロワットアワー使う家庭で1,677円の負担増となる計算です。

値上げが続々と

さらに実は新たな制度もこの4月から始まっています。それは発電所を維持するためのお金の負担の在り方を変えるものですが、この制度によっても一部の電力会社のなかで値上がりが起きています。

この制度は、容量市場という仕組みで、電力事業を行うために必要な費用である燃料や発電所の維持にかかる発電費や、電気を送るためにかかる託送費などのうち、発電費について、自ら発電せずに小売りだけをしている電力会社も含めて国がお金を集めて確保します。国際情勢の変化による燃料費の高騰などで不安定になりがちだった発電所の経営を後押しする狙いです。

ところがこれにより発電所を持たずに電気の小売りだけをしている会社もしっかりと発電費を負担することになったため一部で電気料金が値上がりするという事態を招いたのです。東京で再生可能エネルギーを使った電力を販売する会社では、4月から1キロワットアワーあたり2円あまり、値上げしました。さきほどのモデル家庭だと600円あまりの値上げとなる計算になります。

発電所のコストを皆で負担

容量市場を運営する国の機関の担当者は、これまでもかかっていた発電にかかる費用について国が代わりにお金を集めることで、これまで発電所が回収しきれていなかったコストも確保し公平にコストを分担できると説明します。

電力広域的運営推進機関 山次北斗 企画部長
「負担すべきものを負担していただく、いままで市場とかの仕組みのなかで場合によっては負担しなくてもよいやり方があったかもしれませんが、これからはそうではなく、皆で負担していくということになる」

“脱炭素“で既存原発も追加

この制度には、もう一つの目的があります。それは再生可能エネルギーによる発電所の新設を後押しすること。2050年の脱炭素化に向けて今ある火力発電所なども多くを脱炭素化していくことが求められています。そのためには大量の出力を備える脱炭素の発電所が必要ですが、多くの投資が必要となるため、電力会社の背中を押すために発電所を建設し維持していくための費用の回収を国がすべて保証することにしているのです。しかし、さらなる値上げの懸念がここにあります。去年5月に成立したエネルギーの脱炭素化のための法律、GX関連法により対象に既存の原発が追加されたのです。この法律で「国は原子力事業者が原子力施設の安全性を確保するために必要な投資を行うこと、その他の安定的にその事業を行うことができる事業環境を整備するための施策を講じること」と定められたことを受けて、再稼働のために必要な費用も来年以降、この制度を利用して調達できることになったのです。

道内では、運転停止中の泊発電所が対象となり得ます。およそ1,800億円かかる防潮堤の設置など、再稼働のためには多くのお金が必要となります。北海道電力に取材したところ、「泊発電所における活用については、制度の検討状況などを注視しつつ、今後検討を進めてまいります」と回答しました。

“コストが低い”のではなかったか

しかし原発再稼働のための資金を容量市場から調達することについては専門家から懸念があると指摘されています。制度設計の議論に初期段階からかかわってきた東京大学の松村敏弘教授です。

東京大学社会科学研究所 松村敏弘 教授
「いままで再稼働原発はコストがとても低いのだと、これが電気料金下げるのに重要な役割を果たすのだという説明と矛盾するのではないか、かつてのようにかかったコストを全部消費者に負担させてしまって、費用の削減が進まない、ということにもなりかねないということなので、私たちは今後も細部にわたって慎重に制度の運用というのを見極めていかなければならないと考えています。」

私たちの支払う電気料金には影響があるのか、改めて国の担当者に聞いたところ、

電力広域的運営推進機関 山次北斗 企画部長
「こうした電気代が大きくならないような取り組みをしていくという形で、(発電の)量とか価格に応じたキャップ(上限)だったりルールだったり、(利益の)還付の仕組みを織り込んで過度な負担増とならないようにいろんな工夫をしていくということになります」

とのことで、利用できる上限額を定めるとともに、仮に発電所の稼働後に利益が出た場合はその9割を返してもらう仕組みも設けることで、負担増を抑制していくということでした。

この新たな仕組みは、将来の電源を確保するために手厚い後押しを行う制度だけに、電気料金の過度な負担とならないか、懸念もまた大きなものとなっています。特に既に全国には再稼働を目指し国の審査を受けている原発が10基あるほか、国の審査を完了した原発も5基あります。いずれも再稼働のために多くの費用がかかってているだけに、この仕組みがどのように運用されていくのかしっかりと注視していく必要があります。

原発をめぐっては、3月27日に立地地域の住民などによる団体の原発問題全道連絡会が北海道電力に要請活動を行っています。それは、東日本大震災後に安全対策費が多く必要となっているほか、ことし1月の能登半島地震で海岸の隆起や活断層海域に関する新たな知見の指摘もされていることから、防潮堤の設置の工事や再稼働をすべきではないというものでした。

私たちの電力をどのような手段で確保していくのがいいのか、今後も取材を続けお伝えしていきます。

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