ページの本文へ

NHK北海道WEB

  1. NHK北海道
  2. NHK北海道WEB
  3. ほっとニュースweb
  4. 能登半島地震で捜索した北海道の災害救助犬 今後の教訓は?

能登半島地震で捜索した北海道の災害救助犬 今後の教訓は?

  • 2024年2月7日

北海道の災害救助犬の団体が能登半島地震の被災地で行方不明者の捜索にあたりました。団体が結成されてから初となる現場での活動では冬場の捜索の難しさなど課題にも直面。今後、道内の災害への備えを強化していきたいとしています。

能登半島地震で初めての捜索

2024年1月7日、災害救助犬に指示を与えるハンドラー、小野寺里絵さんは仲間とともに4頭の災害救助犬を引き連れ、能登半島地震の被災地、石川県珠洲市に入りました。発生直後から活動していた別の救助犬の団体と交代し、行方不明者の捜索にあたりました。

北海道災害救助犬 小野寺里絵 理事長
「テレビを見て、これは行かなきゃいけないかなと考えました。現場に行ったら被災者の家族の方が現場にもいました。私たちも犬の行動に目をこらしながら見て、なんとか手がかりを1つでもと思って捜索しました」

小野寺さんは、2018年の胆振東部地震をきっかけに道内唯一の災害救助犬団体、NPO法人「北海道災害救助犬」を立ち上げました。胆振東部地震が発生した時、小野寺さんは登別市内の自宅にいましたが、個人で活動していたために自治体などとのネットワークがなく、すぐに現場に向かうことができませんでした。「近くにいながら何もできなかった」と苦い経験をしました。

今回の能登半島地震では、団体が発生直後から関係機関と連絡を取り合いながら出発の準備を続け、1月6日に現地に向かうことになりました。団体としては初めてとなる現場での捜索活動となりました。

冬の捜索の課題に直面

担当したのは津波が押し寄せた石川県珠洲市の鵜飼地区。救助犬にとっても初の現場での活動となりましたが、訓練を積み重ねてきたため、ふだんどおりの動きを見せました。ただ、現場では冬ならではの課題にも直面しました。地震や津波によって、建物が壊れたり、ものが流されたりした場所に雪が積もったため、周囲の状況が分かりづらく、犬の安全確保に神経をとがらせることになりました。

北海道災害救助犬  小野寺里絵 理事長
「災害救助犬が状況に驚くとか、そういうことはなくて、一生懸命捜索をしようという意欲はありました。ただ、雪の下がどうなっているのか分かりませんでした。もしかしたらちょっとさらっと積もっただけで、深い何かがあるのかなとか、心配な部分もありました」

さらに海水や湿った雪の影響で地面の水分が多くなったことで、行方不明者を見つけ出すための手がかりを得ることが難しかったと言います。現地では3日間活動しましたが、行方不明者を見つけ出すにはいたりませんでした。

北海道災害救助犬  小野寺里絵 理事長
「下の方のにおいをとるにはちょっと難しかったです。木材と泥や土が水分を含んで、ぐっと引き締まってしまった状態で、そこにさらに雪が入ってしまって、水分をさらに含んでいました。訓練では、あらゆる状況を作って犬に捜索の経験をさせることを常にやってきたつもりだったのですが、再現することができないところもありました」

道内の災害に備える

被災地から戻った小野寺さんの姿は、すぐに登別市内にある団体の訓練場にありました。今回の活動を通して、小野寺さんはこれまで以上に道内の災害に備えなければならないという思いを強めていたのです。

その理由は災害時の移動の難しさを痛感したからです。当初は、地震発生直後に現地に向かうことも検討しましたが、道内では津波注意報が出ていてフェリーを利用することができませんでした。道内で災害があった場合にはすぐに道外から支援を受けられない事態も想定し、地元の救助犬だけでもしっかりと捜索ができるよう、団体の取り組みを強化していくことが必要だと考えています。

北海道災害救助犬  小野寺里絵 理事長
「北海道内で、災害救助犬の捜索ってなった時に捜索するのは私たちしかいないということもありえます。動けるメンバーの確保もですけど、現場でしっかり捜索ができる救助犬の育成もこれからもっと考えなければいけません」

団体には、現在、およそ20頭の救助犬が道内各地から登録されていますが、今後、救助犬だけでなく、犬に指示を出すハンドラーの人数も増やし、いざという時に備えていくことにしています。

また、能登半島地震で捜索にあたった同じ寒冷地の東北地方の救助犬の団体とも課題や対策を共有するなど、連携を強めていくことにしています。

小野寺さんがハンドラーとして活動するようになったきっかけは2011年の東日本大震災。「大好きな犬とともに人の役に立ちたい」と感じたからでした。2018年の胆振東部地震、2024年の能登半島地震と課題にぶつかりながらも、当初の思いを胸に、いざという時に備えるため、日々、訓練を続けています。

2024年2月7日

関連記事
能登半島地震から1か月  道内35市“避難所の寒さ対策”は
能登半島地震  孤立地区の対策は  斜里町ウトロ地区の取り組み
薬局機能を備えた車を被災地へ

地震・津波から命を守る  北のそなえ術

ページトップに戻る