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薬局機能を備えた車を被災地へ

  • 2024年2月7日

元日に発生した能登半島地震の被災地では、医療機関とともに薬局も被災し、被災者にどう医薬品を届けるかという課題にも直面しました。そこで、被災者の支援のために派遣されたのが、「モバイルファーマシー」と呼ばれる薬局の機能を備えた特殊な車両です。どんな機能を備えているのか、取材しました。

「モバイルファーマシー」とは?

移動薬局車とも呼ばれる「モバイルファーマシー」。能登半島地震で被災した輪島市や珠洲市など4つの自治体には、2月1日までに全国から12台が派遣されました。
通常、薬は薬剤師法によって薬局以外で調剤することができませんが、災害時はこの車が薬剤師とともに被災地に移動することで、調剤した薬を提供することが可能です。
医師の処方箋が必要な薬を持ち運べる棚が備え付けられ、錠剤や粉末の薬を個別に包装できる機械や、電子てんびんなどを使って車内で調剤することができ、簡易的な薬局として機能します。


被災地での活動

この「モバイルファーマシー」は、東日本大震災がきっかけとなり開発されました。津波で薬局が流されたことにより、被災地ではDMATなどの医療チームが撤収したあと、薬が供給できなくなったことが課題になりました。この経験から、被災地でも薬を保管し、調剤できる場所を確保しようと、宮城県薬剤師会などが車両を開発し、これまでに熊本地震などの被災地に派遣されてきました。

今回の能登半島地震でも、被災して対応できない薬局にかわって、必要な薬が届けられています。
北海道薬剤師会が先月17日から支援に入った輪島市にも、大阪府薬剤師会が導入した「モバイルファーマシー」が派遣されていました。
感染症がまん延する避難所では、DMATなどの医師が処方する「災害処方箋」をもとに、解熱剤や咳止めを車内で調剤しました。また、避難する際に持病の薬を自宅から持ち出せなかった被災者のために、糖尿病や高血圧などの薬も調剤することがあったということです。北海道薬剤師会の薬剤師は、車内で調剤された薬を患者などに届ける役割を担いました。

札幌市にも移動薬局車

「モバイルファーマシー」は全国に20台ほどあり、札幌市にも1台導入されています。
札幌の車両は、最大で100種類の薬を持ち運びでき、調剤のための機材に加え、胆振東部地震の経験から、停電に備えた機材も整備されています。
1度にスマートフォンを10台充電することができる災害用充電器や、被災した薬局に車の発電機を使って電力を送るケーブルもあります。車の発電機では最大で5500ワットの電力を発電できるということです。

薬剤師  染谷光洋さん
「能登半島の被災地にモバイルファーマシーが派遣されたことにより、車を拠点として薬を供給して地域の役に立つことができ、有用性を改めて感じました。
 大きな災害の直後は、医療機関も薬局も混乱し、手持ちの薬と同じ物が手に入らない状況も考えられるので、この車によって被災地に薬が届けられるということは、安心につながります。
 薬局機能を備えた車と薬剤師を一緒に派遣することで、北海道で災害があった場合も、地域の人たちが少しでも安心して過ごせるような手助けをしていきたいと思っています」

災害時の薬の備えを

能登半島地震の被災地で支援にあたっている北海道薬剤師会では、薬を服用している人は、今回の地震をきっかけに、災害時の薬の備えについて見直してほしいと話しています。紙や電子版のお薬手帳に加え、お薬手帳の最新のページを写真に撮ってスマートフォンに保存しておくことも有効で、持病の薬がある人は、手持ちの薬が数日分あるうちに受診することを心がけ、いざというときに手元に薬が全くなくなる状態を防いでほしいと呼びかけています。

2024年2月7日

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