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能登半島地震 孤立地区の対策は 斜里町ウトロ地区の取り組み

  • 2024年2月2日

発生から1か月となった能登半島地震。能登半島では陥没や土砂崩れなどで道路が寸断されて多くの地区が孤立状態となり、救助活動や救援物資の輸送が困難となりました。道内でも同様の問題が発生するおそれが指摘されるなか、孤立のリスクを抱え、独自の対策を進めてきた知床半島の斜里町ウトロ地区を取材しました。

①災害時の孤立リスク 北海道でも

北海道では、海沿いを中心に地震や津波での孤立が指摘されていて、対策が課題となっています。

最大震度7を観測した平成30年の胆振東部地震では、土砂崩れで道路が寸断されて、山あいで複数の地区が孤立しました。
  
内閣府が平成26年に行った調査では、沿岸部の629の集落のうち、4割にあたる251の集落が地震などの災害で孤立する可能性があるということです。また、内陸部の中山間地域でも3069の集落のうち、1割ほどにあたる292の集落で孤立の可能性があるとしています。

②斜里町ウトロ地区では住民主体で孤立対策

世界自然遺産、知床の玄関口、斜里町ウトロ地区。

年間およそ120万人の観光客が訪れる道内有数の観光地ですが、地区に通じる国道は334号線だけで、土砂崩れや高波などで通行止めになると、孤立します。

地区でホテルを経営し、自治会で防災対策を進めてきた桑島繁行さんは、知床半島と同じ「半島」で起きた今回の地震を、ひとごとではないと感じるといいます。

桑島繁行さん
「道路や水、電気、それに港などのインフラで、本当に能登半島地震と同じようなことがウトロ地区で起きたら大変だなと思いました」

桑島さんの経営するホテルには、大型の発電機が4つあります。北海道電力からの給電が止まると、自動的に自家発電に切り替わり、全館の電力をまかなうということです。

ウトロ地区にあるほかの大型ホテルも同様の発電設備を持ち、孤立に備えているとのことでした。

桑島繁行さん
「平成30年の胆振東部地震のブラックアウトの時も地区全体が停電し、真っ暗になる中、ホテルだけが明かりがついていた。お客さんに安心感があると思う」

ホテルは町との協定に基づき、災害時の避難施設にもなっています。宿泊客だけでなく、外からの避難者への対応策も定めています。

地区ではこのほかコンビニエンスストアが、町との協定に基づき、災害時に食料を供給することになっています。

さらにガソリンスタンドは自家発電機を備え、停電の時でも給油が可能です。地域ぐるみで、孤立しても耐えられる仕組みを構築していました。

ガソリンスタンド経営・自治会長 米沢達三さん
「自家発電で決済端末も使えるため、災害時でもクレジットカードでの給油が出来る。
ブラックアウトの際には大活躍し、遠くからわざわざ給油に訪れた人がいた」

地区では平成31年に、自治会が中心となって「地区防災計画」を策定し、津波から避難する際の手順や食料の調達など地区内での役割分担を定めたほか、避難訓練も定期的に実施して、災害への対応力を強化しているということです。

③能登半島地震を受け対策の必要性痛感

しかし、能登半島地震を受けて、自治会ではさらなる対策の必要性を痛感しているといいます。自治会のメンバーからは対応を求める声が相次ぎました。

自治会防災担当 桜井あけみさん
「能登半島の地震の関連でやっぱり同じように道路寸断や孤立やライフラインの断絶、備蓄の不足といろんな課題が出てると思う」

自治会長 米沢達三さん
「地元の人間はまだいいけども、今回の部分についてはウトロに仕事なり旅行で来た人がまだ宿も取ってないでどうするのか」

最大の課題は観光客の避難です。地区には1000人あまりが暮らしていますが、インバウンドも増える中、住民の3倍近い観光客が滞在することも予想されています。

これまでに確保した避難場所だけでは足りないおそれがあり、避難の想定を改めて計算した上で、地区にある寺や保育所も使えないか、検討することにしました。

④斜里町も対策強化を検討へ

斜里町も対策の強化を検討しています。

ウトロ地区では、孤立対策として、ウトロ支所にある備蓄倉庫に、食料およそ1200食のほか、毛布240枚や暖房器具などを用意しています。

2015年に定めた町の防災計画では、陸路が使えない場合、ウトロ漁港などを活用して、海上から支援物資などの輸送を計画しています。

しかし、今回の能登半島地震では、地盤が隆起して港が使えなくなったケースがあり、海上輸送ができなくなる懸念も出てきました。

また、地区にある町の支所には職員が2人しかいないため、災害時の対応などで自治会など地域の人たちの協力を得ることが欠かせません。

町では、能登半島地震を教訓に、自治会などと意見交換をしながら防災計画の見直しも進めるとともに、自治会との連携をさらに強化したいとしています。

斜里町役場ウトロ支所 大野信也 支所長
「町としても観光客の避難は課題に感じている。孤立した際の支援の手段や、観光客の命をどう守っていくかについて、自治会と意見を出し合いながら考えていきたい」

⑤知床には観光客を守る責務がある

自治会では、今月10日に防災訓練を行う予定で、その際に、住民にアンケートを行って、能登半島地震を受けて不安に思っていることを聞き取るということです。

住民の声を反映させながら、実情に即した対策につなげたいとしています。

桑島繁行さん
「知床は世界遺産の地でもあって、観光客の安全を確保することがやっぱり責務だと思っている。何かあったときに、みんなでお客さんも住民も一緒になって避難できるような対策を進めていきたい」

今回の取材では、自治会の人たちが、住民の安全確保にとどまらず、世界自然遺産の知床を訪れる観光客の安全も守ろうと、地区全体のことを考えて活動しているのが印象的でした。その取り組みを、これからも注目していきたいと思います。

2024年2月2日

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