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能登半島地震から1か月 道内35市“避難所の寒さ対策”は

  • 2024年2月1日

能登半島地震の発生から2月1日で1か月です。
今回の地震では、厳しい寒さのなか、最大3万人以上が避難し、2月1日時点で1万4000人以上が避難生活を余儀なくされています。
寒さが厳しく積雪も多い冬の北海道で大地震が起きた場合、避難対策は十分なのか。
能登半島地震から1か月を前に、NHKが、道内の35の市に取材した結果、11の市が避難所の寒さ対策の見直しを検討していると回答し、備えの強化を目指す動きがみられました。
防災担当の下京翔一朗記者が解説します。 

避難所の寒さ対策 11市“見直し検討”

35の市への取材では、まず、避難所の寒さ対策について尋ねました。
その結果、35の市すべてが、6年前の胆振東部地震を受けて、▼電気がなくても動かせるストーブの導入や、▼毛布や防寒マットの備蓄数を増やすなど、すでに対策に取り組んでいると答えました。
このうち11の市は、能登半島地震を受けて、さらに対策を見直すことを検討していると回答しました。
その理由について、各市の担当者からは、▼能登半島地震の避難所で寒さを訴える人の声を聞き、大きな避難所でストーブを使う場合に、施設全体が温まるかどうか不安が残ったとか、
▼想定よりも避難者が多く生じた場合、防寒備蓄品の数が足りなくなる可能性があるのではないかと考えたといった声が聞かれました。

避難所の備蓄や停電対策の見直しも

今回の地震では断水や停電が続いていて、避難生活にも大きな影響が出ています。
道内の35の市の中には、避難所の備蓄や停電対策の見直しを検討するとした市もありました。
▼飲料水など、避難所の備蓄については7つの市が、▼避難所の「停電対策」については6つの市が見直しを検討していると答えました。

滝川市 “対策を1つずつ積み上げ”

今回の地震を受けて、対策の見直しを検討している滝川市を取材しました。

滝川市では、胆振東部地震が発生したあと、大型の発電機を導入したり、毛布やマットの備蓄品を増やしたりして、避難所の寒さ対策の充実を図ってきました。
こうしたなか、能登半島地震で、寒さが厳しい時期に、多くの住民が避難生活を強いられている状況に危機感を強めたといいます。
その上で、避難所で暖房を稼働するための発電機や充電池を増やすなど、寒さ対策の強化に向けて検討を進めたいとしています。

滝川市 防災危機対策課 橋本英昭 課長
「能登半島地震の現地の状況をニュースで見て、同様の災害がこの北海道で冬に起きたらと考えると、強い危機感を覚えました。
自治体の防災担当者としては、できる範囲で対策を1つずつ積み上げていきたい。
今回の地震を冷静に分析して、今後の対策に役立てたい」

専門家 “避難所選びなど大前提から根本的な見直しを”

被災者支援に詳しい専門家は、自治体のこうした動きについて一定の評価をしつつも、避難所をどこにするかという大前提から、根本的な見直しが求められると指摘しています。

東北学院大学 定池祐季 准教授
「自治体が、予算などのやりくりが大変ななかで、何とか備蓄などを増やそうとしているのはとても大切なことだと思います。
ただ少し気になっているのが、そもそも避難所について、既存の学校の体育館や集会所などを前提として、そこを快適にするにはどうしたらよいかという考え方をしています。
そうではなく、最初から、民間の施設と避難に関する協定を結ぶという方法もあります。
能登半島地震を受けて、危機感が全体的に高まっているので、協力も得られやすいのではないかと思う」

“広域避難”具体的な計画づくりが課題

石川県は、今回の地震で、より安全な地域にある旅館やホテルなどに住民に移ってもらう「2次避難」を進めています。

道内のすべての自治体は、災害の際、被災した自治体から別の自治体に住民を避難させる「広域避難」の協定を道と一緒に結んでいますが、今回、35の市に取材したところ、ほとんどの市が、▼避難の対象となる人やその規模、▼移動手段や受け入れる避難所など、具体的な計画の策定には至っていないと答えました。
専門家は、過去の災害を教訓とした上で、道が主導して、具体的な対応を考えておく必要があると指摘しています。

東北学院大学 定池祐季 准教授
「2000年の有珠山噴火で住民が避難しているほか、三宅島噴火での全島避難や東日本大震災での県外への避難など、広域避難については多くの事例があります。
いざというときに頼りとなるのは、北海道庁による自治体間の調整なので、平時から、自治体どうしのマッチングなどで関与してもらえると、スムーズな広域避難に結びつくと思う」

その上で、自治体が地域を巻き込みながら対策を進めるという意識も非常に大切だと強調します。

「防災については、地域のみんなで考えて備えるという姿勢が大切です。
例えば、地域の自主防災組織にある程度の予算が渡されていれば、この地域の避難所では何が必要かをそれぞれ考えて、より個別具体的な備えが実現できると思います。
地域それぞれで防災を考えることは、対策を見直す機会としても、住民の学びのプロセスとしても重要なので、対策のあり方を地域にある程度委ねることも必要です」

能登半島地震を“我がことに”

寒さが厳しい能登半島で起きた今回の地震は、さらに寒さが厳しく、積雪も多い北海道で、同様の地震が起きたらどうなるのかと考えさせられました。
取材の中で、ある市の防災担当者は、

「今回の能登半島地震を受けて、自分たち自治体職員に加えて、住民の方々の間でも防災意識が高まっていると思います。
その気持ちが薄れないうちに、可能なかぎりの対策を講じていきたい」

と話していました。自治体や住民が一緒になって、今回の地震を我がことと捉えて、備えを進めていくことが大切だと感じました。

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