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見直し求められる 原子力“避難計画”

  • 2024年3月12日

電気料金に関わり取材を続けてきましたが、今回は北海道でも再稼働に向けた審査が進められている原発についてです。原発災害時にいかに避難するかについて3月12日の「NHKニュース おはよう北海道」でお伝えしました。いま能登半島地震をきっかけに、道内でもこの避難計画が十分なのか、議論が巻き起こっているのです。

「大きな地震と原子力発電所のトラブルが発生しました」

このようにアナウンスされたのは、蘭越町の宿泊施設。
先月14日、北海道は町と原子力災害に備えた避難訓練を行いました。今回の訓練のテーマは外国人の避難誘導で、説明は多言語で翻訳しながら行われ、この日は施設から歩いて避難所に向かう手順などを確認しました。参加した外国人からは翻訳してくれて安心できた」という声が寄せられました。原発が3基立地する北海道では、こうした訓練を重ねてきましたが、能登半島地震をきっかけに備えは十分なのか不安の声が上がっているのです。

「本当にいままで訓練を何回かやっているが、それが実際の災害となったときにやれるのか疑問。能登半島もそうだが、実際の災害時は職員は右往左往で、あっちこっちも手を打たないといけない。とても住民避難と言うところまでいっていない」

本当に避難できるのか

そう話すのは、泊原発関係町村の住民も参加する市民団体、原発問題全道連絡会の堀一さんです。能登半島地震では主な避難経路とされていた、北陸電力志賀原発から30キロ以内の国道や県道で20か所あまりが崩壊。少なくとも5日以上は通れない状態が続き、孤立状態となった集落も出ました。

原発災害時の避難に詳しい新潟県柏崎刈羽原発の災害時の避難方法に関する検証委員会の元委員、上岡直見さんによると、この地震で起きた道路の寸断は北海道でも起きかねないと指摘します。

「能登半島では、道路の寸断で、避難先に行けないと、それも、一部だけならともかく、道路の不通か所が複数、全面的に出てしまって、迂回することも出来ないということが起こりました。道路というのは全国同じ基準で作られていますから、とくに能登半島だけ弱かったわけではないので、もし同じ規模の地震が起きれば、ほかの地域でも同じような状況になるだろうということが言えると思います」

というのも、今回の地震で道路の支障が東日本大震災の際と同程度の割合で能登半島でも生じていたというのです。具体的には10キロあたり1か所という割合です。これが意味するのは、道路は全国同じ基準で作られているため同じ規模の地震が起きればどの地域でも同じ規模の道路の支障が生じる状況になるという事前の予想どおりのことが起きたということです。原発から30キロ圏の自治体は原子力災害に備えた避難計画を作っていますが、場合により避難には数十キロの移動が必要となります。その間ではまず支障か所に当たって車では立ち往生してしまう割合ということになります。

まず立ち往生する

さらに上岡さんは、泊原発から30キロ圏の13町村では、地震や豪雨で崖崩れや地滑りが起きるリスクがあるとして崖の傾斜などから北海道が指定している「土砂災害警戒区域」を、避難で用いる「緊急輸送道路」が横断していると指摘します(図参照。オレンジ色が土砂災害警戒区域、青線が緊急輸送道路)。東日本大震災や能登半島地震の被災地で起きたような道路寸断のリスクが高いか所は道も具体的に把握できるものなのです。

大きな地震のときはそもそも道路が通れなくなるという事態は、バスを使った避難を計画し訓練を重ねてきた道の避難計画の前提が崩れかねないことを意味します。しかし道は根本的な見直しは難しいとしています。

なぜなら避難計画は国の指針を基に定められているからです。この原子力災害対策指針を所管している原子力規制委員会の山中委員長は、道路の寸断は原子力災害ではなく地震などの一般災害の問題であるとし指針を見直す必要はないとしているのです。

“見直す必要なし“

市民からの不安の声は道にも届けられていますが担当部局はこの先、原子力規制委員会が指針を見直すのかどうかを注視するしかないといいます。

道原子力安全対策課 稲場 勝敏 課長
「規制委員会の山中委員長は今回の能登半島地震を受けて指針そのものを見直さなければいけないとは考えていない、これについては委員会とも議論して一致したと。引き続き訓練などを行い、原子力防災対策の充実強化に取り組むとともに、国の指針が改正されたときには、関係町村などとも連携しながら適切に対応していきたいと思います」

こうした国や道の姿勢に、泊原発関係町村の住民も参加する市民団体からは、対策は実際に起こりうることを想定していない机上の空論だとして憤りの声が上がっています。

原発問題全道連絡会・米谷道保さん
「泊原発で重大事故が起きたらプルーム(放射性物質)が移動する。風向きによっては、札幌自体が被ばくするが札幌は避難計画を立てていない。200万人も逃げていく場所ばない。そういう深刻な問題もある」

“机上の空論”分かった上では

さらに国や道はなぜ指針や避難計画の見直しに慎重なのか、訝しむ声も上がっています。

堀さん
「いままでどおりでいいと言っているのは、逆に言うと議論していくと実際そういう原発震災みたいのが起こったときには、複合災害(地震などと原発の災害)のときは対応しきれないと、避難できないというのがある種分かっているから、あとは皆さん良きに計らってとなっているのではないかと。国、規制委員会というのは原発災害というのは、志賀や柏崎(の原発)をみて、このまま避難計画という問題に踏み込んでいくと、原発再稼働中止、廃炉という問題になってしまうということを懸念しているのではないか」

能登半島地震をきっかけに課題が浮き彫りとされた北海道の原子力災害への対応。
議論はまだ始まったばかりです。関係自治体では住民が議会議員と意見交換を行うなど議会での議論を通じて対策の見直しにつなげようという動きが出ています。

今後も動向を伝えていきたいと思います。

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