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呉の「グレーチング」 受け継がれる技術者の誇り

  • 2023年12月08日

呉の企業が国内シェア1位を誇る「グレーチング」。鉄などの金属で作られた格子状のもので、壊れない、さびにくい、排水性が良い、安価であるということから、道路の排水路の蓋や、工場の足場などに使用されるものです。 このグレーチングを製造する工場を取材すると、脈々と受け継がれる「呉のものづくり」の姿がありました。

(広島放送局ディレクター 財津芳紀)

呉港近くにあるグレーチング工場。工場長の嶋崎顕一郎さんに案内していただきました。
気になるのは、このなかなかレトロなたたずまい。外観はヨーロッパの駅舎をイメージしたレンガ造り。当時、最新鋭の工場でした。

工場長 嶋崎顕一郎さん

嶋崎さん
「あのレンガの工場が、明治36年からのものなんですけど、工場としてはおしゃれなデザインをしているのではないのかなと思います。海軍工廠時代の建物のなかで、現役で工場として使われているのは弊社のこの工場だけと聞いております」

戦艦の大砲などが作られていたとされるこの工場。戦争の痕跡も生々しく残っています。

嶋崎さん
「レンガがかけているところが、飛行機から機銃掃射が行われたということで、そのまま残っています」

工場内を案内してもらうと…一番の花形だという機械がありました。

クロスバーと呼ばれる細い鉄の棒。それを均等に並べた板に次々と溶接していきます。この時、接触部分には、十数万アンペアの電流が流れます。これによって、一気に接着され、強度の高いグレーチングが出来るのです。この会社では、こうした製造機器を自社開発することにこだわってきました。

嶋崎さん
「ここらへんの考え方というのは創業当時から、自分たちの力でいろんなことを打開しようという流れが、脈々と今まで続いています」

創業者の山本茂さんは、戦艦大和の建造に携わった元海軍の技術者でした。
72年前、山本さんは海軍工廠で働いていた技術者を中心におよそ40人の仲間と共に会社を設立。
しかし、技術力を生かせる鉄鋼の仕事は、なかなか見つからなかったのです。
そんなとき、会社にアメリカの貨物船を塗装する仕事が舞い込みました。そこで、目にしたのが、当時日本ではほとんど知られていなかったアメリカ製のグレーチング。これならば、自分たちの技術を生かし、大量生産も可能だ。その場でアメリカの会社に訴えました。

「グレーチングを我が社でぜひとも、作らせてください」
当時の日本にはそのノウハウは全くありませんでした。しかし、海軍仕込みの技術力でわずか1年のうちに、製造機そのものの開発に成功したのです。

嶋崎さん
「世界一の戦艦を呉で建造しているってことですから、技術的な自負はかなりあったと思うので、そこが根幹にあったから、達成できたという事は間違いないんじゃないかなと思います」

その後、日本の発展と共にグレーチングの需要は増えていきます。

東海道新幹線の保線用通路、そして明石海峡大橋。近年では東京スカイツリーにも使われています。呉のグレーチングは日本のインフラを支え続けてきたのです。

嶋崎さん
「グレーチングは、70年くらいずっと作りつづけているんですけど、探求し続けていこうと工場のみんな思っているので、そこが一番誇れるところではないかなと思っています」

  • 財津芳紀

    NHK広島放送局ディレクター

    財津芳紀

    2014年入局 岡山局初任 第3制作センター(エンターテインメント)を経て2022年広島局赴任。
    出身 大阪府 
    趣味 バスケ (広島でバスケをしていたら右足首捻挫。。。)

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