ページの本文へ

ひろしまWEB特集

  1. NHK広島
  2. ひろしまWEB特集
  3. カープ羽月隆太郎選手 足のスペシャリストからレギュラーへ

カープ羽月隆太郎選手 足のスペシャリストからレギュラーへ

  • 2023年12月05日

今シーズン、持ち味の俊足を生かしてカープの「機動力野球復活」に大きな役割を果たした羽月隆太郎選手(23)。秋のキャンプではさらに上を目指し、課題克服に取り組みました。

(NHK広島放送局記者 横山悠)

秋季キャンプ 1日の始まりは守備練習

「もう1球、お願いします!」
カープの秋のキャンプ地、宮崎県日南市の天福球場。羽月選手は早出練習で連日、ノックを受けました。セカンドのレギュラーを目指して、まずはノックのボールを受ける量を意識していました。

羽月隆太郎選手

羽月選手
「うまくなるためには、数を受けて動きを体にしみこませないといけないと思っています。来年はもっとスタメンで試合に出たいと思っているので頑張っています」

“代走の1番手”で1軍に定着

羽月選手は5年目の今シーズン、自身の持ち味を生かして1軍での居場所をつかみました。役割は“代走の1番手”。試合終盤に1点を奪いにいく切り札として起用されました。盗塁数は自己最多の14個。このうち8割近くを代走で決め、リーグ4位の成績を残しました。

印象に残るプレーは「CSの三盗」

飛躍を遂げた今シーズン、羽月選手が最も印象に残っているプレーが、10月14日、DeNAとのクライマックスシリーズ、ファーストステージ初戦で決めた三塁への盗塁です。
1点を追う8回、先頭がフォアボールで出たところで羽月選手の出番がきました。もちろん代走での起用です。
次のバッターが初球に送りバントを決めて二塁に進み、真っ赤に染まった本拠地の熱気が一気に高まりました。
羽月選手はその直後、相手先発、リーグ最多勝の東克樹投手が投じた初球にスタートを切りました。「走っていい」というベンチのサインにすぐに応えて会心のスタートで三塁に滑り込み、相手キャッチャーは送球することすらできませんでした。
失敗すれば同点のチャンスがつぶれる大事な場面で初球に走ったのには、内野手ならではの読みがありました。

羽月選手
「送りバントが初球で決まって次の打者の1発目からけん制がくるシーンは見たことがなくて。二遊間を守っていても初球にけん制しようという発想にはほぼならない。どれだけ足が速い選手でもそうなので初球で走ることは決めていました」

カープはこの回、同点に追いつき、延長11回にサヨナラ勝ち。球場の雰囲気を変えて逆転勝利を呼び込むビッグプレーになりました。

羽月選手
「もしあのままCS敗退になったら後悔すると思いました。動いて失敗して悔しい思いをしたとしても、それは来年につながると考え思い切って走りました」

飛躍の裏には新井監督の後押し

新井貴浩監督

CSで思い切ったスタートを切れた裏には、新井監督の後押しがありました。後半戦に入った7月下旬。すでに10個の盗塁を決めていた羽月選手へのマークが厳しくなり、2試合連続で代走で盗塁に失敗しました。走ることにおじけづきそうになったとき、指揮官からあることばをかけられました。

新井監督
「20回連続でアウトになるまで俺は使い続ける。恐れずにどんどんいけ」

羽月選手は、このことばに「もっと思い切ってやろう」と奮い立ちました。今シーズン、走塁の技術について大きく変えたところはありません。それでも結果を残せたのは、新井監督をはじめ首脳陣が「アウトになってもいいからどんどん走れ」と促してくれたことで塁上での心構えが変わった精神面が大きかったと振り返ります。

羽月選手
「背中を押してもらったことがいい結果につながったと思います。シーズンでは『俺がアウトになったらもう誰も行けんわ』と思いながら走っていました。後押しのおかげなんですけど、自信になりました」

課題は打撃の確実性

自己最多の50試合に出場し持ち味の走力で輝いた一方、バッティングは打率1割4分9厘とふるいませんでした。思い切りバットを振って外野の頭を越そうとしていましたが、ゴロを転がせば点が入るチャンスで空振り三振するなど確実性がなく、ヒットはわずか7本。足のスペシャリストの立場を確立した一方で、打席に立つ機会は昨シーズンの半分近くに減りました。

福地コーチが助言“隙間産業にならないか”

シーズン終了後に参加したフェニックスリーグでも打撃に悩んでいた羽月選手に声をかけたのが福地2軍打撃・走塁コーチでした。現役時代、俊足でならした一方、シーズン3割を超える打率も残した福地コーチは、持ち味の足を生かすためにも、低い打球で外野の前に落としたり野手の間を抜いたりする打撃を徹底してはどうかと持ちかけました。

羽月選手
「福地コーチから『お前が一塁に出て盗塁で走ったら二塁打と一緒や。さらに走ったら三塁打と一緒や』と言ってもらいました。『みんなができない役目のつなぎ役、隙間産業にならないか』と言われて、『なります』と答えました」

秋のキャンプでは低く鋭い打球で外野の前に運ぶ打撃に意識を変えました。練習では福地コーチの提案で、狙って打つ場所を口に出してからバットを振ることで、広角に打ち分けるバットコントロールを磨きました。

羽月選手
「しっかり振って飛ばしたい気持ちは正直あります。でも、みんなができないことができるのであればそっちをやりたいなと思ったので頑張っています」

福地寿樹コーチ

福地コーチ
「僕も経験しましたが、外野の前に落とすバッティングはおもしろくないです。でもそういう選手が1人くらいいてもいいじゃないですか。そういうバッターが必ずチームを助けてくれると思うので、『塁に出ればお前は勝ちだ』と暗示をかけています」

セカンドのレギュラーへ“菊池選手を超える”

羽月選手が守るセカンドのポジションには菊池選手という絶対的な存在がいます。ことし1月には3年連続で自主トレーニングを一緒にさせてもらい、球界屈指の名手から守備の技術を学んできました。去年まで10年連続でゴールデングラブ賞を獲得した憧れの存在ですが、目標のレギュラー奪取に向けて一歩も引くつもりはありません。

羽月選手
「セカンドでレギュラーをとりたいとプロに入った時から思っていて、そこは全然ぶれていないです。自分のやりたいことを徹底して身につけて勝負したい。試合の最初から最後までバックスクリーンのボードに僕の名前があるのが目標なので、それを目指してやっていくだけです」

  • 横山悠 記者

    取材・構成

    横山悠 記者

    2016年入局 前橋、長野を経て広島局でカープ担当 
    8月6日ピースナイターでの 秋山選手のサヨナラヒットは 今も目に焼き付いています

ページトップに戻る