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呉の海上保安大学校で頑張る学生に密着!

  • 2023年12月14日

呉市にある海上保安大学校で、日本の海の安全を守る海上保安官を目指して頑張っている学生を取材しました。

(広島放送局記者 諸田絢香)

りりしい表情で並ぶ学生たち。
呉市にある海上保安大学校は、海上保安庁の幹部候補を養成する、全国で唯一の教育機関です。1年生から4年生の学生、193人が学んでいます。

1年生の廻野藍さんです。おじの影響で海上保安官の仕事に興味を持ちました。

廻野さん
「おじさんが海の仕事、機関士をしています。そこで初めて海上保安官という海の上での仕事が視野に入ったというか。ここじゃないと送れない密度の濃い生活が出来ているかなと思います」

海での人命救助や、密輸のような海上での犯罪の取り締まりを行う海上保安官。基礎的な科目を学んだ後、航海・機関・通信のコースに分かれてより専門的な知識も身につけます。

数学や物理学、英語や法律も学びます。
なんだか難しそうなこの数式、何を求めているかというと、丸い地球の上で電波が届く距離を割り出すためのものなんです。

廻野さん
「やはり無線が使えないと業務にならないので、基礎を固めないと発展的な内容は学べない」

「逮捕術」の授業では、護身の技術や関節技などを学びます。現場で容疑者を逮捕する際などに必要とされるスキルです。「海の警察」と呼ばれる海上保安官になるための大切な授業です。

午前の授業が終わると、食事の時間。
海保大は全寮制で、4年間の学生生活を一つ屋根の下で過ごします。
女子学生は約3割。その仲間たちと力を入れている活動があります。

それは、手こぎのボートで速さを競うカッターです。同じ部屋の先輩の誘いで入りました。女子カッター部は去年の全国大会で優勝したほどの強豪です。

廻野さん
「端から見ているよりだいぶつらいんですけど、チームワークの大切さを学べたり筋力が付いたり、なかなか入ってよかったなと思う」

新人大会を12月に控え、日没までの限られた時間を使って練習に精を出します。

廻野さん
「もうすぐ大会が近いこともあってちょっと焦りもあるんですが、だいたい息が合ってきたかなと。1番の目標は新人カッター大会での優勝なので、そちらを目指して頑張っていきたいと思います」

一方で学業も大きな山場を迎えていました。もうすぐ初めての乗船実習に臨むことになっていたのです。

廻野さん
「航行中の船の中の業務については実際に見ることができていないので、不安なところはあるんですけど、頑張りたいと思います」

出港を前に同じ部屋で過ごしている先輩から、大量の差し入れが手渡されました。入っていたのは紙パックのジュースや賞味期限の長いお菓子やパンなど。航海前の差し入れは海保大の伝統です。

同じ部屋の4年生
「船内生活なので、缶とかそういうゴミとかがどんどんたまってくるんで、紙パックとかにして捨てられるようにとか、ちょっと工夫はしています」

廻野さん
「夜中にちょっとおなかがすいたり、上級生の方々を思い出したくなった時とかに食べようと思います」

そして11月12日、出航の日です。廻野さんたちは2週間ほどかけて九州を1周します。航海では、海で使うさまざまなサインや人命の救助などに使う搭載艇の上げ下げなどを学ぶことになっています。将来、幹部として船で指揮を執るための知識と経験を得る実習です。

廻野さん
「春から海上保安官になるために学んできた知識などを、初めて実体験として経験できる機会なので、しっかりと自分のものにしていけたらいいなと思っております。頼れる海上保安官になりたいと思います」

現場で活躍する海上保安官になるための大きな一歩。初めての航海に出発です。

呉を出た廻野さんたちは、別府、鹿児島、対馬などにある九州の港を回りました。航海の間、覚えることがたくさんあるため、翌日の作業の予習などをしながら先輩からもらったバームクーヘンやキャラメルなどで糖分を補給したそうです。寄港地では休みの日もあり、観光も楽しんだということです。

  • 諸田 絢香 記者

    取材・構成

    諸田 絢香 記者

    2020年入局
    2022年夏より呉支局
    呉市のみならず、江田島市、竹原市、大崎上島町など広い地域を取材中

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