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台風・大雨への備え 広島地方気象台に聞く 情報使いこなすには

  • 2023年10月05日

    大雨による災害がたびたび発生してきた広島県。いざというときの避難をどのように判断すればいいのか、情報をどのように使いこなせばいいのか。気象台の担当者に聞きました。

    (広島放送局記者 福田諒)

    なぜ9月に大雨が多いのか?

    話を聞いたのは、広島地方気象台で防災情報を担当している立神達朗さん。長年、気象の予報を担ってきたエキスパートです。

    広島地方気象台 立神達朗 気象防災情報調整官

    夏から秋の大雨のうち、台風の被害が9月に多いのは、台風の進路が関係しているといいます。高気圧の勢力の関係などで、7月は日本海や大陸の方に、10月は太平洋側を通るルートが多くなります。一方、8月から9月は、本州付近を通りやすいのです。

    台風の月別の主な進路を見てみると、9月は南の海上から放物線を描くように日本付近を通って、本州に上陸、接近しやすくなります。その分、広島県の近くを通る可能性も高くなります。

    このとき秋雨前線の活動も活発になり、雨が激しく降ることがあります。最近では、平成18年9月の台風13号と秋雨前線により、安芸高田市と広島市安佐北区では、6日間で平年の9月1か月分より多くの雨が降りました。

    広島市安佐北区 平成18年9月

    近年こうした短時間の大雨が増加していて、地球温暖化が影響している可能性もあるといいます。

    日本全国で見ると1時間の降水量が80ミリ以上の猛烈な雨の発生回数は、1980年頃と比較して、現在は2倍程度に増加しています。これまで被害にあっていない人も、自分が住む地域にはどんな災害が起きるのかあらかじめ把握しておくことが重要です。

    大雨に備える3つのポイント

    大雨に備えるために必要なこととして、立神さんは以下の3つのポイントをあげています。

    ポイント1.ハザードマップでリスク確認
    ポイント2.キキクルで避難の判断を
    ポイント3.マイ・タイムラインで準備を

    ポイント1.ハザードマップでリスク確認

    1つ目のポイントは、ハザードマップで災害のリスクを確認しておくことです。ハザードマップは、自治体や気象庁のホームページで見ることができます。

    気象庁ホームページより

    広島市の洪水ハザードマップを見ると、川沿いに赤やピンクといったリスクのある地域があります。実は、広島城の南側にはもともと干潟が広がっていましたが、江戸時代に、堤防を築き中の水を抜いて干拓地が作られました。埋め立てではないことから、標高が低く、川が氾濫すると水がたまりやすくなっています。

    また、土砂災害のハザードマップではリスクのある地域が、山の近くに黒く示されています。広島市や呉市といった山の斜面では住宅団地の造成が進みました。実は、広島県は土砂災害の危険箇所が全国でもっとも多い県です。

    平成30年7月のいわゆる「西日本豪雨」で、土砂災害による犠牲者が出た場所のおよそ9割が『土砂災害警戒区域』など、あらかじめ危険性が指摘されている場所でした。災害から命を守る第一歩が、ハザードマップの確認です。

    ポイント2.キキクルで避難の判断を

    2つ目のポイントは、気象庁のホームページの「キキクル」で避難のタイミングを判断することです。

    キキクルでは、今いる場所の危険度を確認することができ、災害の種類にあわせて、浸水の危険度については「浸水キキクル」、がけ崩れや土石流の危険度については「土砂キキクル」、川の危険度については「洪水キキクル」を使用します。

    このうち浸水キキクルは、降った雨がその場にとどまったり、川に排水されたりせずに水没する危険度を示していて、自宅の2階以上に逃げるといった垂直避難を想定しています。

    一方、洪水キキクルは、洪水を対象にしているので、避難所などへの水平避難が必要になるケースもあります。

    実はこのキキクル、平成26年の広島市の土砂災害をきっかけに開発されました。危険度を5段階に色分けして表示することで、逃げ遅れを減らそうとしたのです。

    キキクルに表示される色を確認すれば、逃げるタイミングが分かるようになっています。自分の命は自分たちで守るんだと思って、必要であれば躊躇(ちゅうちょ)せず避難するようにしてください。

    ポイント3.マイ・タイムラインで準備を

    最後のポイントが、「マイ・タイムライン」を作成し避難の準備をしておくことです。

    NHK広島放送局作成のマイ・タイムライン

    「マイ・タイムライン」とは、住民ひとりひとりがあらかじめ避難のタイミングなどを決めておく、個別の避難計画のことです。大雨の警戒レベルや自治体が発表する避難情報に沿って、取るべき行動を時系列で記入する仕組みになっています。日頃から家族で話し合って、作成しておくことが大切です。この「マイ・タイムライン」の作り方はNHK広島放送局や広島県のホームページなどで紹介しています。

    ひとりひとりが災害が起きたときに、いつ、何をするのか、あらかじめ取りまとめておきます。そうすれば、急な判断を求められる災害時にすぐに避難することができます。この機会にぜひ作ってみてください。

      • 福田諒

        広島放送局 記者

        福田諒

        2018年入局。和歌山局を経てことし夏から広島局。「ふくだ」じゃなくて「ふくた」です。

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