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広島市の「ホーユー」 寮の食事が突然停止 背景に何が?

  • 2023年10月02日

全国各地で学校の給食や寮などの食事が突然、提供されなくなっている問題。背景に何があったのでしょうか。

(NHK広島放送局記者 石田茂年)

岡崎アナウンサー

ホーユーの問題、改めてこれまでの経緯を振り返ってもらえますか?

石田記者

▼まず、9月1日の朝にホーユーの従業員から「今後食事の提供を継続できない」と三次高校に連絡があったということです。
▼9月1日の昼からは実際に食事が提供されなくなり、それぞれの学校が近くの業者を探したりするなどして弁当を用意し対応にあたることになりました。
▼そして、この日以降、全国のホーユーの契約先で次々と食事の提供が止まる事態となりました。
▼9月6日には、6つの県立高校が会社との契約を解除しています。

この問題、県内だけでなく全国的にも大きな話題となっていますが、実際にはどのくらい影響が広がっているんでしょうか?

会社のホームページによりますと、中国地方や四国を中心に学校や学生寮、官公庁、企業などの食堂や給食の業務を手がけ、グループの営業所は、九州から東北まであわせて22か所にあると掲載されています。
NHKのまとめでは少なくとも20府県で給食などの提供が停止していることが確認されています。
例えば、岩手県の特別支援学校や、静岡県の高校、徳島県の警察学校、沖縄県の自衛隊駐屯地でも、食事の提供ができなくなりました。

県外にもこれだけ進出していたんですね。

はい、ホーユーによりますと15年ほど前から県外に進出を始め、事業を全国に拡大してきました。契約していた施設は全国で一時300に上ったということです。

どうして、これだけ急速に事業を拡大できたんでしょうか?

ホーユーは低価格を武器に事業を拡大していたという指摘があります。
実際、去年3月には三次高校など4校の食事提供事業を、他社の3分の1以下、設計金額の70%を下回る低価格で落札しています。このため、高校側も県の制度に基づき、人件費などが適正に計上されているかなどの確認を行っていたということです。こうしたホーユーの低価格路線は業界内でも有名だったという証言もあります。

ホーユーと同様に県内で学校や官公庁などで食事を提供していた元同業者の男性です。

元同業者
安いですねかなり。これで本当にできるのかという感じ。ホーユーの金額では基本的にはできないのでお断りすると思う。いつも入札すると桁違いに安い入札額だった。

低価格の契約が多かったということですが、それで経営は大丈夫だったんですか?

いえ、経営環境は年々悪化していたようです。一時300あった施設との契約は、ことし3月には、150にまで減少していました。
ホーユーは食材費や光熱水費の高騰、最低賃金の上昇、価格転嫁がうまくできなかったことが経営を圧迫していったとしています。低価格を武器にしていたホーユーにとっては、こうした変化の影響は、より大きかったようです。
食材費などの値上げが続く中、一般の飲食店と異なり、状況に応じてすぐに値上げができない業界の構造的な問題を指摘する声もあります。

元同業者
年間予算がもう決まっている公立の場合、イレギュラーでの値上げがなかなかできず、値上げに半年ぐらいかかってしまうことはある。
今はかなり食材費が上がっているので見直すべきではないかと思うが、給食や学食は安くて当たり前だと思われているので30円上げるだけでも生徒などから結構ブーイングが出たりする。学校などには運営費を適正な価格で提示していただきたい。

この元同業者によると、新型コロナで施設側が食堂を閉鎖して収益が悪化した業者も多く、業界を取り巻く状況は厳しさを増していたということです。

県内の高校ではまだ食事の提供が再開していないようですが、今後、この問題はどうなるんでしょうか?

ホーユーは、近く裁判所に破産手続きを申請する考えを明らかにしています。現在、県内の7つの公立高校ではすでに新たな業者の選定に向けた検討を進めています。今後の対応について、県教育委員会の平川教育長は9月8日の会見で次のように述べました。

県教育委員会 平川教育長
教育委員会としても引き続きやっていただけないか照会を行って、できるかぎり速やかに業務を開始していただいて、その事業者と随意契約で行う予定としております。とにかく一日でも早く子どもたちに温かい食事が食べてもらえるようにと思っている。

依然として、食事の提供を再開できるメドは立っていないのが現状で、一刻も早い対応が求められています。同時に、提供業者が事業を安定して継続できるよう、契約のあり方の見直しに向けた検討も必要だと感じました。

  • 石田茂年

    広島放送局 記者

    石田茂年

    2019年入局
    東京出身。
    警察担当や呉支局を経て県政取材を担当。

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