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熊野町に筆以外の新名物を 寄せられたアイデアは907作品

  • 2023年10月10日

 

熊野町といえば筆。そんな町で新たな名物を作ろうというプロジェクトが始まっています。

(広島放送局記者 児林大介)

新名物の開発プロジェクトが始動

江戸時代から“筆の都”として発展してきた熊野町。全国の筆の生産量のおよそ8割を占める一大産地で、人口2万3500人あまり(2023年8月末時点)のうち、およそ1割が筆作りに従事しているといいます。

熊野町 産業観光課 荒谷大祐 主査

熊野町民でも多くが筆以外の名物はなかなか思い浮かばないという状況を変えようと、熊野町産業観光課の荒谷大祐さんがプロジェクトを立ち上げました。

熊野町 産業観光課 荒谷大祐 主査
「熊野町の特産品といえば、どうしても熊野筆ですよね。しかし、筆だけではなくて、もっとたくさん魅力がある、特産品があるということ皆さんに知ってもらいたいと思い、コンテストを企画しました」

ことし7月から9月にかけて荒谷さんはアイデアを広く募集しました。
すると、熊野町らしいお土産やスイーツ、軽食など、なんと907作品が集まりました。

寄せられたアイデアの束

町内の小中学校や高校が夏休みの宿題にしたことで応募が増えたほか、インターネットで知った東京や千葉、神奈川の人からもアイデアが寄せられました。4歳から80代まで、幅広い年齢層から集まりました。

アイデアは、大手飲料メーカーや菓子メーカーで商品開発の経験がある専門家など4人が審査し、中学生までの「子ども部門」と、高校生以上の「大人部門」で、それぞれ5作品程度の入賞作品を決めます。そして、最終的には商品化して売り出すことを目指します。

審査基準には「デザイン(写真映え)」「日持ちや手軽さ」などがありますが、一番のポイントは「熊野町らしさ」。やはり筆をモチーフにしたアイデアが多く集まりました。

入選作品の1つ、しゃれをきかせて「腕グミ!筆グミ!」と名付けられたこの作品。地元の酒蔵の酒かすを混ぜたグミを作るというアイデアです。長さ10センチ、幅3.5センチと書いてありますが、けっこう大きいですね…。

また、町内で栽培が盛んな黒豆のソフトクリームや、黒豆を使ったタルトといったアイデアも、入選作品に選ばれました。

ほかにも、実は町内には多くのかやぶき屋根の建物が残されていて、屋根の上に覆いを施す「かぶせ屋根」を含めると、ことし6月時点で212棟と、中四国では最大の密集度だといいます。そんなかやぶき屋根をかたどったクッキーや、熊野町の観光PRキャラクター「ふでりん」をデザインしたものなど、熊野町の魅力を伝えるアイデアが寄せられました。

熊野町 産業観光課 荒谷大祐 主査
「このコンテストを通じて、文化や歴史、熊野町らしさを考えたり、家庭で話し合ったりするきっかけになったらうれしいと思います。熊野町では、いま、少しずつではありますが人口が増えていますので、転入してきた人には、このコンテストで、熊野町の新たな一面を知ってもらえたらと思います」

学生との試作品作りで実現可能性を探る

安田女子大学 管理栄養学科の学生

寄せられたアイデアのうち、入選した10作品に加えて、商品化できそうなものを試作して、実現可能性を探ります。

この日、試作品を作ったのは、安田女子大学管理栄養学科の2年生5人。40代の女性が応募した、黒豆や酒かすを使ったチーズケーキです。

酒かすと黒豆を使ったチーズケーキのアイデア

どのようにすれば魅力的に仕上がるか、学生たちは議論を重ねます。
まずは、町特産の黒豆について。正月の黒豆のように、甘く煮たものを使いますが、どう目立たせるか、みんなで話し合います。

学生
「切ったときに表面が見えたほうがいいよね」

学生
「下に敷き詰めたらいいんじゃない?そうしたら見えるかもね」

容器の下にぎっしりと敷き詰めて、存在感を出すことにしました。

もう1つ議論になったのが、酒かすの量です。いったんは100グラムに決めたものの、一口試食してみると…。

学生
「かなり味が舌に残るよ。少なくていいんじゃない?70グラム?」

学生
「風味が焼いたときにどうなるか。ちょっと香るくらいがいいから、50グラムにしようか」

結局、当初決めた半分の50グラムにすることにしました。

酒かすのほかに、卵や小麦粉、砂糖、生クリーム、クリームチーズを混ぜて、黒豆を敷き詰めた容器に流し込みます。そして、オーブンでしばらく加熱し、出来上がりです。

容器から取り出し、包丁を入れてみると、ねらい通り、黒豆を強調することに成功。

試食した学生
「うん、おいしい!」

熊野町 産業観光課 荒谷大祐 主査
「酒かすがすごく香る。黒豆もおいしい。みんなが作ってくれて、最高」

みんなで議論した結果、酒かすはもう少し多くてもいいのではないかという話が出ましたが、初めての試作にしては、上々の出来栄えです。

町では、今後も試作を続けた上で、12月2日の試食会に臨みます。ここには、入賞作品を応募した人が招待されるほか、菓子メーカーの担当者などが参加する予定です。そこで作品について意見を出し合い、製造する事業者を決めることにしています。そこからプロの手によって商品化が進められ、来年3月21日にお披露目される予定です。

熊野町 産業観光課 荒谷大祐 主査
「すばらしい試作品を作ってもらって、これは非常に期待できるなと思います。これからアイデアが形になっていくのがすごく楽しみになってきました。筆に続く名物がたくさん生まれたらいいなと思っています。さらに、アイデアが形になって、その名物を求めてみなさんが熊野町に来てもらえるとうれしいと思います」

  • 児林大介

    広島放送局 記者

    児林大介

    鳥取→和歌山→東京→盛岡→広島。ニュースウオッチ9リポーターとして全国のさまざまな現場を取材したほか、各地の夕方6時台ニュースでキャスターも経験。現在、記者として経済を担当。山口県出身。

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