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“変わりゆく地域”写真展 広島市 基町地区

  • 2023年09月22日

新しいサッカースタジアムが建設されている基町地区では、1970年代、大規模な集合住宅が建てられました。変わりゆく地域の歴史を知ってもらおうと、8月に写真展が開かれました。

(NHK広島放送局記者 福島由季)

広島市中区の基町地区には20棟の市営住宅が建ちならび、およそ4000人が暮らしています。
原爆投下によって焼け野原となった広島。基町地区には戦後、応急的に建てられた木造住宅が密集していました。その後、住宅環境を改善するため、広島市が1969年からおよそ10年かけて市営住宅を建設。隣接する中央公園には、現在新しいサッカースタジアムが建設中で、地域が大きく変わろうとしています。

その基町で8月、地域の歴史を振り返る写真展が開かれました。
こちらの会場には、住民などが1970年代後半に撮影した写真を中心に10枚が展示されました。

写真展を主催した「基町プロジェクト」のメンバーで広島市立大学非常勤特任教員の、増田純さんです。変化を続けてきた基町の歴史を、知ってもらいたいといいます。

増田さん
広島が復興していく過程でもとっても重要なエリアの1つだと思っています。広島が焦土から立ち上がってきたたくましさ、アパートが建つ前はこういう復興の歴史があったんだよということを伝えたい。

こちらは、1977年に撮影された、旧太田川沿いの風景。バラックが建ち並び、原爆で家を失った人や戦地から引き揚げた人たちが身を寄せていたといいます。

同じ場所から撮影した現在の写真もならび、街並みが一変したことが分かります。
新たなサッカースタジアムが建設されている中央公園の近くの様子が映された写真もあります。
訪れた人の中には、展示されている写真に思い入れのある人もいました。

来場者
私の祖父が基町の近くで食堂してたって聞いたことがあって、隣が東食堂さんだったという話をうちの母から聞いてるんですけど、これが東食堂さんなので、おそらく隣のこれがうちの祖父がやってた食堂かなと思う。昔はこんな感じだったんだなっていうのがわかってすごくうれしかったです。

こちらのスペースには、60年代から80年代に撮影された地区の運動会や祭りなどの写真が展示されました。多くの子育て世代などでにぎわっていたことがうかがえます。しかし、ことし4月時点で、アパートの居住者のおよそ4割が65歳以上と、高齢化が進んでいます。店をたたむ人も増え、アパートの敷地内にある250以上の店舗のうち、半数ほどが閉店。
そうした基町の現状を見て、増田さんたちは、なんとか街を活気づけたいと、写真展のほかにも活動を行っています。ことし4月からは、建築を学ぶ大学生などとともに空き店舗を改装し、住民どうしが交流できる場所を作っています。

「もともとは扉があったんですけど、外と中を緩やかに仕切れるように…」
「全然印象変わるね」

空き店舗改装に取り組む学生
頑張ってくださいというふうに、時々通りがかる人たちに応援をしてもらっています。

空き店舗改装に取り組む学生
若者だけじゃなくて高齢者の方ともつながれるような場所になればと思います。

増田さんは、サッカースタジアムの建設で地域が転換期を迎えている今だからこそ、地域が持つ魅力を多くの人に知ってほしいといいます。

増田さん
広島のこれからとか、自分が住んでる町のこれからとかを目を向けるきっかけになったらいいなと思います。地域の方にも元気になってほしいし、元気に若者と地域の方が交流しながら活動していく姿を地域の外の方にも見ていただけたらなと思います。

増田さんと大学生たちは、来年2月ごろの完成を目指して、空き店舗の改修に取り組んでいるということです。広島市も地域行事の運営などを支援することを条件に学生や子育て世代など40歳未満の人が月1万円から入居できる制度をつくり、およそ40世帯が入居しているということです。

  • 福島由季

    広島放送局記者

    福島由季

    行政や原爆などの取材を担当。広島市出身で、基町地区には子どものころからよく訪れていました。

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