水の魅力と危険性・対処法を学ぶ
- 2023年08月03日
NHK広島放送局は海上保安庁と日本水難救済会と連携し川や海の楽しさを伝えるとともに、水難事故を防ぐためのワークショップを広島市内の小学校で行いました。
NHK潜水カメラマンによるキャリア教育
「ダーウィンが来た」などの自然番組の映像を長年撮影してきたNHKの潜水カメラマンが、五日市中央小学校の高学年に向けた特別授業を実施しました。海の素晴らしさと危険性の両方を知る水中のプロフェッショナルは自らの経験から児童たちに何を伝えるのでしょうか?
(NHK広島放送局 四十宮 実成)
★NHK潜水班とは?
水中取材を専門とする世界の放送局の中でも珍しいチーム。潜水士の資格を持つカメラマンとアナウンサーが約100名所属し、生き物の生態や水中洞窟など水の世界の魅力をNHKの番組で伝え続けています。
児童たちに伝えたい潜水カメラマンの仕事!
今回の特別授業の講師となった富田カメラマン。これまで世界各国の海や川の中で撮影を行ってきましたが、自然を相手にした撮影はうまくいかないことのほうが多いのだとか!
この写真は南アフリカでホホジロザメを撮影した際の映像の切り抜き画像です。この瞬間が撮影できたのは撮影終了間際で、撮影できたときはガッツポーズが出たほどうれしかったそうです。何日間も船の上でホホジロザメが現れる瞬間を待ち、何度も諦めかけたことを児童たちに伝えていました。 そんな忍耐力も必要な潜水カメラマンの仕事ですが、生き物を相手にする撮影に大切なことは、
平常心を保って生き物が現れる瞬間を待つこと!
焦っていると生き物に焦りが伝わり、生き物が姿を現してくれないようですよ。
また、潜水カメラマンでないと決して経験することができない専用の鉄檻を使った水中でのサメの撮影についての経験についても語り、児童たちは驚きを隠せない様子でした。
このような一見危険そうな撮影も経験してきた富田カメラマンですが、 水中撮影で最も恐れている生き物はサメではなくクジラ!
その理由は、
クジラは大きな尾ビレや胸ビレを振り回すことがあるため、油断して近寄ると当たってしまう大惨事になるのだとか、、、
サメは誰もが怖い生物という認識があると思いますが、まさかクジラとは..
講義終盤には
児童たちが実際の潜水道具を身につけたり
潜水機材の使い方をレクチャーしてもらったりと
日常生活では経験できない体験をし、心躍らせている様子でした。
今回の特別授業に関して、五日市中央小学校の児童の皆さんから「実際に潜水機材に触れることができて楽しかった」「潜水カメラマンの仕事はとても大変だなと思ったけれど、そのおかげで子供たちが楽しめる番組ができていると知ることができた」など好評の感想をたくさんいただきました。講義内容は、「潜水カメラマン」という特殊の仕事についての紹介でしたが、今回の講義をきっかけにたくさんの仕事に関心をもってもらい、児童の皆さんの将来のキャリアを考えるきっかけになればと思います。 また、NHKの潜水カメラマンが想いを込めて撮影した番組を皆さんぜひご覧ください。
ダーウィンが来た!
https://www.nhk.jp/p/darwin/ts/8M52YNKXZ4/
水の事故から命を守る教室
キャリア教育のあとに、水の事故にあったときに備えて実技指導が行われました。 この授業は広島県水難救済会(※1)、第六管区海上保安本部(※2)、NHK広島放送局が連携して、広島市立五日市中央小学校で開催されました。
(NHK広島放送局 織田 隆行)
広島県では下図のように毎年多くの人が水の事故にあっています。
夏のレジャー前に、水の事故について考える契機を与え、安全に水遊びを楽しんでもらう知識と方法を子供たちに体感してもらうことが必要です。
着衣泳
広島県水難救済会の山岡さんから学んだのは、服を着たままでも水に浮いて救助を待つ着衣泳という方法です。ポイントは以下の通り。
・腰を沈めず、体を真っすぐにする。
・あごを上げて、耳を水の中に入れる。
・息をいっぱい吸い、しゃべらずに、肺の中の空気を保つことで、浮力を確保する。
・ペットボトルは体に密着させる。
陸からはわからない水中での姿勢をNHKが用意した水中映像を見ながら理解を深めることができました。
その後子供たちはプールの中に入り、映像で見たことを実践することでより学習効果を高めることができました。はじめはペットボトルを使用して浮く練習をし、その後ペットボトル無しで浮く練習を行うことで、段階的にコツをつかむように講習が行われました。
ライフジャケットの使い方
海上保安庁の畝原さんと原さんからライフジャケットについて学びました。陸から発見されやすくするためにオレンジや黄色の目立つ色の製品が推奨され、反射板がついていたり、笛がついていたりとライフジャケットの機能を学びました。そしてチャックをしっかり締め、ひもをしっかり結ぶなど、正しく着ないと、水の中で簡単に脱げてしまう実演があり、その様子をNHKが用意した水中カメラで陸から見ることができたことで、より深い理解につながりました。
また同じライフジャケットでも、公的機関が公認したものとそうでないものがあり、船に乗る時は国土交通省の安全基準を満たしていると確認された「桜マーク」がついたものを着けなければならないことを学びました。
児童は自分で正しくライフジャケットを着て浮く練習をし、さらに救助を待つ時はできるだけ大勢で手をつないで待っていた方が救助に来た飛行機や船から発見されやすくなる事も学びました。
浮力の体感
最後に子供たちは、水中カメラが、陸上では重さが30kgあるが、水中では浮力によって片手で軽く持つことができるようになることを体感することができました。
水難救済会および海上保安本部と一緒に授業をすることにより、多くの児童に海や川を安全に楽しむきっかけを効果的に作ることができました。この活動を継続して実施することにより、水の事故を減らすことができればと考えています。
#水難事故をなくす いま、知る 隠れた危険 | NHK
https://www.nhk.or.jp/shutoken/suinan/index.html