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熊野筆に並ぶ!?寄せられたアイデアから町の新名物誕生なるか

  • 2024年04月19日

     

    筆の町として知られる熊野町が新たな名物を作ろうと、アイデアを募集したところ、「地域の魅力を発信したい」「地元で生産・収穫されたものをPRしたい」と、町の内外から900あまりのアイデアが寄せられました。アイデアの募集から半年余りを経て、この春、思いのこもった5つの商品が完成しました。

    (広島放送局 記者 児林大介)

    “幻の味”を地元でも

     

    榊山牛バーガー

    完成した商品の1つが、町内で育てられた「榊山牛(さかきやまぎゅう)」を使ったハンバーガーです。これまでは広島市の一部の焼き肉店などにしか出荷されず、町内では食べられていなかったため、地元でも味わってもらおうと考案されました。

    榊山牛は、一般的な和牛と比べて肥育に時間をかけていて、赤身と脂身のバランスがとれた肉質が特徴だといいます。

     

    榊山牛

    町内の飲食店では、肉本来の風味を味わえるよう、ひき肉からハンバーグを作る際は、つなぎを使わず、調味料も塩・こしょうと、少しの砂糖に限定しました。さらに、他の肉と比べて脂の融点が低いことから、体温で脂が溶けないよう、手でこねる時間をほんの十数秒だけにして、素早く形を作ります。

    加えて、火を通し過ぎると肉汁が流れ出てしまうので、フライパンで表面を焼いた後、ホイルに包んで3分間だけオーブンで熱を加えるようにしました。こうした工夫で、肉汁を閉じ込めることができたといいます。オリジナルのしょうゆベースの照り焼きソースをかけて、できあがりです。

     

    付け合わせには、地元で採れたブロッコリーなどのグリル野菜やピクルスを添えています。

     

    トモ・ビオパーク 伊藤あすかさん

    榊山牛バーガーを作った 伊藤あすかさん
    「いいものができたと思います。『榊山牛が食べたい』という要望にしっかり応えて、みなさんに満足してもらえるよう頑張りたいですし、熊野町の名物として、もっと知られるようになったらいいなと思います」

    “名物を目指して町に来て”

    熊野町では、新たな名物を作ろうと、去年(2023年)7月から9月にかけてアイデアを募集しました。すると、町民だけでなく全国から寄せられたアイデアはなんと907。

    寄せられたアイデアは、大手飲料メーカーや菓子メーカーで商品開発の経験がある専門家など4人が審査。中学生までの「子ども部門」で6作品、高校生以上の「大人部門」で4作品が入賞しました。

     

    入賞した作品をもとに、試作品が作られ、去年12月に試食会を実施しました。ここには、商品化に関心がある飲食店や食品メーカーなどの事業所も参加しました。

    そして、希望する事業所は試作品をヒントに、アレンジを加えたり、量産しやすさを追求したりして、この春、5つを商品化につなげました。

    多くの人が協力して形に

     

    “酒かす” バターケーキ

    ハンバーガー以外にはどんなものがあるのでしょうか。
    町内にある酒造会社の酒かすを練り込んだバターケーキです。温かい状態の時は、とりわけ酒の風味を感じることができる一品です。

    商品化のきっかけとなったのは、去年9月。以前から町とつながりのあった安田女子大学の学生たちの試作品でした。これまで、酒かすにそれほど馴染みのなかった学生たちは、風味の良さを生かすために、酒かすをどれくらいの量を入れればよいかなど、議論を重ねました。

     

    学生が試作する様子

    この試作品に町内の和食店が注目しました。この店では、もともと酒かすを使ったメニューを作りたいという思いがありました。試作品をヒントに、料理教室の講師からもアドバイスを受けながら、バターケーキを作り上げました。

     

    その作り方です。まず、牛乳と溶かしたバターに酒かすを入れ、卵などと一緒になめらかになるまでしっかりと混ぜます。酒かすのうまみと甘みを全体に広げた後、オーブンで焼き上げていきます。

     

    おか半総本店 佐古慶子さん

    酒かすのバターケーキを作った 佐古慶子さん
    「多くの人が関わってここまで来たので、関係者の方々にとても感謝しています。熊野町のおいしいものを広めたいという思いで作ったので、たくさんの人に喜んでもらいたいと思っています」

    化粧筆や町のキャラもお菓子に

     

    そして、熊野町と言えばやはり筆。中でも化粧筆は、品質の高さで知られています。

    町内のカフェレストランがそんな化粧筆をモチーフにしたソフトクリームを作りました。ビーツのペーストを使った赤紫のもの、かぼちゃのペーストを使った黄色いものなど、カラフルな色合いは、アイシャドーといった化粧のパウダーをイメージしています。

     

    このほか、町のキャラクター「ふでりん」をモチーフにしたケーキと、あんまんも完成しました。

     

    熊野町 産業観光課 荒谷大祐 主査

    アイデアの募集から半年あまりを経て完成した、5つの商品。町では、筆に続く名物に育てたいと考えています。

    熊野町 産業観光課 荒谷大祐 主査
    「このコンテストを行うにあたって『新名物を目指して、町の外から人が来てくださるようなものを作りたい』という思いもありました。今回、5つの“名物”が完成しましたが、これはあくまでもスタートだと感じています。これから町の内外の人に知ってもらい、筆とともに、地域の新しい名物として育てていきたいと感じていますし、これを機会に、熊野町にお越しいただければと思います」

    完成した“新名物”は、開発した町内の飲食店で味わうことができます。詳しくは、熊野町のホームページをご覧ください。

    (3月26日「お好みワイドひろしま」で放送)

      • 児林大介

        広島放送局 記者

        児林大介

        鳥取→和歌山→東京→盛岡→広島。ニュースウオッチ9リポーターとして全国のさまざまな現場を取材したほか、各地の夕方6時台ニュースでキャスターも経験。現在、記者として経済を担当。山口県出身。

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