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江田島沿岸に“空飛ぶ船”が出現?!

  • 2023年03月02日

広島県の江田島沿岸に“空飛ぶ船”が出現していると聞き、現地に足を運びました。
いったい、どんな船なのでしょうか。

(広島放送局記者 福島由季)

空飛ぶ?!巨大船

江田島市江田島町小用の沿岸

情報をもとに私が訪れたのは、江田島市江田島町小用の沿岸。そこには、全長142メートル、幅50メートルの巨大な船が停泊していました。大きなクレーンのほか、船の四隅には見慣れない柱のようなものが備えられています。

2月14日午後4時半すぎ。船に動きがありました。船体が少しずつ“浮かび上がって”いきます。わずか5分の間に、船底は海面から4メートルほど離れました。

この船の正体は何なのかーーー。

取材をしてみると、この船は、大手建設会社が発注し、呉市の造船所が建造したことがわかりました。特殊な形をしているのは、洋上風力発電の施設を作るための作業船だからです。洋上風力発電の作業船として世界最大規模、船の四隅にあった柱のようなものは、脚だということです。

この作業船は脚を海底まで下ろすことができます。

そして、船体をジャッキアップしていきます。ジャッキアップされた船体が、あたかも船が飛んでいるように見えたのです。

船体を持ち上げるのは、波に左右されない作業条件を確保するためで、最大で水深65メートルの海域まで作業できるといいます。大型の施設にも対応できるように2500トンの重さまでつり上げることができるクレーンも備わっています。船内には最大でおよそ130人が宿泊できるほか、トレーニングジムやシアタールームなどもあります。

船は、江田島沿岸で3月中旬まで、ジャッキアップやクレーンの操作の訓練を続けます。そして、4月からいよいよ富山県の沖合に出て、洋上風力発電の建設を行う予定です。

清水建設 今村秀夫主席マネージャー

(清水建設・今村秀夫 主席マネージャー)
「世界最大級の船を見る機会はめったにないのでぜひ見に来てもらいたいです。国内で洋上風力発電設備が次々と着工していく中で大きな作業船があると工期が短くて済むので、この船に寄せられている期待は大きいと思う」

脱炭素社会で期待高まる 洋上風力発電

洋上風力発電は、脱炭素社会の実現に向けて動きが活発になっています。日本ではこれまで、太陽光や陸上風力を中心に再生可能エネルギーの導入が進んできましたが、山が多い日本では適した場所が限られています。このため、広大で安定して強い風が吹く、洋上風力発電に注目が集まっています。

洋上風力発電

去年12月には、国内で初めて秋田県の能代港で20基の大規模な商業運転が始まりました。そして、ことし1月には秋田港でも商業運転が始まっています。洋上風力発電をめぐっては、国は2040年までに大型の火力発電所に換算すると30基から45基分に相当する3000万から4500万キロワットまで拡大することを目指しています。

取材後記

いつもと変わらずおだやかな瀬戸内海で繰り広げられる迫力ある光景に、取材中も胸が高鳴りました。広島で誕生した船の活躍に期待が高まります。

  • 福島由季

    広島放送局記者

    福島由季

    2021年入局 広島市出身  経済や原爆の取材を担当 

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