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2024年1月16日(火)

シリーズ 新時代へのエール① 自分を見つめ踏み出す一歩を 作家・西加奈子

シリーズ 新時代へのエール① 自分を見つめ踏み出す一歩を 作家・西加奈子

作家・西加奈子さんが語る“新時代へのエール”。カナダ・バンクーバーでの乳がん治療の体験をつづった自身初のノンフィクションがベストセラーに。その体験やこれまでの記憶を種に書かれた短編集も、多くの読者の心を打ち続けています。「あるべき姿」に縛られ息苦しさを感じる今の時代にこそ、「ありたい姿」や幸せのをかたちを捉え直すことが必要だという西さんの思いとは。タレント・俳優の長濱ねるさんが西作品の魅力を語りました。

出演者

  • 西 加奈子さん (作家)
  • 長濱 ねるさん (タレント・俳優)
  • 桑子 真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

創作の現場で ロングインタビュー

桑子 真帆キャスター:
失礼します。こんにちは、初めまして。桑子と申します。

作家 西 加奈子さん:
こんにちは、初めまして。西です。よろしくお願いいたします。

桑子:
やはり、本がたくさんありますね。

西さん:
もともと自宅やったんですけど、もう仕事場にして、はい。

気になるものを見つけました。

西さん:
クリムトの「接吻」が好きで。クリムトの絵をどうしても飾りたいけど、もちろんお金がないので自分で描いたんですよね。

桑子:
いや、でもすばらしいですね、これ。段ボール…ですか?

西さん:
段ボールを、つぎはぎして。大きいのがなかったんで描きました。

西さん:
表紙の絵も大体クレヨンです。段ボールにクレヨンが多いですね。

桑子:
だから同じ統一感があるんですね。

西さん:
そうです。

実は、小説の表紙のほとんどは、西さん自ら描いたものなんです。

西さん:
最新刊の「わたしに会いたい」という小説の表紙の絵なんですけど。これ、ほんとは動けて。

桑子:
触ってもいいですか?

西さん:
もちろん。これも段ボールとクレヨンなんですけど、この木?ちょっと体に見える木?いろんな皮膚の色がある体の木に、これはおっぱいなんですけど、おっぱいの実がたくさんなるみたいな。取ってもええし、つけてもええし。

桑子:
色もそうだし、形もそうだし。

西さん:
うん、もう自由に。

桑子:
ほんとに「いろんなものがあるよ」って。

西さん:
そうです。「いろんなおっぱいあるよね」っていう感じの。

最新作で描いた“味方は自分”

2023年11月に刊行された最新作「わたしに会いたい」。多くの読者の共感を集めています。

文芸担当 山口奈美子さん
「『自分が自分として生きていける』みたいな。『すごく強くなれる』という感じの『気づきがすごくあった』という感想が多い」

8つの物語から成る短編集。表題作「わたしに会いたい」の主人公は、身体的なハンディがあり、体の小さい未唯。いじめに遭うなど困難な人生を歩む未唯ですが、ピンチに陥ると、もう一人の「わたし」である"ドッペルゲンガー"が現れて救ってくれます。


「わたし」はわたしのヒーローだった。
(中略)
ヒーローは力強く微笑んでいる。
言葉に出さずとも、こう言っている。
「君のそばにいるよ。」

「わたしに会いたい」

桑子:
ドッペルゲンガーって、会うと死んでしまう「怖いもの」という認識があるじゃないですか。でも逆に、死から遠ざけてくれるもの、生きるための「わたしのヒーロー」として定義づけていますよね。新しい着眼点というか発想だなと思ったんですけど、それってどこから来たんですか?

西さん:
もともと関西出身というのもあるかもしれないですが、結構ツッコミ体質というか、もう一人の自分がいつもどこかにいる感じがあって、何かやった時には「何やってんねん」みたいな。特に作家になってからそれが顕著で、作家になると「作家です」って感じで出させていただくこととかあるんですよ。いっぱいの人の前でしゃべったり、そういう時に自分が何かちょっとでもかっこいいこと言うと「言ってんな」みたいな。もう一人の自分がいるんですよね。それだけ聞いてると「厳しいもう一人の自分」みたいやけど、そのもう一人の自分がめちゃくちゃ自分には甘くて「言ってんな~。でもわかるでえ。頭よく見られたいもんなあ、このメンツやと」とか、自分の味方をすごくしてくれるんですよ。その感覚はずっとあって。

桑子:
そうですか。

西さん:
最近は時代の変化でなくなってきたと思うんですけど、昔はいわゆるヒロインみたいな子が、ヒーローが現れて救われるみたいなのが結構あったんですよね。メディアの世界というか、物語の世界も起こっていて。でも「ヒーローを待ってな、あかんのか」っていう。自分がヒーローやったら自分次第やなあって。何かアホみたいですけど、「わたしに会いたい」って私が来てくれたって思うと、すごく心強いんだろうなって。

桑子:
西さんの中には、もうヒーローがいると思えているということですか?

西さん:
ヒーローほどかっこよくないですけど、優しいんです、自分に。自分、あかんとこすごくいっぱいあるし、ひきょうやし、うそついたりして「ああ、やってもうたな」と思うけど、同時に「やったな。やったけど、まあまあまあ、分かるで。次からやめといたら?」っていう感じの仲間感というか。
あと極端な話を言ったら、親よりも、例えば家族とか友達よりも、自分といる時間、いちばん長いじゃないですか、圧倒的に。例えば、私46で、46年間離れたことないって、「味方にせな損やろ」って言ったらあれやけど、味方にした方が生きやすい。
もちろん自分に甘々になって、自分の欠点を見ないふりするのは絶対あかんけど、私はそういう感覚ですね、いちばん自分と一緒にいる「何かよう分かってくれてるやつ」みたいな。

桑子:
めちゃくちゃ羨ましいです。

西さん:
ホンマですか?

桑子:
はい。そういう人、みんないますかね?自分の中に、そんな優しく寄り添ってくれるというか「まあいいよ、しょうがないよ」って言ってくれる人っているかなあと思うんですけど。

西さん:
ご自身にお厳しいんだ、きっと。私、めっちゃ甘いんです。自分に厳しい人は多い気がする。「ええやん、もうほんと、あなた十分に頑張ってんのに、ちょっとずるいことぐらいするやろ」っていうのも「いや、許せない」って、自分のことを許せない人が多い気がして。「そんなことないのになあ」って、うちは思っちゃいますけど。

人生を顧みる経験 乳がんと"自分自身"

27歳でデビューし、直木賞をはじめ、数々の賞に輝いてきた西さん。一貫して書いてきたのは「自分がどうあるかは自分が決める」ということです。


自分のしたいことを、
叶えてあげるんは、
自分しかおらん。

「きりこについて」

お前がお前やと思うお前が、
そのお前だけが、
お前やねん。

「ドラゴン・スープレックス」

3年前、滞在先のカナダで自らの人生を顧みる大きな経験をします。両乳房の切除が推奨されている乳がんと診断されたのです。当時のことをノンフィクションに記しています。


もちろん、がんは怖い。
出来ることなら
罹患したくなかった。
でも、出来てしまったがんを
恨むことは、
最後までなかった。
私の体の中で、
私が作ったがんだ。

「くもをさがす」

治療の中で、これまで自分が書いてきたことを改めて実感したというエピソードも記されています。具体的な治療の方針を医師と相談した時のこと。こう伝えられたといいます。


「もちろん。決めるのはカナコやで。」
「あなたの体のボスは、あなたやねんから。」

「くもをさがす」

西さん:
自分は、体を持っていったらお医者さんがなんとかしてくれると思っていたんです。「がんです」って言って。そしたら、もうすごく委ねられて「どうしたい?」って。結構びっくりしたんですよ。でも「いや、そらそやな」っていうか。「あんたの体、ちゃうもんなあ。せやんなあ」みたいな感じです。「あっ、そや。私の体や」って。
あなたたちはプロフェッショナルだから、私の命を救う手だてを最善を尽くしてくれるけど、どうしたいかは私が決めんねや、私の体やからって、めっちゃ当たり前のことやったはずやのに、めっちゃ開眼っていうか「ああ!」ってなって。結構、啓示的でした、すごい。

桑子:
もともとでも、そういう考えを持っていらしたじゃないですか。

西さん:
持っていたはずですけどね。「自分の体は自分のもんや」っていうのをこんなに感じた8か月はなかったので。
ネガティブな気持ちも、自分の体で起こっていることじゃないですか。例えば「めっちゃ怖いよなあ」って乳がん患者同士で言ったとしても、絶対その怖さって違うんですよ。怖いっていう言葉を発明してくれた人がいるから共有できることはあるけど、絶対それって解体していったら一人一人の違う怖さがあって、自分は自分だけの怖さをちゃんと見たかったんですよね、どう怖いのかって。だって私しか分からんのやって。その経験もすごくでかかったです。

自分を見つめ直す。そのことを過去の経験をもとに描いた作品、最新作「あなたの中から」。主人公の「あなた」は、異性から選ばれる自分でいるために常に容姿を意識してきました。


「あなた」は野心のある
面倒臭い女になってはいけなかった。
(中略)
皆にお茶を淹れて回り、
言われた仕事は笑顔で受ける。
(中略)
上司のセクハラも笑っていなすのだ。

「あなたの中から」

専業主婦になった「あなた」は、おしゃれな手料理や夫との海外旅行の写真を日々、SNSに投稿します。常に"女"としてどう見られるかに、こだわってきました。そんな「あなた」が乳がんになり、自分自身を取り戻していくというストーリーです。

桑子:
女性として周りからどう見られているかを考え過ぎて、もう壊れて、最後は取り戻すという、本当に最後、救いがあってよかったなと思ったのですが、あれは西さんご自身の過去の経験が反映されたものなのですか?

西さん:
彼女ほど過酷ではなかったですけど、やはり多かれ少なかれ、あるんじゃないかなと思います。10代・20代は、"かわいく"なりたかったし、私、胸がちっちゃいことがずっとコンプレックスやったんですよ。何でコンプレックスやったんやろうとか、それは胸が大きい女性がかっこいいとかでもなかったっていうか、エロティックやったっていう。おつきあいする方に胸ちっちゃいから申し訳ないなってホンマに思っていたし。でも「いや、よう考えたら、かわいい、ええ胸やったよな」とか、今になったら思うのもあるし。

女性の体って、ものすごく物語をつけられてきたと思うんですよね。付加価値。「価値」という言い方もするし「呪い」でもあるし、こうであるから美しいとか、こうであるから官能的であるとか。
よくね、「女性の体であることが生きづらい」っていう言い方をされるんですけど、女性の体であることが生きづらいわけじゃなくて、女性の体、それ自体は。女性の体を持っていることで、社会的に何らかの役割を与えられて、それで生きづらくなっているっていう。じゃあ一回、その体って何なんやろうっていうので、それこそ解体していくっていう感じやったんやと思います。

桑子:
外からこう見られたいからこうなりたいっていう、自分発信じゃなくて受け身な理由によって自分がこうありたいと思うのって、本当は悲しいことですよね。

西さん:
ハッピーに、すごくすてきな人を見て「わっ、ああなりたい!」やったらいいけど「ああじゃないと愛されませんよ」みたいな脅しに乗りたないなっていうか。「いや、こうじゃないと、こうじゃないと、こうじゃないと…」、チェックマークみたいに「そうじゃないと、社会に居場所はありません」みたいな。あとは「こういう自分で愛されるでしょうか」ってジャッジを委ねていたような状態やったと思うんですよね。自分の身体とか心とか体、すべてを社会からいったん取り戻すっていうのは、多分共通して書いてきたことやと思うんですよね。

乳がんを経験し、自分を取り戻すということをより強く意識するようになった西さん。そこから新たな気づきを得たといいます。

西さん:
自分の体は自分のものや。自分の人生は自分のものやっていうことを本当にちゃんと認識して初めて、他者に目がいくようになるんじゃないかなって思います。
他者っていうけど、その人にとったら本人ですよね、自分じゃないですか。だからいろんな自分がいるっていう。たくさんの自分がいるわけじゃないですか。それに気づけるのって、やっぱり自分をちゃんとしてからやと思うんですよね。
「ああ、もう自分の人生ってたった一回や」それってイコール「あっ、この人の人生もたった一回で、この人の体もたった一つなんや」って思うことに、私に関してはですけど、つながっていきますね。

"自分を取り戻す" 届け続けたメッセージ

西さんの作品を読んで自分を取り戻すことができたという、長濱ねるさんです。

アイドルグループ・欅坂46の元メンバーで、現在はタレントや俳優として活動しています。

タレント・俳優 長濱ねるさん
「『サラバ!』の"あなたが信じるものを誰かに決めさせてはいけないわ"というセリフが本当に大事にしていて」

どう見られるかを必要以上に意識してしまっていたという長濱さんを解放してくれたことばだといいます。

長濱ねるさん
「誰かに言われたことばに呪いをかけられるじゃないですけど、ずっと気になっちゃってたり、自分のことがわからなくなったりする時期もたくさんあったんですけど、西さんのことばで自分のことは自分でしか大切にできないし、自分がいちばん自分のことを信じてあげようって思えて。人にどう見られているか、『今のひと言、失敗だったかな』とか、一つずつ気になっちゃう性格をも自分だって認められたことが大きな変化」

最新作では、西さんのメッセージが、よりまっすぐ伝わってきたといいます。

長濱ねるさん
「これって変じゃない?っていうのを、ちりばめられているので。『この子かわいいよね』っていうシーンがある。『顔かわいいから目をひくよね』って。それって、よく聞くことばだけど、すごく攻撃的な気もして。めちゃくちゃありますね、知らない人に『もうちょっと痩せたほうがいいんじゃない?』『もうちょっと太ったほうが女の子らしくて好きだよ』とか。これっておかしいよな、これってむかつくよなということを西さんが代弁してくれて、やっぱり思っていてよかったんだ、この気持ちにふたをしなくていいんだ。西さんによって、すごく息がしやすくなった」

西さんの担当編集者の渡邉彩予さんです。最新作の原稿に初めて目を通したあと、こう感想を送りました。

編集者 渡邉彩予さん
「すべての痛みを抱えて生きている人たちに読んでほしいと思いました。10年前とか5年前に比べて、だいぶ普通の人が声をあげやすくなるというか、普通の人が『苦しい』みたいなことを声に出していいというか、それは言っていいことなんだっていう、そういう土壌みたいなものは作られつつあるのかなと思います。一人一人が少しずつ変わっていけば、世の中全体の空気も変わっていく」

桑子:
背中を押されて「自分はこれでいいんだ」って思う人が長濱さん以外にもたくさんいらっしゃると思うんですけど、とはいっても、今っていろんな人に物が言える環境にもなったし、言われる環境にもなったし、ギュ~ッと自分が縮こまってしまいやすい社会だと思うんです。その中で「あ~、自分は自分でいいんだ」と思えるように、思い続けられるようにするのってすごく難しいと思いませんか?

西さん:
特にね、若い方は過酷やと思います。私たちも、もちろんね、サバイバルじゃないけど、してきたと思うんですけど「こういうためには、こうしたらいい」って情報がずっと入ってくるのは、めちゃくちゃしんどいやろうなって思います。この社会にいたら、100パーセント自分の意見であることも不可能やと思うんです。悲しいけど絶対に何らかの影響は受けているし。
じゃあ、せめて自分は、なるべく自分の分を多く取っとかへん?っていうか。自分の気持ちを取っとこう。自分がどう思うか、自分がどうしたいか、自分が何が好きかをなるべくたくさん集めて、自分性を増やしたい。
とにかく自分はどうしたいか、自分は何が好きかっていうのを分かるためには情報から離れることやと思うんですよ、なるべく。何をしている時の自分が楽しいかっていうのは、やっぱり無音の場所っていうか、精神的に無音の場所に行くことが私にとってはすごく大切でした。

桑子:
みんな、じゃあスマホ置こうよって言って…。

西さん:
無理無理!あんな楽しいんですもん。

桑子:
じゃないですか。そんな中で、どういうふうに自分を保ったらいいんですか?

西さん:
(スマホを)持っている人がですか?いや、分からんなあ。人それぞれですもんね。でも、ちょっとでも離れて全く情報に触れてへん時に自分がどう思うかを感じたら「うわっ、何か楽しい」ってなれへんのかな?何か圏外のとこ行くのワクワクしません?ワクワクせえへんねやったら、もうこの話は、なしです。

桑子:
でも分かります。

西さん:
「うわっ、誰にも捕まれへん」とか「私しかおらん」っていうか。

桑子:
自由だ。

西さん:
そう。「私が見たものは自由に私が感じていい」っていう世界がある。最近は情報を得ることがすごくたやすいから、正しい答えにたどりつくのがめっちゃ早なってもうてる気がして。
やっぱりSNS見ちゃうと、特に自分顕著やったんが「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)(2020年 黒人に対する差別の撲滅を目指し広がった運動)」の時に、やっぱり自分の尊敬している人が何を言っているかを見ちゃうんですよね。「そのとおり!」みたいに思うんやけど、「いや、お前、絶対最初に、これ思ってへんやろ、もっと間違えて間違えていったやつじゃん、もっと時間、絶対かかったはずや」。でも、やっぱり最初にそれを見てまうと「前からそう思ってた」みたいになるのが、めっちゃ怖いと思って。「自分ないやん」と思って。

あとは、ホンマ間違うことを恐れたくない。せっかく小説あんねんから、小説ってホンマにたったひと言のこと言うために全場所に寄り道するようなジャンルやと思っているんですよ、何百枚書いて。それだけ時間をかけていいジャンルをやってんねんから、何かの答えにたどりつくまでに間違えて間違えてボッコボコになって、たどりついてもええんちゃうのっていう。

やっぱりインスタントにできる自分は、自分じゃないんですよね、多分。私に関しては、主語は全部「I(アイ)」です。「私」に関しては、ちょっと早すぎる気がして。こんな簡単に私は多分、この答えにはいかない。もっといろんな人と話して、いろんな意見を聞いて、間違ったことを言って、時にはケンカをして、「あ、そっか。自分にはこういうことや」ってなるはずやっていうのを分かってきたというか。

間違うことを恐れず、時間をかけて答えにたどりつく。そのために西さんがやっているルーティンを教えてくれました。

西さん:
一日の終わりに、自分が何にも起こらんかった日って、やっぱないから、例えばちょっとでもイライラしたことがあったら、何でイライラしたんかをすっごい自分で突き詰めていく作業っていうのをしてて。なかったことにせんと「あれ、何で腹立ったんかな」って、それを解体していくっていうのはすごくします。
大体、「うわ~、そうなんや、嫌やな」みたいな、「そんな自分の感情見たなかった」っていうところにいくんですけど、やっぱり恥ずかしい気持ちとかって巧妙に隠せるんですよね、何十年も生きてきたら。違う理由で私は怒ってる「スンッ」みたいなふうになるけど、実はすごく卑近なことで怒っていたり、怖がっていたりっていうのがあったり、それを認めるとめっちゃ体に負荷かかるんですけど、でも「よう認めた!」みたいな気にはなります。「そっか、嫉妬しててんな!」みたいなのとか。

桑子:
逃げていないですね。

西さん:
逃げてないっちゅうか、何すかね。その方が自分には向いているんですよね。逃げんのうまいから、多分。

2024年を生きる 社会への希望

桑子:
2024年、どういう年にしたいか。

西さん:
どういう年にしたいですか?

桑子:
笑顔が多い年にしたいですね、自分の。まず自分が笑わないといけないなって。何か今、スッと出てきました。西さんのお話を伺ったら、やっぱり、まず自分が笑わないと相手を笑わせられないなって。今すごくスッと。ありがとうございます。

西さん:
いえいえいえ、すばらしい。

桑子:
いやいや。いかがですか?

西さん:
もうホンマに正直でありたいですね。正直に自分のペースでやりたいっていうのがあります。

桑子:
社会に対しては、どういう年になってほしいなという思いは何かありますか?

西さん:
社会全体が、ちょっと疲れてきているってのはあるけど、一人一人会うと、めちゃくちゃ優しいし、何か美しいですよね。お一人一人のお気持ちが、何かすごく好きですね。ホンマにおこがましいですけど、少しでも自分の人生を一人一人の方が歩めるようにっていうのは、すごく思います。

桑子:
希望をもらえる作品をぜひ、これからも楽しみにしていますので。

西さん:
ありがとうございます。

桑子:
ありがとうございました。

(インタビューは2023年12月25日に行いました。)

見逃し配信はこちらから ※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

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