【福島・クマ】 独自の「クマMAP」で出没傾向を分析!
- 2024年04月12日
ことし3月末、会津若松市の温泉街でクマが出没し、3日間にわたって建物の中に居座りました。
県はクマの目撃が相次いでいるとして、4月から県内全域にツキノワグマ出没注意報を出して注意を呼びかけています。会津若松支局で勤務する私も、1日に何回も発表される警察や自治体からの「クマ目撃情報」の通知に、身近にこんなにクマがいるんだ、と“森のくまさん”のイメージを改めています。
そこで、このクマの出没地点を地図で可視化し、傾向を分析してみました。すると、冬に相次ぐ目撃事例や街なかへの出没など、具体的な特徴が見えてきました。
クマの目撃情報を、地図で「見える化」する今回の試み。
県から令和4年度と昨年度(令和5年度)の2年分の出没場所のデータをもらい、地図上に重ねて分析する「GIS=地理情報システム」という技術(高校で必修科目の地理総合でも学びます)で、私が独自にマッピングしてみました。GISについては、過去にこちらの記事でも取り上げて紹介しています。
今回は、その地図で、改めて見えてきたクマ出没の特徴をみていきます。
こちらは福島県の地図。
緑色の部分が山あい、白い部分が盆地や平地です。
これに、令和4年度の目撃や被害があった場所、385件を青色で示しました。青色の四角、1つ1つが
出没場所で、猪苗代湖西側、福島市西側などが多い印象です。
次に、令和5年度を見てみます。
今度は、赤色で出没場所を示しています。
会津盆地は真っ赤になっています。これまで目撃例がほとんどなかったいわき市でも、去年の秋とことしの始めに確認されています。浜通りでの確認がここ数年確認されているとは言え、筆者もいわき市で立て続けにクマ?!と驚いた記憶があります。
2つを比較してみます。
クマは出没しやすい場所があるため2つの年で重なっている部分もありますが、昨年度は前の年の2倍近い709件が確認されています。この2年分を比べてみると、赤色で示している昨年度は、出没範囲が明らかに広範囲に広がっています。
この中でも特に注目したいのが冬の間の出没。
12月から3月にかけて、通常は冬眠している期間ですが、令和4年度の目撃数は4件。
では昨年度はどうでしょうか。
大きく増えています。4件から46件ということで、10倍以上。
豪雪地帯の南会津でも確認があります。
これについてクマの生態に詳しい、福島大学の望月准教授に聞きました。
冬も目撃例が相次いでいるとは聞いていましたが、地図で見ると改めて多いことが分かりますね。
また、クマは人里離れた場所にひょっこり現れるイメージが強いと思いますが、全国では、街なかへの出没も確認されています。
ことし1月には、岩手県北上市のショッピングセンターに子グマが現れました。店の周辺には田畑はあるものの東北新幹線の北上駅から2キロほどのところで、山あいからは離れた場所でした。県内でもこうした街なかでの出没例はあるのか、数が多かった会津盆地を代表して見てみます。
画面中央上から、喜多方市、湯川村、会津若松市、と広がっています。
山からかなり離れた場所にも出ていますが、山沿いからは10キロ近く離れた場所にどうやって移動したのか。
そこで、あるデータを重ねてみると…。
河川を青い線で表示してみました。
出没場所と川が、ほとんど重なっています。
南会津から流れ込んできている阿賀川沿い、そして上の方、喜多方市では日橋川などの河川と重なっているようです。
これについても、望月准教授に尋ねました。
川沿いや河川敷の生い茂った草や木がクマにとっては隠れながら移動する経路になっているということです。こうしたクマにとっての“道”を通って活発に活動しているということですね。
クマはエサ場と認識した場所を繰り返し訪れることもあることから、県が呼びかけている注意点をまとめました。
過度に警戒する必要は無いとはいえ、山から離れているからといって油断はできません。
また、これからのシーズンは、山菜とりやキャンプなどで山に入る機会も増えます。
一方で、クマにとっては、冬眠明けで空腹状態の春先や、発情期の夏にかけては活発に活動する時期です。山に入る際の注意点もまとめました。
今回の分析では、大きな特徴や傾向を見ていきましたが、目撃された時間やケースなどにあわせて分類し可視化することも可能です。クマ以外でも、生活情報や災害関連といったデータを用いた分析で“見える化”に取り組み、さまざまな情報を発信していきます。