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【福島】 『喜多方ラーメン課』発足!

『そば課』とともに地域課題の解消へ
  • 2024年04月12日

福島県の食を代表する“喜多方ラーメン”。
その地元、喜多方市では、今年度新たに“喜多方ラーメン課”という部署が発足しました。日本三大ラーメンの1つにも数えられるブランドの名前を冠したユニークな部署ですが、立ち上げの背景には業界が直面しているピンチがありました。
市の狙いと、地元の期待を取材しました。

新年度初日の4月1日。
喜多方市役所では、新入職員や部署を異動する管理職など、およそ60人への辞令交付式が行われました。
この中で、遠藤忠一市長が力強く宣言しました。

「新たに“喜多方ラーメン課”と“そば課”を設置します。
 地域で愛されている食文化のブランド力と知名度の向上と発展に取り組みます」

市が今年度新たに設けた2つの部署「喜多方ラーメン課」と「そば課」。部署としてはそれぞれ独立していますが、いずれも観光交流課の室内にあります。それぞれの課には、観光交流課の職員が兼務するかたちで配属され、ラーメンとそば、それぞれのブランド力向上と国内外への魅力発信に取り組みます。

所属する職員は、みんな大の麺好き。
平日は同僚との昼食に市役所の近くのラーメン屋へ。休日には家族で朝ラーする(朝からラーメンを食べる)職員もいます。今回の課の発足を受けて、市内の全店舗制覇という目標をぶち上げた職員もいました。

喜多方ラーメンは、言わずと知れた一大ブランド。そして、市内の山都地区に伝わる「山都そば」も長年地域で愛されている食文化として、ともに文化庁の「100年フード」にも認定されています。

しかしいずれも近年、高齢化や過疎化によって店舗の後継者不足や生産農家の減少などに直面しています。2つの課の発足は、観光振興のPRなどだけではなく、そうした産業が抱える課題の解決を図るねらいがあります。

(観光交流課とあわせた3つの課の課長を兼任する瓜生昭彦さん)
「喜多方に根づいた食文化で、伝統文化から現在の観光資源として発展してきたわけです。さまざまな課題が多いので、まずは足元をしっかり固めた上で、外に向けて色々な情報を発信していきたい」

新設された課に期待をよせる人がいます。
市内の33店舗で作る「喜多方老麺会」の代表理事で、自身もラーメン店を経営する花見拓さんです。

市によると、平成22年頃には110店舗以上あった喜多方ラーメンの提供店は、この15年ほどで20店舗近く減少しました。花見さんは、70年以上の歴史ある名店も相次いで閉店する事態に、危機感を強めています。

(喜多方老麺会・代表理事 花見拓さん)
「同業者の間では経営者の高齢化や雇用の維持などが課題となっています。目の前の経営で手一杯になっていて、将来の店のあり方についてまで考える余力が無い状況です。市役所には本当に期待しています」

花見さんたちは商工会議所などと連携し、店主と後継者のマッチングや新たな担い手による新規出店を目指しています。また、将来に喜多方ラーメンを残していくためにも、消費の安定、そして拡大は重要テーマです。昨年度には、7月17日を『喜多方ラーメンの日』として登録するなど、ユニークな取り組みも行っています。

しかし、店舗同士などでの民間だけでは手が回らない部分も。花見さんは、市の喜多方ラーメン課には、行政の施策による広報活動や人手不足の解消策に取り組んでほしいと期待しています。

(花見さん)
「喜多方ラーメンは、観光客が減る冬には客足が遠のくなど、季節によって収入に大きな波がある業界で、それは雇用の不安定さや若い人の起業しにくさなどにつながってしまいます。そうした部分は、私たちだけでどうこうするのは難しいと。100年後とまではいわなくとも、将来にずっと、5年10年20年と喜多方ラーメンを残していけるように、官民連携していけたら」

  • 佐藤翔

    NHK福島放送局 記者

    佐藤翔

    会津若松支局勤務。
    娘が喜多方ラーメン大好きで、制止しないとスープを飲み干してしまいそうな勢いで食べます。

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