福島県須賀川市の“ハプニング”で理解を深めるラーメン店
- 2023年12月27日
熱々のスープともちもちの麺が食欲をそそる“ラーメン”。訪れた人たちが「おいしい!」と口いっぱいに頬張るラーメンには『認知症について知って欲しい』という切実な思いが込められていました。(福島局アナウンサー・須藤健吾)
サポートを受けながら店内で認知症の人たちが接客するラーメン店「ハプニングラーメン」が須賀川市に1日限定でオープンしました。
注文が届いていなかったりおつりを間違えたりといったハプニングを通して認知症への理解を深めてもらおうというイベントです。
訪れた人たちは
いい顔してますね、みなさんニコニコして。私の母も認知症だから関わってもらえることはいいことだと思います。
イベントを企画したのは認知症の人のためのグループホームを運営するNPO法人です。理事長の今野秀吉さんは認知症になっても働くことに意欲的な人たちと社会をつなげたいと考えています。
認知症になってしまうと何もできなくなってしまうっていうふうに皆さんお考えになる傾向が強いんですけれど、できなくなるところが一部分だけであとはものすごく能力を持っていらっしゃるということを社会にちゃんと示したい。
イベントを心待ちにしていた入居者がいました。真島恵美子さんです。夫が亡くなり1人で暮らすことになった真島さん。その後、認知症の症状が進行し、車で出かけた先で自宅の場所が分からなくなったこともあったといいます。 家族と話し合い施設への入居を決めました。
以前、この施設で調理スタッフとして働いていた真島さん。入居してからも前向きに取り組んで来たのは 「料理」の手伝いです。時々、行っている作業を忘れてしまうこともありますが周囲の人に教えてもらえば再び作業に取り組むことができます。
料理にやりがいを感じていた真島さんはコロナ禍で一時中断し、今回4年ぶりの開催となった「ハプニングラーメン」の募集が始まると真っ先に手をあげました。
開催当日。店内は満席で、事前に予約した家族やこの取り組みに関心のある人たちでにぎわいます。
ちゅう房にはトッピングのネギを切る真島さんの姿がありました。手際の良さを店長からも褒められます。
地元のラーメン店の協力のもと、11人が参加してそれぞれ役割分担して客を迎えました。店には真島さんの娘さんも訪れました。
そして、この日予定していた75食は“完売”。
働いた皆さん一人ひとりに給料が手渡されました。参加者全員で働いた達成感を分かち合います。
『自分の手で“できた”という体験が自信につながる』
イベント終了後、真島さんたちには自然と笑みがこぼれていました。
(真島さん)
やっぱり楽しいというか、なんかるんるん。ふだんそんなに人といろんなことやってないでしょ。またやりましょうね、何か楽しいことをね。
取材を通して
参加した皆さんがお客さんとのやりとりを楽しんでいることが伝わってきました。最初は緊張していたように見えましたが徐々に自信がついてきたようで、自ら率先してお客さんの靴を揃えたりとかテーブルを拭いたりする様子がとても印象的でした。一人ひとりがまずは「認知症」について理解をしていくことが大事だと感じました。