ページの本文へ

NHK福島WEB特集

  1. NHK福島
  2. 福島WEB特集
  3. 地方への移住の決め手は“トンボ”だった

地方への移住の決め手は“トンボ”だった

福島県の奥会津・只見町の自然に魅せられた男性がいました。
  • 2023年11月29日

只見町のトンボ 魅力伝える企画展

中心部を流れる只見川

美しい自然が魅力的な只見町。秋になると町内では至るところでトンボが見られます。

公園を散歩すると羽を休めるトンボを見つけました

町のトンボの魅力を知ってもらおうという企画展が自然や生き物を紹介する資料館 「ただみ・ブナと川のミュージアム」 でことし開かれました。

町のトンボの標本がずらり
おなじみのオニヤンマも

どのトンボが町のどこに生息しているかや、体の仕組みなど詳しく紹介されています。 企画展には町の人達だけでなく海外からも来ていました。台湾から友人たちと訪れたという女性はトンボの種類の多さに驚いていました。

台湾から訪れた女性

実はことしの夏までに発見されたトンボの種類は67種類!「こんなに多いんだ」と驚く方も多いと思いますが、驚くのはまだ早い・・・。

67種類がポスターにまとめられていますが・・・

なんと企画展の開催中にも調査が行われ、新たに2種類を発見!2023年秋現在で見つかった数は“69”種類に上ります。

新たな2種はポスターが間に合わずブースを増設して紹介

あるトンボを追いかけ 只見へ移住

実はこの企画展、全て1人の男性が3年以上かけて準備してきました。只見町ブナセンターに所属し資料館で働く太田祥作 (おおたしょうさく)さんです。 小学生の頃からトンボ好きで只見のトンボを研究したいと東京から只見町に3年前に移住してきました。 

太田祥作さん(28歳)

太田さんは研究結果を日本各地のトンボ研究者が所属する日本トンボ学会にも発表。 学術的な発信を国内外へ行っています。「調査結果を地域に還元する」というのが研究する上での太田さんのこだわりです。

調査は休日や空き時間に行っている太田さん

太田さんが移住を決めたきっかけは只見町に生息する“ある”トンボの存在でした。そのトンボというのがコバルトブルーが美しい「アマゴイルリトンボ」。日本の限られた湿地などにしかおらず、新潟県や山形県、県内では会津など5県のごく一部でしか生息していない貴重なトンボです。

通常は人里ではあまり見られませんが、只見町では至るところで見ることができ、太田さんは驚いたといいます。

太田さん

私の一番の推しのトンボです。たまに家の中に入ってきたりとか、ありえないぐらい普通にいるんですよ。他の地域の人にしたらアマゴイルリトンボってすごくレアでわざわざ遠征してまで見に来る価値のあるトンボなんです。 とても幸せですね。

トンボの調査に同行してみた

仕事のかたわら研究をしている太田さん。 ふだん行っているという調査に同行させてもらいました。太田さんは双眼鏡を使ってトンボを観察し町内での分布などを調べています。驚くべきはトンボを見つけるその“速さ”。太田さんは丁寧に私に説明してくれましたが全く見つけられません。

私には見つけられない遠くのトンボを次々に発見する太田さん

この日はミヤマアカネやアキアカネなど、鮮やかな赤が映えるトンボを見つけることができました。

太田さんが指さす先には鮮やかな赤色のトンボが!

多種多様なトンボが生息する只見町。 豊富な水源に加えて、天敵となる外来種がいない只見町の自然は、トンボが生息する上でこれ以上ない環境だと太田さんは言います。

太田さん

アメリカザリガニですとかウシガエルですとかトンボをはじめとして水辺の生き物を食べてしまうような外来種 が今でもまだ定着していないというのは1つすごく大事なこと。地元にこれだけの豊かな水辺があるんだよとみんなで共有して守っていくという努力が必要だと思います。

移住者だから気づいた只見の魅力

多様なトンボが生息できる環境を守ることは豊かな自然を守ることにつながる。少しでも只見のトンボに興味を持ってもらおうと、太田さんは今回初めて企画展と併せてトンボの魅力を伝える講座を開きました。

町内外から多くの人が講座に参加

用意した自作の100枚のスライドを使って町のトンボについて熱弁した太田さん。トンボの奥深さと併せて、只見の自然の豊かさを伝えます。

自作した太田さんのスライド
講座を楽しみにしていたという県内の方
企画展で解説する太田さん

太田さんはこれからもトンボの魅力を発信し続けます。

太田さん

トンボがたくさんいるっていうことは豊かな環境があるってことの証左になる 。トンボを調べて生息状況を明らかにすることは地域の自然環境の理解の助けになると思います。まずは興味を持ってもらう。そのための努力を惜しまずに取り組みたいと思います。

  • 須藤健吾

    NHK福島アナウンサー

    須藤健吾

    茨城県出身。学生時代は理系で生き物や自然が好き。実家では今年で28歳になる亀を飼っている。

ページトップに戻る