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ニットの魅力あふれるまち・伊達市

織物から編み物へ 平安時代から紡がれる糸の記憶
  • 2023年12月04日

あんぽ柿やモモと並び、伊達市で有名なのが「ニット」です。
地域で紡がれてきたニットの魅力を発信しようと取り組む人たちに出会いました。

伊達市といえば・・・

県北部に位置し約5万6000人が暮らす伊達市。
市内の直売所をのぞいてみると・・・。

直売所の中には新鮮なお野菜が並んでいるのですが・・・隣にはセーターにベスト、ニット製品がずらりと並んでいます。このニット製品というのは、今少し寒くなってきたから置いているんですか?

直売所 
木皿さん

いやいや、ずっと!年中置いてあるんです。有名なんですよ。保原とか梁川とかいうのはニットの町っていって。

伊達市には、県ニット工業組合に加盟する事業所の9割が集中しているんです。
でも、なぜ、伊達市でニットが盛んなのでしょうか?

“伊達ニット”の歴史とは・・・? 

謎を解くべく訪ねたのは、県内のニットの歴史に詳しい、三品清重郎さんです。

着用しているのはもちろん、お気に入りの“伊達ニット”。 
三品さんは、市内でもニットの生産が盛んな梁川地域で半世紀以上つづくニット製造会社の社長で、長年、県ニット工業組合の理事を務めるなど、その発展に貢献してきました。

三品社長

もともと、伊達市というのはシルクの産地で、シルクの糸を作っていたり、シルクの織物を作っていたりと、糸に関わる職業に就いている人が多かった。

平安時代から織物の里と呼ばれ、養蚕が盛んだった伊達地方。
戦後、化学繊維が普及し絹織物が下火になると、培ってきた糸を扱う技術をいかし、織物から編み物へ、ニットの産地へと転身をとげます。

昭和40年代には、横編みニットの産地として全国3位の設備規模を誇りました。
その後も、数々の有名ブランド製品の製造を請け負うなど、高度経済成長期の日本のファッション業界を支えてきました。

伊達地域の産地としての特徴は、装飾性の高い太い糸を扱うことにたけていること。
多彩な糸を使ったデザイン性の高い生地や柄の美しい製品作りを得意としているんです。

ニットの生産現場を見学!

地域が誇る“伊達ニット”。
かつては、製造工程ごとに各家庭に内職を依頼するのが主流でしたが、現在は、ほとんどの工程を自社でまかなっているといいます。
生産現場を取り仕切る大内清加さんです。

ここはパソコンで作業されていますが、どういう工程なんですか?

大内さん

ここは機械のプログラムを行っている場所になります。

ロゴや文字などのデザインをパソコンに取り込み、編み目の設計図を作ると、機械が自動的にそのとおりに編んでくれるといいます。
これまで難しかった細かな柄も、ニットで再現できるんです。
せっかくなので・・・。

例えば、こんな柄、番組のロゴなんですが、このニットって作れますか?

大内さん

大丈夫です!作らせていただきます!

番組ロゴニットを作っていただくことに。
完成品は、後ほどご覧いただきます!

最新機器と職人の技

続いて見せていただいたのは、最新の編み機。

大内さん

こちらは実際にセーターを編んでいる機械です。

セーターなどを作る際、従来はパーツごとに編んで、後から縫製するのが一般的でしたが、この編み機では、1着丸ごとつながった状態で編み上げることができるんです。
こちらのセーターの場合、1着30分ほどで、できあがります。

こうして機械化が進んでも、必要なのはやはり職人の技や経験だといいます。

大内さん

傷を一つ一つ手作業で直している場所になります。

機械で編んで穴が開いてしまった“編み不良”と呼ばれる部分は、職人が針を使い一つ一つ手作業で修復していきます。

編みの構成や糸についての深い知識と高度な技術が必要な作業です。

どこを修復したのか、ぜんぜんわからないですね。

大内さん

もっと目立たなくなります。

本当にこれは、職人技

“伊達ニット”の魅力を伝えたい

かつて700にものぼったという県内のニット関連企業ですが、現在県ニット工業組合に加盟している事業所は18まで減少

産地として盛り上げていくために組合では、“伊達ニット”の地域商標化を目指しています。
三品さんは、この動きを加速させたいと、8年前から自分たちでも企画、デザインした商品の製作に力を注いでいます。

三品社長

アパレルさんから来る仕事を主にしているんですけど、その仕事だけだと、どうしても私たちが主体っていう部分が少なくなってしまう。得意とする部分がいかせない。そういう意味でも挑戦していかなければならないと感じていました。

三品さんは、伊達ニットの強みである華やかさを生かした製品を発信することで、産地の魅力をより多くの人に知ってもらいたいと話します。

三品さん

伊達ニットを盛り上げることによって、伊達ニットというのがみなさんに認識していただけるように。太い糸から細い糸から交差させながら、いろんな編み地をつくることができる。それをいかすのは「この伊達地区だよ、一番だよ」っていうのを発信したい。

そして、今回作っていただいた番組ロゴニットですが・・・。

こんなにすてきに仕上がりました!文字もこんなにくっきりはっきり表現できるんです。
三品さんは、ニットの幅広さを知ってもらいたいと、こうした技術をいかして、地元のスポーツ少年団の応援グッズや企業の記念品などの製作も行っているんだそうです。
 

多彩な魅力を持つ伊達ニット。県ニット工業組合では、11月から来年1月にかけて地元伊達市をはじめ、福島市や郡山市などで秋物・冬物を製造元直売価格で購入できるニットフェアを開催するということです。(2023年10月30日取材)

  • 菅原成美

    福島局コンテンツセンター・アナウンス

    菅原成美

    宮城県仙台市出身。2023年から「ココに福ありfMAP」を担当。寒がりなので冬はニットが欠かせません。

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