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【解説】東日本大震災・原発事故「復興予算」

ゼロからわかる福島のいま 第20回
  • 2023年03月09日

15年で32.9兆円の予算措置

東日本大震災と原発事故によって甚大な被害を受けた被災地の復興のため、政府はこれまでにない巨額の予算を確保してきました。その根拠となるのが政府が策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」です。

この中では、復興需要が高まる最初の5年間を「集中復興期間」、震災10年までのその後の5年間を「復興・創生期間」、さらに令和7年度までの5年間を「第2期復興・創生期間」と位置づけていて、この15年間であわせて32兆9000億円程度の復興予算を見込んでいます。
 

実際は39.4兆円が使われた

復興庁によりますと、昨年度までの11年間の国の復興予算の執行額=実際に使われた額は、39兆4000億円あまりにのぼります。
実際には復興のための国の借金「復興債」の返済費用などもかかっているため、この額になっています。

39兆円という復興予算は、阪神・淡路大震災の国の復興予算はおよそ16兆円だったのでその2倍以上。
国の1年間の税収は63兆円あまりなので、そのおよそ6割。
福島県の来年度の一般会計当初予算の規模が1兆3000億円あまりで、その30年分にあたります。

国際宇宙ステーションに届きそうな高さ!?

額が大きすぎて、実感が持てないと思う方もいると思い、何か良い例はないかと調べてみました。
「1万円札を積み重ねるとどのくらいの高さ」などという言い方をする場合がありますが、復興予算39兆円はどのくらいの高さになるかというとおよそ390キロです。
国際宇宙ステーションの高度がおよそ400キロなので、もうちょっとで届きそうな高さです。

復興増税で財源確保

これだけの財源を確保するために増税も行われました。
財源全体のおよそ6割は政府が保有している株式の売却や予算のやりくりなどで工面し、足りないおよそ4割は、所得税額に2.1%上乗せした額を2037年まで追加で徴税する「復興特別所得税」の創設や、住民税への1人あたり年間1000円の上乗せといったいわゆる「復興増税」で確保したのです。

「復興特別所得税」といえば、防衛費増額の財源をまかなうため徴収期間を延長する案が示されて
大きな議論になりました。

ハード面の整備に約3割

これだけの巨額の予算は、何に使われてきたのか見ていきます。
およそ3分の1にあたる13兆5000億円が住宅や防潮堤、道路の整備などの費用。
次いで、除染や風評被害対策など原発事故からの復興に7兆5000億円、被災自治体への交付金が6兆円、産業の再生が4兆4000億円などとなっています。
県内の沿岸部での防潮堤の整備や相馬福島道路の建設などハード面の整備がこの12年で進んできたのを肌で感じている人も多いと思います。

廃炉・賠償の費用は別枠

一方で、福島第一原発の廃炉と賠償などにかかる費用は、国の復興予算とは別の枠組みで確保されています。総額21兆5000億円かかる見通しで、内訳は、廃炉・汚染水の処理に8兆円、賠償に7兆9000億円、除染に4兆円、中間貯蔵施設の整備に1兆6000億円となっています。

ただ、これはあくまでも平成28年時点での試算で、廃炉の最難関とされる燃料デブリの取り出し方法や保管の方法などの技術はまだ確立されていないので今後費用がさらにかさむおそれがあります。

令和7年度以降も適切な予算措置を

さきほど、政府は令和7年度までは復興のための予算を確保していると説明しましたが、現時点ではまだその後の制度や財源の枠組みは何も決まっていません。
そのため、福島県の内堀知事や福島第一原発周辺の自治体のトップらは、政府・与党に対して「第2期復興・創生期間」の後、仮に名称をつけるならば「第3期復興・創生期間」にも、適切な予算が確保されるよう要望しています。

県内では、「特定復興再生拠点区域」の避難指示解除がことし春までに終わり、ようやく帰還困難区域だった地域の復興が動き出したところです。
廃炉はもちろん、残された帰還困難区域の除染や除染で出た廃棄物の最終処分など中長期的な課題も山積しています。
現在の国の復興予算は年間5000億円規模で、被災地のインフラ整備が一段落した今、このうち9割は原発事故への対応が続いている福島に割り当てられています。
防衛費増額に伴う「復興特別所得税」の徴収期間延長の問題を含め、国の復興予算のあり方をめぐる動きは、福島の今後に直結するので、注意深くウォッチしていきたいと思います。

  • 潮悠馬

    NHK福島局コンテンツセンター

    潮悠馬

    神奈川県川崎市出身。2017年NHK入局。警察取材担当、会津若松支局を経て、現在は福島県政と東京電力の担当。

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