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小久保裕紀監督が語る “常勝軍団”復活の道筋とは

監督就任後初めてのスタジオ生出演
  • 2023年12月07日

 

ソフトバンク小久保監督 生出演で語ったこと

現役時代、「弱い」ダイエーから「常勝軍団」へ飛躍を遂げるホークスの中心にいたスーパースター小久保裕紀。当時、監督を務めていた王貞治球団会長のもと、猛練習で球界屈指の右の強打者となり、強いリーダーシップでチームを引っ張り続けました。3年連続で優勝を逃したチームで2軍監督から1軍監督に昇格し、立て直しを図ります。監督就任後、初めてスタジオに生出演したインタビューの内容です。

就任会見「王イズム」「美しい野球」

覚えている方も多いと思いますが、小久保監督は就任会見でこんな話をしていました。

「王監督は主力が先頭に立ってチームを引っ張り、若い選手には先輩の背中を見なさいと言ってきた。王監督時代に築かれたイズムを継承しながら、今一度、チームに浸透させられるように努めていきたい」

「強い、勝つのは大切だが、美しさ、美意識と言ってもいいと思いますが、そこが今、一番欠けているのではないか。ともに歩み、首脳陣・選手たちといかに美しくあるかと言うことをお互いの共有認識として持ち合わせながらチームを作っていきたいと思います」

新監督が目指す「王イズム」「美しい野球」とは何か。スタジオに生出演してもらった一橋・姫野の両アナウンサーとの10分あまりのやりとりを踏まえて考えていきます。

(福岡放送局記者 城山海人)

チャレンジャーの意識で

Q。およそ30年前に入団したホークス。現役生活のほとんどを過ごしてきたチームでの1軍監督就任。率直なご感想は?

2軍監督も経験したんですけど、やっぱり1軍は何と言っても勝負の世界。勝ち負けにこだわる、そういうポジションに戻ってきたという感じです。

Q。ホークスがリーグ優勝・日本一を果たしたのが4シーズン前。その間にはオリックスがパ・リーグ3連覇を果たしています。その間に小久保さんは1軍ヘッドコーチや2軍監督を務めていました。この間はどのようにチームの状態を見ていましたか?

ヘッドコーチとしてホークスに戻ってきた時は4連覇中で、どうしても勝っているチームなので、なかなか改革というか、変われないですよね。それがこの3年、優勝を逃しているというところで、このままではちょっとだめだなと。首脳陣も選手自身もやっぱり変わっていかないといけないなというふうに変わってきていると思います。

Q。小久保さん自身のカラーが出しやすいタイミングでもあるということですか?

そうですね。当然2軍時代の経験も生かしながらですけれども、今の選手たちとの距離感もこの2年間でかなりつかむことができましたし、新しいホークスは1番は「チャレンジャー」という意識を持たないと。実際3年優勝していないわけですから。これは「常勝」というよりは「チャレンジャー」という意識で来シーズンを戦うべきだと思いますね。

 

戦略を熱く語る小久保監督

「柳田」「近藤」以外は横一線

Q。「チャレンジャー」として挑んでいくために今のチームの課題をどのように見ていますか。

皆さんご存じのとおり、やっぱり先発ピッチャーですよね。戦術のところでいくと当然、先発ピッチャーを整理するというのが一番大事なところです。あとはレギュラーは柳田悠岐選手と近藤健介選手だけということを明言しています。ほかの空いているポジションを誰が奪いに来るか、というところでは横一線のスタートだという感じですね。

 Q。そのあたりも競争というところですか?

もちろんそうですね。野手のレギュラーは柳田選手と近藤選手だけだと伝えています。あとはしっかり競争してもらおうと思っています。

Q。甲斐拓也選手や中村晃選手それに今宮健太選手など今までレギュラーを張っていたような選手たちも横一線ですか?

そうです。

 Q。厳しいですね。

もちろん彼らが簡単に譲るとは思わないですけど、ただそこにやっぱりチャレンジしていくことはチームの活性化につながると思います。実際、若い選手がなかなかまだレギュラーとして活躍できていないここ数年があるので、そういうところに入ってきてほしいですね。

 Q。若手中心に構成された日本代表(注:11月の国際大会・アジア4チームで争い2連覇)にホークスから誰も選ばれていないということで、球団が4軍制を敷いて育成に力を入れていることを考えるとちょっと寂しいなという気もします。

11月の日本代表の試合にホークスのユニフォームを着た選手が1人もいなかったというこの現実。ベテラン選手からするとそこに入ってくる選手がいないとやっぱりヒヤヒヤしませんよね。そこに食い込んでくる選手が、誰か出てくるかというのが非常に楽しみでもありますね。

 Q。小久保さんは2軍監督として若い選手を見てきましたが、食い込んでいくような選手はいますか?

※生海(いくみ)という外野手がいるんですけれども、彼は長打力が魅力なので外野手として入ってこないかなという希望は持っています。牧原大成選手はもうセンターはやらせません。セカンドで勝負させると伝えています。
※生海選手:ドラフト3位のルーキー。今シーズンは2軍で8本塁打をマーク。

Q。そう聞くと、三森大貴選手はどうするのだろうとか、いろいろ考えてしまいます。

そこは競争になりますよね。ある程度どこでやってもらいたいかというのは示してあげた方が、選手たちはオフの自主トレーニングをやりやすいと思うので、周東佑京選手に関してもまずはセンターでということを伝えています。これはもうコーチ陣とも共有しています。

若手には「データ」?「猛練習」?

Q。小久保監督と言えば現役時代は猛練習で自身を高めていました。当時、練習で培ってきたものに裏打ちされた成果が数字に残っています。これだけの成績を残してきた現役時代があった一方で、先日の秋のキャンプでは、さまざまな最新技術を導入して数字やデータをもとに指導してきました。若手選手の野球へのアプローチというのはご自身の現役時代の時とは違うものですか?

まったく違いますね。似合わないでしょ?私が数字を見ながらというのは(笑)。ただやっぱり今の選手たちは測れるものは使うんですよね。だから自分のバットの角度がどうなっているのか、というのは、はっきり数字で出るので。感覚もそうなんですけど、ちゃんと数字で見て修正していくというところにアプローチしているので、やっぱりそこは飛ばせないですよね。使えるものは使うというところで、「古くさいもの」と「古きよきもの」はしっかり選別しながら、「いいものはいい」として取り入れる。ただ反復練習しないと「型」は身につかないですよね。「型」を見つけるまではその機器を使っていいんですけれども、見つかった「型」を固めて自分のものにするにはやっぱり反復練習が必要です。

Q。猛練習は必要?

そこは絶対に必要です。

 Q。これまで2年前に1軍ヘッドコーチそして、去年ことしと2軍監督を経験していろいろな立場からホークスの選手たちを見てきたうえで1軍監督に就任。経験をどう生かしていきますか?

「ホークスの一員であるには最低これだけのルールを守りましょう」みたいな誰もができるルールを2軍で設定しました。それは1軍でも一応設定して、ほとんどできていることもあるんですが、あえて明文化して、そこを守ることによって「ホークスの一員ですよ。これをみんな守りながら同じ方向に向かっていきましょう」というところでスタートしたいと思ってるんですよね。

 Q。たとえば?

ウォーミングアップ1つにしてもそうですね。ウォーミングアップをとにかくマーカーからマーカーまで、必ずそこまでやらせる。最後、手前で帰ってこない。あとはトレーニングコーチが合図をしてないのに勝手にダラダラ出て練習を始めてしまうのではなくて、決められたことをきっちりやりましょうということによって、この2年間「あと1勝」というところ、昨年は同率で2位、ことしはクライマックスシリーズでああいう負け方をして、あと1つの勝利をどう取りに行くかっていうのは、細かいところをきっちりやっていきたいと思います。それは誰でもできることなので、「できない」は存在しません。

 Q。そういうことばの端々にやっぱり小久保さんの厳しさみたいなものは感じます。

決められた分を走るのは誰でもできるんですね。もしも足が悪ければウォーミングアップから外れればいいわけですから。これは2軍ではずっとやってました。

 Q。それがファームの日本一にもつながってるわけですね。

ファームは勝つためだけじゃないですけど、そういう意識を統一できましたね。この2年間で。

 Q。成果を出したというのはやっぱり自信にもなるんですか?

そうですね。あとは監督として1年間を戦う上で自分1人では何もできない中、コーチ陣をうまく使って、コーチに動いてもらうということを学びましたね。全部、自分でしたら、限られてますよね。でも首脳陣が7人いるなら7人の脳を使わないといけないですよね。

Q。みんなと一緒にチームを作り上げていく?

もちろんです。それが一番大事なことだと思います。

 

スタジオ出演中の様子 笑顔も

小久保裕紀 監督(52)のプロフィール
1994年ドラフト2位でダイエーに入団
通算安打2041本 歴代47位
通算本塁打413本 歴代17位
本塁打王(1995年)
打点王(1997年)
ベストナイン 3回
ゴールデン・グラブ賞 3回
リーグ優勝5回/日本一3回

来シーズンの目標は

Q。来シーズンの目標、そしてどんなところを目指していきたいですか?

目標はリーグ優勝・日本一しかないです。そのために監督を引き受けたので。それと同時に少し難しいんですけど、「美意識」みたいな話もちょっとしているので。全部の細部にこだわるんですけど、そこに美しさも少し加えながらチーム作りをしていきたいと思います。

インタビューを終えて

スタジオでのインタビューは以上です。それでは冒頭の問いかけに戻ります。「王イズム」「美しい野球」とは何か。まずは「王イズム」です。自身が現役時代、そうであったようにチームには、力強く引っ張る主力の存在が欠かせません。小久保監督は「レギュラーが決まっているのは柳田選手と近藤選手だけ」と明言しました。チーム内の競争を促すとともに、今シーズン全試合に出場し、タイトルを獲得した2人をチームの中心に据えようとする意図=王イズムの継承が見えた気がしました。

続いて「美しい野球」とは。就任会見で「美しい野球」とは何かと問われ、「具体的には言わない」とベールに包んでいました。一方で「子どもたちから『全力疾走しないといけないときに、なんで走らないの』と聞かれることって美しくないよね」とヒントを出していました。今回、決められたウォーミングアップをしっかりやることの必要性を説いたのは、小久保監督が考える「美しさ」の一端を示していると感じました。小久保監督が考える「美しさ」は必ずしも見た目だけではなく、野球に取り組む姿勢に及んでいるのだと感じました。リーグ優勝、日本一のために監督を引き受けたという指揮官が、「王イズム」「美しい野球」をどう表現していくのか楽しみです。

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