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「傷つけるよう指示」「工藤会なくさない」

工藤会トップ2審 被告は何を語ったのか
  • 2023年09月29日

「脅しのつもりはなかった」

特定危険指定暴力団・工藤会のトップ、総裁の野村悟被告(のむら・さとる)は、1審の死刑判決のあと裁判長に「生涯後悔する」と発言したことについて、こう述べて謝罪した。

一方、ナンバー2で会長の田上不美夫(たのうえ・ふみお)被告は一部の事件への関与を認めた上で、

「傷つけるよう指示した」
「見せしめになると思った」と語った。

工藤会のトップ2人に対する2審の裁判。

9月27日、被告人質問が行われた。

事件について、そして、工藤会の今後について

トップ2人は何を語ったのか。

注目の被告人質問始まる

9月13日の第1回期日につづき、厳戒態勢が敷かれた福岡高等裁判所。
2審になって、ナンバー2の田上被告が一転して2つの事件について関与を認めた裁判。
2人が、直接法廷で語る内容に注目が集まった。

9月27日午前9時55分ごろ、透明なパネルが設置され傍聴席との間が仕切られた法廷に、工藤会トップの総裁・野村被告と、ナンバー2の会長・田上被告が姿を現した。

午前10時。
市川太志裁判長が、前回同様、こう告げて開廷した。

「法廷で不規則発言は禁止されています。不規則発言をした者には退廷を命じることがあります」

さっそく2人に対する被告人質問が始まった。

前回同様、厳戒態勢が敷かれた福岡高裁

「傷つけるよう指示した」

はじめに証言台に立ったのは、ナンバー2の田上被告。

9月13日の初回の審理で、1審から一転、起訴された4事件のうち2事件について、自らの関与を認めていた。

弁護士

起訴された4つの事件で、あなたが関与したものはありますか?

田上被告

あります。
看護師事件と歯科医師事件です。
傷つけるよう指示しました。

「看護師事件」は、平成25年1月、福岡市博多区の路上で看護師の女性が顔などを刺され大けがをした事件。
被害者は、野村被告が通っていた美容外科クリニックの担当看護師。
事件前、野村被告は施術や態度に不満を漏らしていたとされる。

襲撃を指示した理由について、田上被告は
「総裁を侮辱して、からかったからです。
一生傷が残って恥ずかしい思いをする。見せしめです」
と述べた。

一方、野村被告の関与について問われると、
田上被告は「ありません」と否定。

事件後に報告したかどうかについても、
「迷惑をかけるから、そういうことはしません」
と否定した。

被告人質問に答える田上被告(画面左)

逮捕から9年あまり、一貫して事件への関与を否認し、1審では無罪を主張していた田上被告。

2審で初めて自身による指示を認めた理由については、次のように述べた。

田上被告
「1審での主張は当時の弁護団の方針で、否認すれば通ると思っていた。被害者や私の指示で長い懲役になった者と向き合うべきだと考え、本当のことを言おうと思った。被害者のこと、家族のこと、総裁のこと、いろいろ考えました。自分の判断で総裁を巻き込むことになり本当に申し訳ないことをした。指示した人間たちも生きて帰れるかどうかの判決を受け、本人たちにも家族がいる。本当にすまんと。私の一言で大人数の人間が懲役にいき、本当に申し訳ない」

「総裁は父親」
「工藤会なくさない」

田上被告は、野村被告についての思いも語った。

田上被告
「父親のような存在で、一言で言うと「好き」という関係です。人に暴力を振るうこともなければ、大声で怒鳴ることもない。徳で人を引っ張るようなタイプの方です。自分を引き上げてくれ、本当に好きですし、感謝もしていますし、尊敬もしています」

さらに、工藤会の今後について問われると、

田上被告
「(会長のポストは)しかるべき人間に譲りたいと思っています。工藤会は受け継いだものだからなくすつもりはありません。私も何らかの形で残りたいと思っています」

“生涯後悔”発言「謝罪したい」

午後の審理では、組織トップで総裁の野村被告への被告人質問が行われた。

野村被告は、1審につづいて、全ての事件への関与を否定し、無罪を主張している。

弁護士

(4事件について)襲撃を指示したり、事前に聞いていたりしていましたか?

野村被告

いいえ、ありません。
聞いていません。

一方、野村被告は、1審で死刑判決が言い渡された直後に言い放った
「公正な判断をお願いしたけど全然、公正じゃないね」「生涯、後悔する」
という趣旨の「不規則発言」について、次のように述べて、謝罪した。

被告人質問に答える野村被告

野村被告
「市民の方に心配をかけました。申し訳ありませんという気持ちでいっぱいですね。(裁判長が)裁判で会うたびに穏やかな顔をしていて、公正な判断をお願いしていたのに、判決は推認、推認。びっくりして、推認、推認の裁判があるかと思い、言ってしまった。大変申し訳ない。脅しのつもりや危害を与える気持ちは一切ありませんでした。誤解された可能性があり、ここで謝罪したい」

「むごいことしてる」
いらだつ場面も

1審判決は、工藤会について、野村被告を頂点とする「厳格な統制がなされた暴力団組織」と認定。
「トップの意思決定なしに犯行が行われたとは考えられない」と指摘した。

これについて野村被告は、

野村被告
「総裁というのは仮の名前です。引退というか、隠居です。現役をやめたのが総裁です。すべて譲っとるもんで、一切口出しとかはありません」

ともに起訴された田上被告との関係については、
「私のことを思いすぎてくれる人間で、『すまんな』という気持ちがあります」
と語った一方、検察から今後の関係について問われると、次のように語り、いらだつ様子も見せた。

弁護士の質問に答える野村被告

野村被告
「今後、会長と総裁という関係はなくなりますよ。しかし、家族的な気持ちは残ると思います。あなたたちが邪魔ばかりして、そんなことできんようにしよるじゃない、現実は。めちゃくちゃむごいことしよるんですよ、あなたたちは」

検察・弁護側が最終意見、結審へ

27日の審理で、採用されている証拠はすべて取り調べられた一方、弁護側は新たな証拠調べを追加で請求するとしている。

次回の審理は、11月29日。

検察・弁護側の双方が最終的な意見を述べ、結審する見通しだ。

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