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福岡でも警戒を 高層ビル揺らす長周期地震動

緊急地震速報の対象に新たに追加
  • 2023年02月01日

2011年の東日本大震災で震源から遠く離れた東京や大阪の超高層ビルを大きく揺らし、エレベーターに閉じ込められるなど被害が相次いだ「長周期地震動」。この揺れについて、気象庁は2023年2月1日から緊急地震速報の対象に加えました。揺れの特徴や対策をまとめました。

長周期地震動 4段階の「階級」とは

「長周期地震動」は高層ビルを大きくゆっくりと揺らす周期の長い揺れのことで、気象庁は4つの「階級」に分けています。

階級4は、はわないと動くことができない「極めて大きな揺れ」で、室内では固定していない家具の大半が横揺れによって動いて倒れてしまうほどです。また、単純な比較はできませんが、人の体感という観点だけに注目すると、階級4は震度6強前後の揺れに相当するということです。

階級3は、立っていることが困難なほどの「非常に大きな揺れ」で、室内では固定していない家具が移動することがあるほか、不安定なものは転倒することもあるほどです。また、階級3は震度6弱前後の揺れに相当するということです。

階級2は、物につかまらないと歩くことが難しいほどの「大きな揺れ」で、室内では棚にある食器や本が落ちることがあります。

階級1は、室内にいたほとんどの人が揺れを感じるほどの「やや大きな揺れ」で、ブラインドなど吊り下げているものが大きく揺れます。

新たに緊急地震速報の対象に加わるのは、階級4と階級3の揺れです。したがって、これまでの「震度5弱以上の揺れが予測された場合」に加えて「階級4や階級3の長周期地震動が予測された場合」に、緊急地震速報が発表され、ビルの高階層などに警戒が呼びかけられるようになります。

また、長周期地震動は遠くまで伝わりやすいため、緊急地震速報が震源の近くの地域に発表されたあと、長周期地震動の階級4と3が予測された別の地域に追加で発表されることもあります。

揺れの特徴は「ゆっくり、長く、遠くでも」

「長周期地震動」の特徴は、揺れが1往復するのにかかる時間が長いことによる大きな横揺れがあげられます。建物の揺れやすい周期は高さによって異なり、一般的に高いビルほど長い周期を持っています。また、震源から数百キロ離れたところでも大きく長く揺れることがあります。2011年の東北沖の巨大地震では、震源から遠く離れた東京や大阪の超高層ビルも大きく揺れました。中には、10分以上にわたって揺れ続けたところもありました。

提供:防災科学技術研究所E-ディフェンス

「階級4」に相当する極めて大きな揺れに襲われた時に、高層ビルの室内の様子がどうなるのかを再現した防災科学技術研究所の実験の映像です。

映像では、激しい横揺れによって固定されていなかったコピー機が激しく動きまわり、立てかけられていた棚が転倒してしまいました。

近くで起きる大地震でも長周期の揺れを観測!

震源から遠く離れた地域まで伝わる長周期地震動。一方で、近くで起きる大きな地震でも警戒が必要です。2016年の熊本地震が発生した時には「階級3」の非常に大きな揺れを福岡県の筑後地域で観測したほか、階級2や1を他の地域でも観測していました。

福岡管区気象台の尾野耕一地震情報官は「油断はできない」と注意を促しています。

福岡管区気象台 尾能耕一 地震情報官
「福岡市や大野城市などの真下を通る警固断層の南東部で地震が起きると、マグニチュード7.3が予想されていて、もし地震が発生した場合には長周期地震動が発生すると予想されるため決して油断はできません」

高層ビルでは横揺れ対策を!

近年、福岡市を中心に長周期地震動が発生しやすい高層ビルやマンションが建設されていて、ますます対策が重要になっています。

それでは、どのような対策がとれるのでしょうか。
高さ15階建ての福岡市役所を訪ねると、地震や風水害が発生した際に情報収集の拠点となる災害対策本部室が最上階の15階にありました。室内でとられている地震に備えた対策を紹介します。

福岡市役所15階に入る災害対策本部室

まず、見せてもらったのはテーブルの足元です。横揺れが発生した際に揺れ動くことが予想されるテーブルは、大きくずれ動かないようキャスター部分をマジックテープで固定し、床のフックにくくりつけていました。

また、コピー機についてもキャスター部分が動かないよう簡易的なストッパーを設置しています。重量があるコピー機などは揺れ動くと非常に危険な凶器に変わりますので対策が欠かせません。

さらに、机の上に設置されたパソコンや電話機も横揺れに備えてしっかりと固定する必要があります。ここでは、市販されているジェル状の滑り止めを机との間に入れ込んで机から落ちないようにしていました。

福岡市防災推進課 岩倉りえ課長
「災害対策本部室は市役所の15階にあるので地震の時に大きな揺れが想定されるが、室内で被害が出ないように日頃から万全な対策をとっている。高層階に住んでいる市民などは今一度、地震への備えを考えてもらいたい」

それでは、私たちはどのような対策を取ればいいのでしょうか。気象台によりますと緊急地震速報が発表された場合の対応や日頃の備えは、通常の地震と変わらないということです。

まず、日頃から机やテレビなどといった家具は、しっかりと固定することが大切です。また、万が一倒れてきた場合でも、通路をふさがないような配置を考えておくことも有効です。さらに、室内に物が落ちてこない・倒れてこない・移動しない空間である「安全スペース」を確保しておくことも考えておきましょう。

そして、もし緊急地震速報を見聞きしたらまずは身の安全を守ることを第一に考えて行動することが大切です。棚や動きそうなものからは離れ、丈夫なテーブルの下に隠れるなどして頭を守りましょう。また、外出して高層ビルにいる時に地震に遭遇することもありますので注意が必要です。もしエレベーターに乗っていた時には、閉じ込められないように最寄りの階で停止させてすぐに降りることなど、命を守る行動をとってください。

  • NHK福岡放送局

    宮本陸也

    平成30年入局
    大分局を経て福岡局に
    災害取材を担当

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