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その時 子どもを守れますか? 福岡で学ぶ防災

  • 2022年11月22日

    子育てイベント?いえ、”勉強会”です

    10月22日の土曜日。飯塚市では、ある催しが開かれました。会場には、続々と赤ちゃんや幼い子どもの手を引くお父さん、お母さんたちの姿が。

    会場にはキャラクターのぬいぐるみやおもちゃも用意されています。一見、子育てイベントのようにも見えたこの催し、実は「防災ママカフェ」と題した講演会だったんです。地元のまちづくり協議会が開き、0歳から小学生までの子どもがいる母親や父親、およそ70人が参加しました。「おもちゃ」はお父さんお母さんが「勉強」している間、託児スペースとして子どもたちを遊ばせておくためのものでした。

    会場には託児スペースも

    講師に招かれたのは「かもん まゆ」さん。東日本大震災や熊本地震などで被災した親たちから体験を聞き取り、全国300か所以上で講演を行っています。

    かもんさんが冒頭に呼び掛けたのは「普段、災害に備えていますか?」。そして「飯塚市では、どんな災害が起こると想定されているか、知ってますか?」という質問。会場からは手がほとんど挙がりませんでした。一方で「地震や災害のときに子どもの命を守りたいですか?」という質問には、参加者全員が挙手。私(記者)も息子の顔が浮かび、思わず手を挙げました。

    最初の質問にはほとんど挙手なし・・・

    すると、かもんさんは会場にすかさずこんな突っ込みをしました。

    「『何にも備えをやってない』『災害についても何にも知らない』。だけど『絶対子どもを守りたい』。どうですかみなさん、守ることできますか?・・・残念ながら、思いや願いだけでは、子どもも家族も守れません!」

    ①まず、その瞬間を生き延びる!

    会場にやや緊張感が走ったあと、具体的な方法の紹介が始まりました。かもんさんがまず強調したのは「地震など災害発生の瞬間を生き延びること」です。阪神淡路大震災の際には、圧死や窒息死した人のうち、地震発生直後の15分以内に亡くなった人が9割を超えていたとするデータを紹介。

    家のなかでは家具が倒れてこないスペースを設けることや、割れてけがをする原因になるガラス製品は普段からなるべく使わないようにする工夫などを紹介しました。

    ②避難する際の「約束」を

    その「瞬間」を生き延びたあとは、避難のための段取りや用意です。災害時の避難所を確認しておくことはもちろん、「避難所の掲示板横で待ち合わせする」など、かもんさんは「家族みんなでどう集合するか、約束事を決めておいて」とも話しました。

    災害発生時に家族全員が一緒にいるとは限りません。過去の災害では、人が殺到する避難所で家族で会うことに苦労したケースも多かったそうです。携帯がつながらなくなった場合の連絡手段や待ち合わせ場所など、あらかじめ決めておくことが大事だと強調しました。

    ③「食べ慣れたもの」備えを

    そして、子どもたちにとって欠かせない「食事」についても話がありました。
    被災した母親たちが「特に苦労した」といい、かもんさんはある母親のエピソードを交え、備えの重要性をこう語ります。

    「被災したお母さんが、子どもに乾パンを出してあげたら、口には入れてくれたそうです。でも『おえっ』て吐き出して、『何これ、おいしくない、アンパンマンのがいい!』と言ったそう。みなさんも子育てしてるからわかると思いますが、初めて見るものを子どもは食べなくて当たり前なんですよね。そのお母さんは『なんで食べ慣れないものを備蓄していたんだろう』と後悔したと言っていました。だから、子どもが食べ慣れたものを用意しておくことや、防災食はあらかじめ食べさせてみることが大事です」

    ④携帯トイレも!

    そして、もうひとつ大切なのがトイレです。被災したあとは精神的なストレスなどから子どもが頻尿になることも珍しくありません。しかし、避難所のトイレは和式だったり、大勢の人が使っていて不衛生だったりしてストレスを感じる子どもも多いそう。被災地では避難所のトイレが嫌でパニックになってしまう子どもがいたことを明かし、かもんさんは自宅に備蓄用の簡易トイレを用意しておくことを勧めました。

    ほかにも、▼土足で行き来する避難所では、床をハイハイする赤ちゃんに特に感染症への備えも必要なこと、▼おむつや生理用品はすぐに避難所に届きにくいので自分で用意しておくことなどを説明。

    子を持つ親が実際に経験した災害時の「リアル」を交え、具体的な防災の方法が語られました。

    参加した人たちに感想を聞いてみると。

    赤ちゃんを連れて参加した男性

    「まず家の備蓄を確認して、子どもが食べられるものがあるかどうか、必要なものをリストアップしてから足りないものを買いに行きます」


     

    1歳の娘と家族で参加した男性

    「災害への準備をして、自分の命は自分たちで守っていかないといけないと思いました」

    みなさん、それぞれ自らの「防災」を見直そうと感じたようです。

    いきなり「防災リュック作り」はNG 備え方の「順番」とは

    最後にかもんさんが教えてくれたのは、防災への備えの「順番」です。

    1つ目はまず「災害=敵を知る」 災害時に自分の家のなかや周囲では何が起きるのかを調べておくことです。ハザードマップなど自治体が出している情報をまずチェックし、浸水など自分の地域はどんなことが起きうるのか、その想定を把握することがまず重要だといいます。

    2つ目に「自分を知る」 「敵が襲ってくる」、つまり災害が起きた場合に子どもや高齢者がいる場合、自分たち家族は特にどんなウィークポイントがあり、それを克服しておくためどんな対応が必要なのかを考えます。被災後10日間のシュミレーションをするとよいそうです。

    3つ目に「準備をする」 1つ目、2つ目を踏まえた上で、家族が安心できる具体的な「アイテム(グッズや備蓄)」などを考えます。ここで初めて「防災リュック」を作ると効果的だということです。

    かもんさんは「防災リュックなどの備えは、いわばみなさんの『武器』です。目の前に現れうる敵、つまり災害に太刀打ちできるよう、敵をしっかり分析して武器を用意する必要があります」と話し、自分たちに合った『防災』を備える、この順番が大事だと強調していました。

    いつものバッグに「チョイ足し」で防災意識

    さらに、こんなアドバイスも。ふだん出かけるときのかばんにグッズを「チョイ足し」するだけでも
    防災の一歩になるそうです。

    例えばこちらの写真。かもんさん自身がふだん、かばんに備えているものを見せてくれました。

    デイバックに入る「チョイ足し」グッズ

    想定は「博多駅が使えなくなり駅で一晩過ごすときにあると助かるもの」
    コンタクトレンズや、女性の場合は生理用品など。幼い子どもがいる場合はおむつや飲み物もあると良いそうです。

    「どんな災害でも、親である被災者からは『まさかこうなるとは』『あの時こうしておけばよかった』といつも聞きます。被災された方が『こうしておけば良かった』と後悔したことを私たちは今準備できますよね。子供たち、家族を笑顔にしたいと思っているのであれば、何か今準備しておく事が大切です!」

    災害が起きていない、平時の今こそ、みなさん備えを!

      • 荒川真帆

        福岡放送局・記者

        荒川真帆

        長崎局、大阪局、社会部を経て福岡へ。子育て奮闘中です

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