放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC会長,特許状更新に向けBBCの理念をPRへ

イギリスの公共放送BBCのトニー・ホール会長は11月27日,放送番組の向上を目的とする団体「視聴者の声」設立30周年大会で基調講演を行い,2016年末に満了する特許状の更新に備え,BBCの理念や存在を積極的にアピールし,BBCを正しく理解してもらうためのチームを内部に設けたことを明らかにする一方,20年前に比べBBCは価値の高いサービスを提供していることを数字をもとに説明した。しかし,著名なBBC出演者からのBBC3やBBC4の廃止を提案する発言や,BBCのオンラインニュースがローカル新聞の経営を圧迫しているという閣僚見解が発表されるなど,BBCの存続や受信許可料制度をめぐり,批判が表明されている。

仏Canal+,YouTubeと提携しコンテンツ配信

フランスの商業放送Canal+は11月13日,動画配信事業者YouTubeと提携し,放送番組をネット配信するサービスを12月から開始すると発表した。配信されるのは,Canal+とグループのD8,D17,それにi>TELEの各チャンネルで放送された映画,連続ドラマ,それに音楽番組などのコンテンツで,YouTubeのサイト上に新しく設けられる20のチャンネルで,無料で視聴できるという。フランスではこのほか,ライバルの商業放送事業者M6,BFMTVがすでにYouTubeを通じてのコンテンツ配信を行っている。

独ドイチェ・ベレ,国際競争力強化めざし組織改革

ドイツの国際放送専門の公共放送機関ドイチェ・ベレ(DW)は11月1日,大規模な組織改編をスタートした。改編の最大のポイントは,ボンとベルリンの番組制作の拠点を統括する新しいポストを設けたことだ。2拠点の統合に向けた専門チームを作り,リストラを含めた制作体制の見直しも進めるとしている。10月に会長に就任したリンブルク氏は「国際放 送界の競争が増す中で,世界中の視聴者に最高のコンテンツを届けるために,番組制作の効率化を図る必要がある」と述べた。DWは,2014年春までに,2014~17年の経営計画を策定することにしている。

伊,無料衛星TivùSat,登録数200万件を突破

11月19日,イタリアの無料衛星プラットフォームTivùSatの利用登録数が200万件を超えたことが分かった。TivùSatは地上デジタル放送を補完するプラットフォームとして,2009年7月に公共放送RAI,商業放送Mediaset,Telecom Italia Media,ローカル放送団体FRT などのジョイントベンチャーとして設立された。現在,HDを含む地上デジタルや外国チャンネルなどテレビ63チャンネル,ラジオ38チャンネルが無料で視聴できる。同サービスは,パラボラアンテナと専用のSTBを設置し,専用のCASカードを登録すれば無料で利用できる。

スペイン,地方公営放送局が財政難で初の閉鎖

スペインのバレンシア自治州の州営放送局RTVVは11月29日に放送を停止し,同局は閉鎖された。同局は累積債務が12億ユーロ(1,700億円)に達し,自治州政府は2012年,大規模な人員削減計画を発表したが,州最高裁がこの計画を無効としていた。このため11月5日,州政府が同局の閉鎖を発表したが,これに反発する職員らが抗議する番組などの放送を続けていた。このため警察が強制排除に乗り出して放送が止められた。スペインではバレンシアを含め13の自治州に公営放送局があるが,その多くが財政難に苦しんでおり,今後は連鎖的に破たんが広がるのではないかと懸念する声が上がっている。

ギリシャ,旧公共放送局舎占拠の元職員強制退去

ギリシャ政府の緊縮策の一環として6月11日に閉鎖された公共放送旧ERTの局舎に残り,インターネットを通じてニュースの配信などを続けていた元職員数十人が11月7日,警察当局により強制的に退去させられた。これについて政府は「公衆の利益のために公共放送の自由で全面的な活動を再開させることは国家の義務である」との声明を出した。一方,野党の急進左派連合シリザは「政府は,我が国の公共放送と民主主義の歴史に汚点を残した」と非難した。政府側は,施設の準備を整え,新しい公共放送テレビジョンとして,国内向けの全国放送2 チャンネルと,国際放送1チャンネルを2013年中に立ち上げたいとしている。