放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KCCがKBSの受信料引き上げ検討へ

韓国の放送通信委員会(KCC)は4月18日,2013年度事業計画報告の中で,KBSの受信料を,広告の廃止を前提に引き上げることを検討する方針を示した。KBSの受信料は1981年以来,2,500ウォン(約225円)のまま据え置かれているが,KCCの関係者は,受信料を現実に即したものにする必要があるとして,現在KBS2で放送されている商業広告を廃止するのと引き換えに受信料の引き上げを検討することにしている。KBSの受信料引き上げを巡っては,4月17日にKCC委員長に就任したイ・ギョンジェ氏も就任前の4月10日に国会人事聴聞会で,国会決議など慎重な手続きを前提とするとしながらも,引き上げの議論の必要性を述べていた。

台湾,「CCTVニュース放送を」発言に批判

台湾の与党国民党の江丙坤こうへいこん 副主席が4月28日,会合の席上で,「台湾のメディア状況を改善するため,中国中央テレビ(CCTV)の国際ニュースを報道できるようにすべき」と馬英九総統に提言していたことを明らかにし,野党やメディア研究者から強い批判が出ている。この中で江副主席は,台湾のテレビニュースはゴシップなど低俗な内容が多いと述べ,こうしたニュースを見るよりはCCTVや香港フェニックステレビの国際ニュースを見た方が良いと述べた。この発言が報じられると,野党民進党は,「台湾の核心的価値は自由・民主であり,江氏の発言は我が国の最も重要な価値を破壊するもの」と強く反発した。またメディア研究者からも,「中国の報じる国際ニュースには中国共産党の価値観が反映されている。台湾のテレビニュースは確かに低俗だが,公共放送の充実で対処すべき問題」などと,江氏への批判が出された。

中国主要メディア,アイスランド首相の「同性婚」報じず

アイスランドのヨハンナ・シグルザルドッティル首相が4月13日,中国を公式訪問したが,中国の主要メディアは,首相の同性婚の相手の女性についての言及を避けた。シグルザルドッティル首相は2010年,アイスランドで同性婚が合法化されたのに伴いパートナーの女性と結婚しており,今回同伴して中国を訪問した。香港のフェニックステレビでは,シグルザルドッティル首相が習近平国家主席に対し,自分と「妻」への歓迎に感謝した,と報じたが,中国で同性愛が現在もタブー視されている中で,中国中央テレビ・新華社・人民日報等の主要メディアはこの事実を報じなかった。中国の同性愛団体の関係者は,中国政府の同性愛への無理解を批判すると共に,今回の2人の訪問が中国における同性愛への理解を深める契機になることへの期待を示した。

インド,公共放送と政府の「距離」論議

テレビ局Doordarshanとラジオ局AIRを運営する公共放送機関インド放送協会の課題を検討する政府専門委員会で,放送協会と政府のあるべき関係について議論が始まった。初日の4月6日,放送協会のムリナール・パンデー会長が「協会は複雑に入り組んだ官僚パワーのサークルに取り巻かれている」と現状を批判すると,政府側からマニシュ・テワーリー情報放送相が「政府は省予算の3分の2を放送協会運営に割いている。経費負担をしている以上,干渉しないだけの距離を置く(maintain “an arm's length”)よう求められても無理」と反論した。放送の規制監督機関を兼ねるTRAI(電気通信規制庁)は,政府への勧告の中で「干渉しないだけの距離を置き」,放送協会の組織としての独立・自律性を保障するよう求めている。

イラク,“対立助長”でテレビ10局の免許停止

イラクの放送規制監督機関CMC(通信メディア評議会)は4月28日,同国北部のスンニ派と治安部隊の衝突について宗派間対立を助長する報道を行ったとして,アルジャジーラを含む衛星テレビ10局の免許を停止し取材活動を禁止した。残り9局の内8局はシーア派のマリキ政権に批判的なアルシャルキアなどのスンニ派系国内放送局だが,拠点は国外に置いている。イラク北部では23日以来スンニ派住民と治安部隊の衝突が続き,200人を超す死者が出ているとも伝えられている。CMCは2012年6月にも40以上の報道機関に閉鎖命令を出している。