放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBCワールドサービス 73ポスト削減へ

イギリスの公共放送BBCの国際放送「ワールドサービス」は,10月18日,政府交付金の削減に伴い,新たに73のポスト削減を職員に通告した。ワールドサービスは外務省からの交付金を財源としてきたが,2014年以降はこれが廃止され,受信許可料で賄うことが決まっている。こうした中,第三次となる今回の削減計画では,国際放送の言語数は現在の28を維持しつつ,一日のニュース放送時間を18時間から14時間に減らす他,英語放送の芸術番組などを廃止することにしている。これにより73のポスト,1,200万ポンドの節減を実現するとしている。

英地上アナログ放送終了

イギリスの地上アナログ放送は2012年10月24日に終了し,全土でデジタル放送へ移行した。地上デジタル放送は1998年に開始し,2008年からアナログ放送終了作業を地域ごとに行ってきた。現在,地上デジタル放送では約50のテレビチャンネルと24のラジオチャンネルに双方向サービスが提供されている。アナログ放送の終了に伴いBBCは,38年間行ってきた文字放送Ceefaxを終了した。

英4Gモバイルサービス開始

イギリスのロンドン,マンチェスター,ブリストルなど11の都市で10月30日,4Gモバイルサービスが開始した。これは,イギリス国内でOrangeとT-Mobileブランドを運営するEE(旧Everything,Everywhere)によるサービスで,2012年末までにベルファストなど4都市でも同サービスを開始する。通常,最低加入料金が500MB のデータ使用で月額36ポンドに対し,4GB利用には20ポンドの追加料金が必要となる。地上アナログ放送終了による空き周波数帯について,4Gモバイルサービス用への割り当てが期待されている。

フランス議会,受信税値上げ可決

フランスの議会下院は10月22日,受信料にあたる公共放送負担税の値上げを賛成多数で可決した。公共放送負担税は消費者物価指数に連動することになっていて,2013年度は,2012年度より2ユーロ高い年間127ユーロになる予定だった。しかしフランス政府は景気低迷による財政難のため,さらに2ユーロ上乗せして,129ユーロとする案を議会に提案していた。これによって1億ユーロ(約100億円)の増収が見込めると言う。議会では,与党社会党議員の提案で,いわゆるセカンドハウスでのテレビ視聴に対して公共放送税の半額,64ユーロを課す案も検討されている。

独連邦憲法裁,パソコン受信料について判決

ドイツの連邦憲法裁判所が,弁護士が事務所で仕事に使っているパソコンについて,受信料の徴収対象とすることは合憲であるとの決定をしたことが,10月2日,裁判所の発表で明らかになった。ドイツでは2007年から,パソコンや携帯端末などインターネットを通じて放送サービスを利用できる端末機を受信料の徴収対象にしている。連邦憲法裁判所は,8月22日の決定の中で,「インターネットに接続可能なパソコンからの受信料徴収は,情報の自由を過度に損なうものではなく適法だ」としている。なおドイツでは,放送受信機の有無をよりどころにしていた受信料制度を改め,2013年1月から,受信機の所有にかかわらず全世帯が支払う「放送負担金」の制度が導入される。

伊Sky Italia,国内初の芸術専門新チャンネルを開始

イタリアの有料衛星放送Sky Italiaは,11月1日,国内初となる芸術専門テレビチャンネル「Sky Arte(スカイ・アルテ)HD」を開始した。同チャンネルは,絵画,彫刻,建築,音楽,演劇,デザインなど,あらゆる形式の芸術表現に焦点を当てて,イタリアおよび海外の芸術を紹介する編成で,海外からの購入作品のほか,子ども向けの芸術解説番組など,自己制作のものも含まれるという。開始初日には,バチカンのシスティーナ礼拝堂の天井画「最後の審判」のお披露目から500年に合わせ,芸術家ミケランジェロのドキュメンタリー・ドラマなどが放送された。