放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

香港,新規デジタルラジオ局閉鎖の危機

香港で5月から7チャンネルによる本放送を始めたばかりのデジタルラジオ局DBC(Digital Broadcasting Corporation,香港数碼廣播)が,資金繰りの問題で10月以降,閉鎖の危機を迎えている。DBCはトーク番組の人気司会者の鄭経翰(Albert Cheng)氏が複数の財界人と共同で出資し,2008年に12年間の放送免許を取得していた。ところが2012年3月の行政長官選挙で,鄭氏が支持する候補の対立候補が当選したのを受け,財界人の中からDBCへの追加出資を渋る動きが出てきた。これについて鄭氏は,「中国政府の圧力で言論の自由が侵害されている」と訴え,人権団体の「香港人権モニター」も懸念を表明した。一方,株式の約半数を所有する財界人の出資者たちは,追加出資の取りやめはビジネス上の理由としている。DBCは10月に入り,資金難で独自番組の制作ができず,音楽や聴衆のかけてくる電話の内容を放送していたが,10月末段階で放送停止状態となっている。

韓国,KBS次期社長公募に12人が応募

KBS理事会は11月に任期満了を迎えるキム・インギュ(金仁圭)社長の後任について公募を実施し,12人が名乗りを上げた。応募者は,キル・ファンヨン(吉桓永)KBS副社長,チョ・デヒョン(曺大鉉)KBSメディア社長,イ・ドンシク(李東植)KBSビジネス監査などKBS関係者が多い。理事会は11月中に各候補を面接した後,1人に絞って大統領に任命を推薦することになる。KBSでは2012年,社長や理事らの選任方法をめぐって労組が長期ストを行ったが,労組は12人のうちキム社長に近いと見られるキル副社長らに強く反対しており,社長選任には波乱も予想される。

韓国,ABU総会開催

アジア太平洋放送連合(ABU)の総会が,10月16日から2日間,ソウルで開かれ,およそ50の国と地域から放送局の代表など700人あまりが参加した。今回の総会ではデジタル時代の新たな放送のあり方などについて議論が行われ,この中でNHKの小野副会長は,平日の午前0時に放送するニュース番組『NEWS WEB24』で,ツイッターから寄せられる視聴者の声をその場で伝え,時にはゲストの専門家が質問に答えている取り組みを紹介した。また,アメリカのIT企業グーグルは,テレビ局が放送をインターネットでも同時中継する事例が飛躍的に増えていると報告した。出席者からは,技術の進歩を背景にした新たな動きに,途上国の放送局が取り残されるとの懸念の声があがる一方,開発コストが下がり,後発の放送局も同様に恩恵を受けられるという見方も示された。

韓国,政府主導で中東コンテンツ市場開拓

韓国放送通信委員会(KCC)とその傘下にある韓国インターネット振興院(KISA)は11月2日から7日にかけて,中東地域での“韓流”市場開拓のための「2012年中東放送コンテンツショーケース」を開催した。トルコのイスタンブールやヨルダンのアンマンなどで開かれたイベントには,韓国の主な放送事業者が参加し,最新ドラマ,ドキュメンタリーなどの番組のほか,KCCが制作支援した3Dのコンテンツも紹介された。KCCはこのほか,トルコのKanal Dなどの主要な商業局やヨルダンの公共放送JRTCなどを訪問し,中東における放送事業者ネットワークの構築も図っている。

インド,ケーブルTVのデジタル移行,波乱の幕開け

インド連邦政府が2014年末までの全国のケーブルテレビデジタル化に向けた第1段階としている4大都市圏におけるデジタル移行が,11月1日,波乱の中で始まった。連邦政府与党が州の政権も握るデリー首都圏とマハラシュトラ州・ムンバイではデジタル送信への完全移行が専門家チームにより確認された。しかし,野党が州政権を握る西ベンガル州・コルカタでは,州首相の強い抵抗に配慮し移行確認の作業が行われていない。また,タミルナドゥ州・チェンナイでは地元高裁の裁定で当面5日間の移行延期が決まった。連邦政府は,デジタル移行に際しアナログでの同時送信を認めないとしているが,デジタル受信に必要なセットトップボックスを設置していない世帯が相当多数残されているとの指摘があり,デジタル化の延期を更に求める動きが各地で続いている。