放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英マードック氏の娘,テレビ祭でBBCを評価

イギリスのエディンバラで毎年開かれる権威ある国際テレビ祭で8月23日,メディア王ルパート・マードック氏の娘で番組制作会社の会長を務めるエリザベス・マードック氏が講演し,放送のネット展開を開拓してきた公共放送BBCを評価したうえで「イギリスのクリエイティブ産業の活性化のためにもBBCの受信許可料制度を支持する」と述べた。これは,3年前に弟のジェームズ・マードック氏が同じ舞台で,利益追求の重要さを訴えBBCを痛烈に批判したのと対照的で,エリザベス氏は「目的のない利益追求は災難を招く」と述べた。

英「夜9時から大人のテレビ時間」77%が納得

イギリスの放送通信分野の独立規制機関Ofcom(Office of Communications)は8月23日,放送に対する視聴者意識調査の結果を発表した。イギリスでは,青少年保護のため,夜9時前に放送する番組は,性的・暴力的内容などに注意するようガイドラインを設けているが,夜9時が基準になっていることについて,77%のイギリス成人が適切だと回答し,2005年の64%より13ポイント上がった。一方で,遅らせるべきだと答えた人は12%で,2005年より半減した。

仏,放送・通信の規制機関の合併を検討

フランスのエロー首相は8月21日,放送と通信の規制を別々に行っている独立規制機関の合併を検討するよう,関係する3つの省の大臣に対して指示した。フランスでは,放送メディアに対する規制はCSA(視聴覚高等評議会)が,通信分野の規制はARCEP(電気通信郵便規制機関)が行っている。首相府は同日声明を発表し,「インターネットによる視聴覚コンテンツの配信がますます増加する時代にあって,規制の方法の効率性を問うことが重要だ」と検討の理由を述べている。大臣らは,10月中に結論を出し報告書をまとめる予定だ。

独,携帯端末のセカンドスクリーン利用は13%

公共放送のARDとZDFは8月20日,「2012年インターネット利用行動調査」を発表した。これによると,国民の75.9%がインターネットを利用し,そのうちの30%がオンデマンドのテレビ番組を,23%がライブのテレビ番組配信を少なくとも時々は見ている。また,テレビを視聴しながら,セカンドスクリーンとしてスマートフォン,タブレット,ラップトップなどの携帯端末を使っているのは13%だった。インターネットに使っている1日の平均時間は,前年より3分増え83分,テレビ視聴時間も13分増え242分となった。

独新受信料制度で初めての提訴

ドイツで2013年1月に導入される全世帯に「放送負担金」の支払いを義務付ける制度について,バイエルン州憲法に違反するとの訴えが,同州の憲法裁判所で受理されていたことが,8月3日,メディア専門誌の取材で分かった。訴えは,受信機を所有していない世帯や事業所に支払いを強制することや,自治体の住民登録データが本人の承諾なしに公共放送に利用されることが,同州憲法が保障する基本権を侵害する,としている。提訴したのは,パッサウ大学の公法・IT法の研究員。判決が下るのは2013年以降になるとみられている。

伊Mediaset,国内初の地上無料HDチャンネルを開始

イタリアの大手民放Mediasetは,8月28日,UEFAチャンピオンズリーグ・サッカーの開幕に合わせ,地上デジタルの無料チャンネルでは国内初のHDチャンネルとなる「Italia 1 HD」の放送を開始した。イタリアではこれまでも,公共放送RAIがオリンピックや各種イベントなどを期間限定で試験的にHD放送を行ってきたほか,衛星Sky Italiaなども有料チャンネルでHD放送を行っているが,地上の無料放送ではこれが初めてとなる。

オンデマンドテレビによる収入54%増へ

映画やテレビ番組などのオンデマンドテレビによる収入は,世界中で2017年には60億ドル(約4,700億円)に達し,2011年の39億ドル(約3,060億円)と比べ,54%の増加となる見通しだ。イギリスの調査会社デジタルTVリサーチによると,国別では,アメリカが最も多く,約1,400億円。以下,イタリア,中国の順となっている。日本は4番目で,2011年より2倍増の約245億円に達する見通し。