放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,地上アナログ放送年内終了へ

韓国放送通信委員会(KCC)は8月20日,アナログ放送の地域別終了日を確定し公表した。それによると,9月には忠清北道,10月には慶尚南道,釜山など6つの地域,11月には大邱·慶尚北道がそれぞれアナログ放送を終了,最後に12月31日に首都圏地域でも終了する。これに先立ってKCCは8月1日の全体会議で,アナログ放送終了で放送が見られなくなる人たちの援助申請が集中し,対応に不具合が生じる事態を避けるため,地域別に終了時期をずらすことを決めていた。

香港,新規デジタルラジオ局閉鎖へ

香港の新規デジタルラジオ局DBC(Dig ita l Broadcasting Corporation,香港数碼廣播)が,資金繰りの問題で9月中にも閉鎖される見込みとなった。DBCはラジオのトーク番組の人気司会者の鄭経翰(Albert Cheng)氏が複数の財界人と共同で出資し,2008年に12年間の放送免許を取得,試験放送を経て2012年5月から7チャンネルによる本放送が始まったばかりだった。ところが3月の行政長官選挙で,鄭氏が支持する候補の対立候補が当選したのを受け,財界人の中からDBCへの追加出資を渋る動きが出てきた。これについて鄭氏は,「中国政府の圧力で言論の自由が侵害されている」と訴え,人権団体の「香港人権モニター」も懸念を表明した。一方,株式の約半数を所有する財界人の出資者達は,追加出資の取りやめはビジネス上の理由と
説明している。

台湾,新NCC主任委員「旺旺は再審議せず」

台湾の国家通信放送委員会(NCC)の新しい主任委員に就任した石世豪氏は8月23日,7月に前任の主任委員らが審議した旺旺のケーブルテレビ事業買収案件について,条件付き承認という当時の結論を見直す考えがないことを表明した。この事案では,旺旺が傘下の中天テレビのニュースチャンネルをグループから切り離すなどとした3条件の受け入れを拒否しており,このままでは事業買収が承認されないことになる。

インド,NDTVが視聴率調査会社を提訴

8月1日のインド各メディアの報道によると,大手商業衛星テレビネットワークNDTV(New Delhi Television)は,インドの視聴率調査会社TAMメディア・リサーチによる視聴率データの改ざんで多大な損失を受けたとして,TAMとその親会社を米ニューヨーク州最高裁判所に提訴した。NDTVは,TAMが少なくとも過去8年にわたり他のネットワークからリベートを受け視聴率を操作,NDTVの視聴者数が実際より少なくなるようデータを改ざんしたとして,広告収入の損失分など10数億ドルの賠償を要求している。アメリカの調査会社ニールセンとカンター・メディアの合弁子会社であるTAMメディア・リサーチはインドで唯一の視聴率調査会社で,そのデータがテレビネットワーク各社の収入に大きな影響を与えるだけに,今回の提訴は放送事業各社や広告事業者などの間に大きな波紋を広げている。

ミャンマー,新聞雑誌の事前検閲を全廃

ミャンマー情報省は8月20日,国内のすべての出版物を対象にした事前検閲を同日付で廃止したと発表,軍事政権時代の1964年から半世紀近くにわたって続いた厳しい言論統制が大幅に緩和される見通しになった。ミャンマーでは,2011年3月の民政移管後,徐々に検閲の緩和が進められ,同年6月には娯楽やスポーツなどを扱う雑誌について事前検閲が廃止されていた。

シリア,邦人女性ジャーナリストが犠牲に

政府軍と反体制派武装組織「自由シリア軍」の間で激戦が続くシリア北部の都市アレッポで,8月20日,ジャパンプレス所属の女性ジャーナリスト山本美香さんが戦闘に巻き込まれ死亡した。山本さんは民放テレビのニュース番組にシリア内戦のレポートを送るため,自由シリア軍に同行取材をしていた。シリアでは戦闘に巻き込まれ死亡するジャーナリストが続出しており,ユネスコによると今年はこれまでに少なくとも27人が死亡している。山本さんは過去にアフガニスタンやイラク,ウガンダなどの紛争地域を取材し,2003年度のボーン・上田記念国際記者賞特別賞を受賞している。