放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英政府,ローカルテレビ開局候補地を発表

イギリスのジェレミー・ハント文化相は12月13日,ローカルテレビの導入にあたり,ロンドンやエジンバラ,マンチェスター,オックスフォードを含む全国20か所のパイオニア都市を確定した。今後,使用周波数の割り当てやローカルテレビ免許付与など必要な法律改正を議会に上程する。ローカルテレビ免許は2012 年夏に付与され,2013 年に開局見込み。

BBCローカルラジオ削減は「防災面で心配」

イギリスの地方政府で作る団体「LGA(The Local Government Association)」では,BBCのローカルラジオ縮小計画について,災害時の情報伝達に支障が出るおそれがあるとして12月22日,反対を表明した。BBCでは10月,イングランドに40あるローカルラジオ局の280人の人員削減とローカル番組枠の縮小方針を公表した。これに対しLGAでは「ローカルラジオは緊急時に重要な役割を果たしており,BBCはリスクを過小評価している」と批判した。ローカルラジオ縮小方針には市民や国会議員からも反対の声が相次いでいる。

英4人に1人がネット経由でテレビ視聴

イギリスの放送通信分野を規制監督するOfcom (Office of Communications)は12月14日,2011年版の市場調査報告を発表した。それによると,イギリスでは27%の人が毎週ネットでテレビ番組を視聴し,調査対象の欧米6か国で最も高い割合となった。特に18~34歳では69%が恒常的にネットでテレビ視聴を行っている。OfcomではBBCの見逃しサービスiPlayerがけん引役になっていると分析。

独カルテル庁,公共放送の有料VOD計画を審査

ドイツの連邦カルテル庁は11月28日,公共放送ARDとZDFの子会社が共同で計画しているインターネット上の動画配信サービス「Germany's Gold」について,公正競争の観点で審査を開始した。「Germany's Gold」は,ARDとZDFの過去60年の番組を,有料または広告動画つきで配信する。また,外部の番組提供者が参加することも可能。WDR mediagroup,SWR Media rvices,ZDF Enterprisesなどの公共放送の子会社が共同で新会社を設立し,サービスを運営する計画である。

独カルテル庁,米LibertyのケーブルTV買収承認

ドイツの連邦カルテル庁は12月15日,米Liberty Global社による,ドイツ南西部バーデン= ビュルテンベルク州のケーブルテレビ事業者Kabel BWの買収を承認した。Kabel BWは加入世帯数約240万の国内第3位の事業者で,2011年3月にLiberty Globalが31億6,000万ユーロ( 約3,200億円)で買収することで合意していた。Liberty Globalは,2009年11月に国内第2 位のUnitymediaも買収しており,傘下におさめた両社を合併する計画。

伊RAI受信料,2012年から112ユーロへ値上げ

放送と通信を所管する経済開発省は,公共放送RAIの受信料を2012年1月1日から1.5ユーロ値上げし,112ユーロ(約1万1,000円)とすることを決定した。値上げ幅は昨年に引き続き,インフレ率の範囲内となっている。一方,ホテルや飲食店など事業者向けの「特別受信料」については,イタリア政府が12月4日に決定した「イタリア救済」緊急財政緊縮策のなかで,所得税の申告時に受信料の支払い番号を明記することを義務づけた。これらにより,2012 年のRAIの収支は,約2,000万ユーロ(約20億円)の増収を見込んでいる。

ロシア政府系テレビ,反政権デモを“客観”報道

ロシアの政府系テレビ局NTVは12月10日,国会議員選挙に与党側の不正があったと抗議する市民のデモについて,トップニュースで伝えた。それまで政府系テレビ局は,反政府デモの報道にあたっては,デモ参加者を違法な反逆者として扱うことがほとんどだったが,10日のニュースでは,反政府側の政治家のネムツォフ元副首相を「野党のリーダー」として紹介しており,過去10年にわたって手錠をかけられた姿などしかテレビに映されずにきたネムツォフ氏を驚かせた。今回のテレビ局の報道の変化についてロシア専門家は,既にネット上で幅広く抗議デモの状況が紹介されており,テレビ局も後追いせざるを得なくなったのではないかと分析している。