放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米ニューズコープ,iPad用新聞創刊

アメリカの大手メディア企業ニューズコーポレーションは2月2日,パソコン大手アップル社のタブレット型情報端末iPad専用の電子新聞「ザ・デイリー」を創刊した。アメリカ国内のiPadユーザー向けのサービスで,購読料は週99セント(約80円)か,年39ドル99 セント(約3,200 円)。ニュースやスポーツ,ライフスタイルなどのコンテンツで構成され,主要ニュースは音声でも聞けるという。広告収入の減少に悩むメディア業界からは,タブレット型端末の普及が進む中で新たなビジネスモデルとして成功するかどうかに注目が集まっている。

米AP通信,情報に関する著作権管理会社を設立へ

アメリカのAP 通信は2月3日,ニュースなどの情報がインターネット上で無断転用されるのを防ぐため,情報がインターネットで引用される際にこれを認可し,課金することを専門に行う会社を今年の夏をめどに立ち上げると発表した。AP では,自社のニュース原稿がオンライン上でいつどのように転用されているかを追跡できるシステムをすでに開発しており,このシステムを利用して,他のメディア企業にも広く参加を呼びかけて事業化を行うことにした。今年中には外国企業にも参加を募る予定だという。

スーパーボウル,歴代最高視聴者数を記録

ニールセンによると,2月6日にFOX が中継した第45回スーパーボウルは,全米で約1億1,100万人が視聴し,昨年の記録を更新して,アメリカ国内の番組で歴代最多の視聴者数を記録した。世帯視聴率は46%にのぼった。NFLはここ数年,人気プレーヤーがテレビやネット上で話題を提供してさらに人気が上がり,スーパーボウルは4 年連続で最多視聴者数を更新した。今年は特に,アフリカ系,ヒスパニック系,女性の視聴者が増え,今回のヒスパニック系視聴者は約1,000万人で前回の830万人を大きく上回り,アフリカ系も前回の1,120万人から1,250万人に増加した。

AOL,ハフィントン・ポストを買収

ネットサービス会社のAOLは2月6日,人気のウェブ専門ニュースサイト,Huffington Postを3 億1,500万ドル(約260 億円)で買収したと発表した。Postはケーブル局の司会者などを務めていたアリアナ・ハフィントン氏が2005 年に開設し,左派色を強く出したニュースや,利用者が意見交換する場を提供することで急速にユーザー数を増やしていた。一方のAOLは,タイム・ワーナーとの合併解消後も,ダイヤルアップ方式を主とするネット事業が縮小し続けていたことから,新興成長企業を買収して業績の回復を期待している。

元MSNBCのキャスター・オルバマン氏,Current TVに移籍

アメリカのケーブル・衛星放送局でインターネットによる番組配信事業も手がけるCurrent Mediaは,2月8日,キース・オルバマン氏がキャスター兼編集長としてCurrent TVのゴールデンタイムの番組を担当することになったと発表した。就任時期は不明。同氏は,今年1月にNBC系列のケーブルニュースチャンネルMSNBCの番組を突然降板し,動向が注目されていた。Current Mediaはゴア元副大統領らが2005 年に設立したが,アメリカ国内での浸透度は低く,著名なキャスターを迎えることで視聴者の拡大を図る狙いがある。リベラル派のオルバマン氏はMSNBCの番組を成功させたことで知られるが,最近は氏の政治行動などをめぐってMSNBCとの確執も取りざたされていた。

メキシコ,大手通信事業者と2大テレビ局の対立深まる

メキシコ最大の電話会社グループCarsoは2月23日,メキシコ第2のテレビ局であるTVアステカでの広告放送をとりやめることを発表した。これに先立つ19日には,最大のテレビ局であるテレビサも,Carsoが自局での広告を打ち切ることになったと発表していた。Carsoはその理由として広告料で合意しなかったことなどをあげているが,一連の動きの背景には,互いに相手方業種への進出を図る企業同士の思惑があると指摘されている。メキシコでは,放送・通信とも大企業による寡占状態が続いているが,双方とも相手方からの新規参入には反対しており,放送と通信の枠を超えた事業拡大が対立を生んでいる。