放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBCトラスト,HDTVチャンネルのPVT開始

イギリスBBCの監督機関のBBCトラストは,5月21日にBBCが提案したHDTVチャンネルについて,公共的価値の審査(PVT)を正式に開始した。 BBCは,HDTVサービスを2007年冬に衛星デジタル放送とケーブルデジタルテレビで,2008年半ばに地上デジタル放送で本サービス化したい意向である。BBCトラストは,PVT開始から6か月で結論を出すことが義務づけられており,9月には中間見解を発表し,11月に最終決定を発表する予定である。

英貿易産業相,SkyによるITV株式17.9%買収を調査

イギリスの貿易産業相は5月24日,衛星放送BSkyBが2006年11月に地上商業チャンネルITVを運営するITV社の株式17.9%を買収したことについて,競争委員会に調査を命じた。この買収については,放送通信分野の規制監督機関のOfcomと公正取引委員会(OFT)がそれぞれ,ニュースの多元性やメディア所有の複数性を損なうかなど公共的利益と競争の観点で調査を行い,4月27日に貿易産業相へ報告書を提出していた。

仏の視聴率調査,「その他のテレビ」が躍進

フランスの地上デジタル放送が視聴率の分野で構造変化をもたらしている。Mediametrieの視聴率調査によると,今年1月以来「その他のテレビ」の月間平均視聴者シェアはF3を上回ってTF1,F2に次ぐ第3位の地位を維持しており,5月には17.1%とF2(17.8%)を抜く勢いをみせた。「その他のテレビ」には,従来の全国向けアナログ放送を除く,地上,衛星,ケーブル,ADSL によるすべてのチャンネルが含まれるが,特に地上デジタル放送のチャンネルが伸びている。

独ARD,DMBプラットフォームで配信開始

ドイツ公共放送連盟ARDは5月9日,地上DMB方式による携帯端末向けプラットフォーム「watcha」で,総合編成チャンネルの第1テレビ(das Erste)の配信を開始した。watchaは,国内の投資会社のコンソーシアムMFD(Mobile Fernsehen Deutschland)がdebitelなど携帯電話事業者と提携して2006年5月から始めたサービスで,DMB対応の端末向けに公共放送ZDFや音楽チャンネルMTVなど4つのテレビチャンネルを有料配信してきた。現在このサービスは国内の主要16都市で利用でき,公式発表によると4月時点での利用者は約1万人。

伊政府,RAIの改革法案を閣議承認

イタリア政府は5月17日,閣議で公共放送RAIの改革法案を承認した。最大の改正内容は,RAIのガバナンスを強化するため,現在の最高意思決定機関である経営委員会の上に,監督機能を担う外部機関「RAI ファウンデーション」を置くという抜本的な改編。今後国会での審議は,RAI の株主である経済財務相が,前政権が選任した経営委員会のメンバーを不信任としたことから,RAIの意思決定が事実上停滞している事態を憂慮し,通常より早い審議日程をたどると見られる。

オーストリア,地上アナログ放送を順次終了

2006年10月に地上デジタル放送を開始したオーストリアでは,国土の西部から東部に向けて,州ごとに順次,地上アナログ放送を終了している。2007 年3月にフォラールベルク州,5月にチロル州で,そして6月4日,ザルツブルク州とオーバーエスタライヒ州で地上アナログ放送を終了した。これら4つの州には,同国の人口のほぼ4分の1にあたる約213万人が居住している。

EU理事会,視聴覚メディアサービス指令で合意

EU の立法機関で,加盟国政府の代表からなるEU 理事会は5月24日,「国境を越える視聴覚メディアサービス指令」を採択することで合意した。これは1989年に制定された「国境を越えるテレビ指令」を,放送・通信の融合時代に適した形に改正するもの。ヨーロッパのコンテンツ産業の競争力を促進する目的で,広告など規制が緩和されるとともに,従来のテレビ放送だけでなく,VODやインターネット上のストリーミングサービスなど一般公衆向けの視聴覚メディアサービスすべてが適用対象となる。指令は 2007年末に発効する予定で,その後各加盟国は2年以内に国内法化することが義務づけられる。