ページの本文へ

  1. トップページ
  2. ニュース特集
  3. 中小河川からの津波に注意!富山の津波リスク

中小河川からの津波に注意!富山の津波リスク

執筆者のアイコン画像池田航(ディレクター)
2022年11月04日 (金)

近年大きな地震や津波が発生していない富山県。しかし実は最近まで日本海沿岸の地震や津波のリスクはよくわかっていませんでした。そこで行われたのが日本海沿岸での初の大規模調査「日本海地震津波調査プロジェクト」。公表された最終報告書で指摘されたのは中小河川をさかのぼる津波のリスクでした。

初の大規模調査が終了~早い津波に注意~

日本海沿岸の地震や津波を調べるために行われた初の大規模調査「日本海地震津波調査プロジェクト」。国の委託を受け、東京大学地震研究所などが2013年から足掛け8年にわたり行いました。

221104_01.jpg

その最終報告書が去年10月に公表されました。調査で明らかになったのは、富山県に被害をもたらす可能性がある沿岸部の活断層の詳細なデータです。

221104_04.jpg

特に専門家が注目したのが「海陸断層」と呼ばれる海と陸をまたいで走る断層です。海陸断層による津波は、断層と沿岸部からの距離が短いため、地震発生から津波の到達までの時間が非常に短いという特徴があります。

22104_05.jpg

 2017年、県は年次報告を受けて津波の想定を大幅に見直しました。黒部市・魚津市・滑川市・富山市・射水市では地震発生からわずか5分以内、沿岸部のほかの市や町でも10分以内に津波が到達する可能性が指摘されています。

どのような被害が起きるのか?

調査で明らかになった短い時間で陸地に到達するおそれのある津波。実際に発生した場合、どのような被害が想定されるのでしょうか?

調査で指摘されたのは「河川津波」のリスク。津波が河川をさかのぼることで、沿岸部だけではなく海から離れた場所でも津波による被害が発生する可能性があるというのです。 

221104_02.jpg

 河川の中でも特に被害の可能性が高いと指摘されたのは、中小河川沿いの土地。国が管理する大規模な河川に比べて川の水量が少ないため、堤防の高さや強度が低い場合が多いといいます。

今回の調査プロジェクトに参加した富山大学の大西宏治教授は、射水市や氷見市に広がる海沿いの低い土地で被害の可能性があると指摘します。

標高3m未満の土地に中小河川が多く流れているため、海から距離があっても水路を通して津波が内陸へと流れ、被害が拡大するおそれがあるというのです。

221104_03.jpg

 (大西宏治教授)「川から越水による浸水被害がまず1つ考えられます。津波の勢いがとても強ければ、かなりの強い水の流れがやってきて、家屋の半壊や全壊の可能性が否定できない。」

河川からの津波にどう備える?

こうした中小河川の津波への備えとなるのが堤防の整備です。その方針は国によって定められています。

221104_06.jpg現在、富山県が管理する川では数十年から140年に1度クラスの津波を想定して堤防が整備されています。これを上回る巨大な津波に対して堤防などを整備するのは建設費用や環境に与える影響などから現実的ではないというのが国の方針です。

大西教授は河川をさかのぼる津波のリスクも意識して、いざという時の行動を日ごろから確認しておくことが重要だと指摘します。

(大西宏治教授)「人で対応することが現実的ではないかと思います。地元自治体や県にできる限りの手は尽くしていただいて、それでも手を尽くし切れないところを住民の皆さんで考えて知恵を絞って安全を確保するという取り組みが重要だと思います。」

その上で大西教授は以下の点が重要だと語りました。

・日ごろからハザードマップを確認するように意識すること

・実際に津波が発生した場合は、ハザードマップで示された浸水想定地域から遠くに逃げること

・その上でどうしても間に合わなければ、自治体が指定する津波避難ビルや(一つの目安として)3階建て以上の高くて丈夫な建物に垂直避難すること

 

11月5日は「津波防災の日」。ぜひ皆さんも地域のハザードマップを確認し、万が一の時の行動を考えてみてはいかがでしょうか。

この記事に関連するタグ

最新の記事