首都圏情報ネタドリ!

  • 2023年12月15日

「若手が十分育っていない」約75%の管理職が実感 社員教育どうする?若者の本音は

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働き方改革が進む中で、「若手が十分に育っていない」と感じる管理職は75%にのぼります(リクルートワークス研究所が29歳以下の部下を持つ管理職を対象に調査、大手企業が対象)。

働き方改革が進み、職場の環境が一変する中、中堅・ベテラン社員の中には育成に悩む人も少なくありません。一方で若者たちの間にも「成長できているのか」という不安が広がっています。

どうすれば働き方の“ギャップ”を解消できるのか。模索を始めた現場を取材しました。(全2回の後編/前編を読む
(首都圏情報ネタドリ!取材班)

若者に「成長実感」持ってもらうには

働き方改革が進む中で「成長できているのか」と不安を感じたり、やりたい業務ができなかったりして転職していく若者たちの本音を前編の記事でお伝えしました。

新入社員に「仕事をする上で重視すること」を聞いた調査では、「自分が成長できる」が1位に入っています(リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査 2023」)。

これまでの一律の育て方では成長実感を持ってもらえないのではないか。
大手化学メーカーは今年、新人研修のやり方を一新しました。導入したのは、社員のタイプがわかるチェックシートです。

「人が無理だと思うことがしたい」「仕事もプライベートもどっちも大事」など、キャリアへの価値観や欲求を診断。それを参考に新入社員がグループに分かれ、1年にわたって研修や学び合いを行います。

旭化成の資料をもとにNHKが作成

旭化成 人事部 人財・組織開発室 三木祐史室長 
「昨今は『比較的会社は好きだし、職場の皆さんにも感謝している。けれども成長を求めて辞めようかな』という人が増えています。できる限り個別のスキルレベルやキャリア観に沿って、成長を実感してもらえるような研修にしてくことが重要だと感じています」

新たな研修に対する新入社員からの評判は上々です。

仕事もプライベートもどちらも大切にする吉岡郁美さんが所属するのは「ワークハックゼミ」。仕事効率化の段取り術や思考法を学びます。

医療機器の営業部門に配属され、診療時間外の朝や夜に病院を回ることが多いため、プライベートの時間を増やしたいと考えていました。

それに役立ったのが、外部講師による仕事効率化のためのノート活用術。これを毎日実行することで業務上の無駄が減少し、浮いた時間で友人たちと過ごす時間をもてるようになりました。

吉岡郁美さん
「無駄に悩む時間がなくなりました。自分のモチベーション向上にもつながっています」

一つのことに集中したいタイプだという熊谷晴さんが選んだのは、スケールの大きな仕事や新規事業の開拓がしたい人向けのアドベンチャーゼミ。

大学院では研究に没頭していた熊谷さん。入社後、働き方改革が進む職場で、時間の余裕があることに戸惑っていたといいます。

熊谷晴さん
「何をやっていいかわからず、ちょっと手持ち無沙汰になってしまったところがあって、だらけるだけでした」

その意識を変えてくれたのが、研修でつながった同期でした。それぞれが自分の時間を使い資格の取得や自己研さんに励んでいることを知り、火がついたといいます。

熊谷さんが始めたのは中国語の勉強。自ら参考書や学習アプリを購入し、業務の開始前に学んでいます。

「日々、みんなが勉強しているのを見て、すごく刺激を受けています。すごいやつらが同期にいると知ることができたので、充実度は格段に上がっていますね。今のところ、転職というのは考えたことがないです」

出戻り歓迎 転職を企業の成長に

さらに、社員の転職を成長の機会だと前向きに捉える動きも出てきています。

大手保険会社では、去年、退職した人たちがつながる仕組みを作りました。参加する退職者は400人近く。定期的に交流会を開き、つながりを保ちながらそれぞれのキャリアを支援しています。

三井住友海上 人事部 人事チーム長 荒木裕也さん
「外に仮に出たとしても、その人がやりたいことを応援することや、戻ってきたときに受け入れることで、新しい価値観を持ち帰ってきてもらうことを期待しています。より相乗効果が生まれてくるだろうと考えています」

これによって、早速、社内に化学反応が生まれています。

3年前に転職した市川隆太さんです。子育てに向き合う中で再びキャリアを見直し、この春復職を果たしました。

市川隆太さん
「転職先は0から100まで全部自分で責任を取ってやらなければいけない環境にずっといたので、全て自分に矢印を向ける、そういう思考マインドみたいなものが身につきました」

もともと在籍していた部署に戻った市川さん。会社の外で培った経験が職場に大きな刺激を与えています。

市川さんの上司
「打ち合わせをしていても、彼はいろんな新しい、我々が発想しないような意見が出てくることが多くて、非常に参考になっています」

新時代の若手育成術 上司の心構えとは

仕事をする上で、成長できるかどうかを重視する若者が多い背景には、社会の変化があると専門家は語ります。

リクルートマネジメントソリューションズ 研究員 武石美有紀さん
「かつてのように、終身雇用で1社に生活を守ってもらえるという期待値が低くなっており、私が若者の転職を支援していたときは『市場価値を高めたい』『どこの企業でも通用するスキルを身につけたい』いう声を多く聞きました。

また、同じ大学の友人とSNSでつながり続けるようになり、キラキラした投稿を目の当たりにすると『自分はまだこんなところにいるのに、誰々さんは、もうそんなことまで任されているの?』とギャップや不安を感じてしまう人も多いと思います」

若手に成長実感を持ってもらうには、個々の違いにどう対応できるかがポイントになるといいます。

新入社員に対する意識調査では、10年前と比較すると「お互いに個性を尊重する」職場で働きたいと答えた人が21.8ポイント上昇しました。また、上司に期待することは、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が16.3ポイント上昇しています(リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査 2023」)。

「新人も日々、仕事で少しずつでも貢献できれば、成長実感を持つことができます。例えば、会議で自分の意見を言うことができた、ということでもいいと思います。

意見を一生懸命言ってくれたら、上司がフィードバックすることが重要ですね。たとえ新人がよくわからないことを言ったとしても、『自分で考えて意見を言えるなんてすごいね。みんながいる中で言うのは緊張したよね』と声をかけるだけでもいいと思うんです。

新人に限らずチームの中で出た意見に対して『きょうはこれにトライしよう』と決めると、一体感が出てくると思いますね」

コンプライアンスや、多様化する社員への対応など管理職に求められる業務は増加していますが、どのように社員教育に向き合えばいいのでしょうか。
武石さんは「育てるという発想ではなくパートナーとみること」を提案しています。

「管理職が、部署内のすべてを把握して理想とするマネジメントをかっちりやろうとするのではなく、もうちょっと気持ちを緩めることが必要です。

自分が難しいと感じることを部下に吐露して、意見を聞いてみる。そうしたら部下たちは自分を信頼して話してくれたのかなという実感を持てるのではないかと思いますね」

原晋監督(青山学院大学陸上競技部)に聞く若者育成のポイントはネタドリ!見逃し配信で(12月22日まで)。

<記事の前編を読む>
「職場がゆるい」若手の約36% 人間関係よい大企業でも転職…そのわけは?

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