不用品を買い取る「リユース店」が次々と開店しています。さいたま市にある売り上げ“日本一”を誇る店では、朝から長蛇の列ができ、査定が5時間待ちになる日も。
アプリなどを使った不用品のネット販売が広がる中で、実店舗の売り上げが増加しており、去年初めて1兆円を突破しました。
さらに東京・世田谷区などの自治体も相次いでリユース市場に参入しています。
なぜ、リユース市場が活況なのか。わざわざ店舗に足を運ぶ理由や、不用品を売る際の注意点を取材しました。
(首都圏局/ディレクター 韮澤英嗣)
私たちは今回、売り上げ“日本一”を誇るリユース店に密着しました。
さいたま市内の駅から徒歩約20分のところにある大型店舗。10万点以上の商品を扱っています。全国で800店以上展開する業界1位のグループで、長年、売り上げトップの座を守ってきました。
客足が特に伸びる週末に密着し、リユース店の人気の秘密を探りました。日曜の開店前には、少なくとも50人以上が行列を作っていました。
列の前方に並んでいた女性が持っていたのは家族の冬服です。衣がえの時期を狙って、先週も店を訪れましたが、売ることができなかったそうです。
息子の服や、自分のものを取っておいてこの時期に売ろうと思いました。
数日前のお昼過ぎに来たんですけど、査定が5時間待ちになっていたので、きょうは開店前に並んで早く査定してもらおうと思って来ました。
この日も買い取りの受付窓口はすぐに、大混雑。開店30分後には、査定は5時間待ちになりました。
開店から1時間後。女性が持ち込んだ冬服の査定が終わりました。コートやカーディガンなど、27点についた値段は4090円でした。
思ったより多く買い取ってもらえました。少しでもお小遣いになって、家もすっきりするなら、という感じですかね。
これだけ待ってでも、店舗に売りに来るのはなぜなのか。季節ごとに不用品を売りに来るという家族連れに理由を聞きました。
すぐ売れるからですね。すぐ現金化できるから。メルカリとかは売れないとずっと残ったままなので。なるべく早く手放したい気持ちが強いので、こういうところを選んでいますね。
ベビーカーと除湿機などを持ってきた夫婦は、捨てるのにかかる「費用」を少しでも節約したかったといいます。
捨てるといっても、けっこう処分費用がかかるよね。
捨てようと思っていたモノがちょっとでもお金になるので、非常に助かっています。
このリユースチェーンは市場の変化に合わせて、業態を変えてきました。
1号店ができたのは、若者たちの間で、古着ブームが起きていた1996年。そこに目を付けた創業者が、香川県に出店。その後、店舗を全国に増やしていきました。
出店が加速したのは、さいたま市にこの大型店ができた2014年以降。インターネットやスマートフォンの普及をきっかけに、取り扱い商品が激増。長引くデフレのなかで、生活必需品や家電なども扱う大型店に力を入れ、毎年50軒ほどのペースで店舗を増やしてきました。
セカンドストリート 一戸綱樹社長
「商品価値のあるものを安く買いたいというのは、たぶん大きくあると思うんですね。生活の一部に入っていただける、そこの選択肢に我々がいるということを理想としています」
いま、目立つのは、節約志向の家族連れの姿です。
毎月のように、この店に来るというこちらの家族。夫婦共働きで2人の子どもを育てていますが、子どものおもちゃや、服などの生活必需品の多くをこの店で購入しているといいます。
息子が幼稚園に通っているので、運動会に向けて三脚を買おうと思って来ました。1300円と、かなり安かったので。
まだお金もかかりますし、おもちゃもいろんなものをほしいっていう時期なので、来ることは多いかなと思います。
あらゆる物価が高騰し、節約志向が高まるなか、リユース店でなら気軽に買い物を楽しめるという声が多く聞かれました。
旦那さんのもの売って、好きなモノ買っちゃうみたいな。結局ものが増えてしまうんですけどね。
大きい店舗のほうが、売ったあとに商品を見られるので。査定している時間に店内を見て、結局売ったモノと買った物がプラスマイナスゼロになってしまいます(笑)
若者たちにとって、リユース店はもはや“当たり前”の存在になっています。店には近年、服を探しに来る10代、20代の若者が増加しています。
中には、「売ることを前提」にして商品を買っているという人たちも。買い物の際に、中古市場での相場を調べるといいます。
例えば、洋服を2万円で買ったとしても、中古品として1万5000円で売ることができれば、洋服にかけた金額は5000円に抑えられるからです。
いくらで売れているのか調べて、これぐらいで売れるんだ、じゃあ今買ってもそんなに値落ちしないか、とかはやっています。
高いけれど付加価値のあるものを買って、次、また服を買いたいので、自分が着なくなるときに高く売れたらいいな。
お得にものを買えた喜びを得られること。それもリユース店の魅力のようです。
利用者のなかには、今や百貨店や専門店には行かなくなったという人も。毎週のように、このリユース店を訪れているという夫婦です。
流行に敏感で、かつてはよく専門店に出かけていましたが、今は、「よいものを安く買うこと」が、何よりの楽しみだといいます。
他に行きたいって思う店がない。この店だと、自分の気に入ったものがどこかに必ずあるので、時間の節約にもなるし。お宝探しみたいな感覚。
きょうもお気に入りの服を見つけたので、うれしいです。
拡大するリユース市場には自治体の新規参入も相次いでいます。その1つ、実証実験を経て、ことし事業をスタートさせた世田谷区です。
区民であれば、誰でも不用品を持ち込める専用のスペースを区内に開設しました。「破損や目立つ汚れがない」などの条件を満たせば、予約を取った上で、無料で持ち込むことができます。
不用品の回収をやっているっていうのをホームページで見て、粗大ゴミで出して数百円払うくらいなら、持って行こうと思いまして。
スタッフが使えることを確認した上で値段をつけ、提携する地域情報サイトに商品の情報をアップします。商品は区民以外の人も購入でき、売り上げは区の収入になる仕組みです。
世田谷区がリユース事業に参入した理由は、深刻化する「粗大ゴミ問題」に対応するためです。粗大ゴミの量は年々増加し、コロナ禍の2021年に過去最多を記録。1か月以上、粗大ゴミの回収が滞る事態が起きました。
1年半に及ぶ実証実験で、持ち込まれた不用品は4万点以上。削減できたゴミの量は推定で、230トンほどにのぼります。
世田谷区 清掃・リサイクル部 荒木義昭 事業課長
「現状、ことしの売上として1400万円ほどを見込んでいます。我々の目標はゴミの減量ですので、世田谷区民の皆さまにできるだけ循環型社会に向けた取り組みにご協力いただいて、一緒にゴミの減量に進められたらと思っています」
世田谷区のほか、南関東の1都3県だけでも30を超える自治体がこうした事業の導入に向けて動き始めています。
自宅に買い取りに出向く「出張サービス」を行う企業も、急成長しています。
この5年で売上を3倍に伸ばしているリユース企業では、依頼者の8割が50代以上。「生前整理」のために不用品を処分したいというニーズが多いといいます。
50代の女性は、母親が残していた着物を整理したいと依頼しました。これを機に、不要になったカメラや自分の振り袖など、合わせて36点の買い取りを希望。買い取り金額は3万4700円になりました。
亡くなってから整理すると、すごく大変になってしまうので。家の中のものを整理していこうかと探していたら、いろいろ出てきて。
バイセルテクノロジーズ査定士 神坂康太さん
「ご予定いただいたお品数のよりも、基本的に現場に行けば増えることが多いので、お客様が気づいていない部分に価値が眠っていたりとか、現金化できるお品物が結構あったりすることを実感しています」
一般の家庭で「1年以上使っていなくて自宅に眠っているもの」の額を推計したところ、1人あたりおよそ34万円、総額で43兆円を超えるという試算もあります(2021年 メルカリとニッセイ基礎研究所の共同調査より)。
ただ、こうしたサービスの広がりと共に、業者とのトラブルも増えていて、注意が必要です。
国民生活センターがまとめた不用品の訪問買い取りをめぐるトラブルの相談件数は、増えています。
相談内容の中には「高齢の母が古本の買い取りを依頼したら、玄関先に置いていた貴金属を安価で買い取られた」「金のネックレスを売却したが、買い取り価格が相場より非常に安いことが分かった」といった声が寄せられているといいます。
トラブルを避けるためのポイントを小売業界に詳しい流通アナリストの中井彰人さんに聞きました。
(1)見積もりは複数の業者にお願いする
ただし、突出して高い見積金額を提示する業者がいたら、おとりの可能性があるため、事前に中古市場の相場を確認してください。
(2)対応は複数人で行うことも大切
特に高齢者の場合は、家族や知人などに立ち合ってもらい、取引する方が安全です。
(3)押し売りならぬ“押し買い”に注意
事前の見積もりと違う安値で買い取ろうとしたり、依頼していない、売るつもりがないものを買い取ろうとしたりしてきたら注意してください。
中井さんは、「自分で納得できない条件変更や、予定外の買い取りを強要されそうな場面に遭遇したら、警察に連絡することも想定してほしい」と話していました。