避難生活では足に血栓が生じやすくなる「エコノミークラス症候群」にも注意が必要です。過去の災害ではエコノミークラス症候群によって体調を崩し、最悪の場合、亡くなる人も相次いでいます。適切な対策や注意点について専門家に聞きました。
日本血栓止血学会の理事を務める金沢大学の森下英理子教授によりますと、エコノミークラス症候群は血流が悪くなってできた血の固まり“血栓”が肺の血管などにつまることなどで引き起こされます。
森下教授は、寝たままの姿勢が続く人や高齢者、肥満の人、がんの治療をしている人、いわゆる「車中泊」などで窮屈な姿勢を長時間続けている人などはリスクが高く、注意が必要だと指摘します。
一方、適切な対策を実践することで予防できるとして、長時間、同じ姿勢でいることを避けてこまめに水分をとり、数時間に1回は、ふくらはぎの筋肉を意識してひざや足首を曲げたり伸ばしたりする運動が効果的だということです。
森下教授は締めつける力の強い「弾性ストッキング」などを着用することで血流がよくなり、血栓ができにくくなるとしたうえで、違和感や痛みが出た場合はすぐに外してほしいと話しています。
また、肺の血管に血栓が詰まった場合には、胸の痛みや、突然の呼吸困難、息切れなどの症状がみられ、こうした場合にやためらわず避難所や近くの医療従事者に助けを求めてほしいとしています。
過去の災害ではいわゆる「エコノミークラス症候群」によって体調を崩し、最悪の場合、亡くなる人も相次いでいます。熊本地震など過去の災害では避難生活をはじめて4日目ぐらいから、エコノミークラス症候群が相次いだということです。
能登半島地震の被災地では続く避難生活によるストレスや「車中泊」などによる体調の悪化が懸念されています。
森下教授
「避難生活でのエコノミークラス症候群は正しい対策をとることで防ぐことができます。運動不足のほか、ストレスも原因のひとつとなるため避難所の環境を向上していくとも対策のひとつとなります」