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震災関連死を防ぐ「TKB」とは? 避難環境は体調悪化にどう影響

  • 2023年3月7日

「震災関連死」は地震のあとの避難生活による体調の悪化などが原因で亡くなることです。専門家が、東日本大震災などを詳しく分析したところ、改めて見えてきたのは、避難生活の環境の悪さが関連死につながった可能性があることでした。南海トラフ巨大地震が発生した場合、関連死はどれほどの規模になるのか、専門家が試算した結果や、それを防ぐために必要とされる避難所の「TKB」とは何かまとめました。

震災関連死を防ぐ「TKB」

大きな地震のあと、生活環境の悪化やストレスが原因で亡くなる「震災関連死」は、12年前の東日本大震災では2022年3月末の時点で3789人となるなど過去の地震で相次いでいます。

震災関連死を防ぐために、医師や専門家が必要だと指摘するのが、災害時の避難所の「TKB」とは(ティー・ケー・ビー)「トイレ・キッチン・ベッド」の略です。
「トイレ」は汚いトイレを避けて清潔なトイレにすること、「キッチン」は冷たく栄養の不十分な食事を避けて暖かい食事を提供すること、「ベッド」は床での雑魚寝を避けて就寝環境を整えることなどを指しています。

避難生活の環境 関連死にどうつながる

災害事例の分析が専門の関西大学の奥村与志弘教授は、東日本大震災に加え、1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、2016年の熊本地震で発生した関連死を詳しく分析しました。
その結果改めて見えてきたのは、避難生活の環境の悪さが関連死につながった可能性があることです。

〇「T」トイレ 劣悪な場合
そのひとつが、トイレです。例えば、断水で水がなくなると水洗トイレが使えなくなり、「劣悪なトイレ環境」に陥ります。
すると、トイレに行きたくないと「排泄回数を減らす」ため、「水分摂取を控える」人が出始めて、「脱水症状」を起こします。
その結果、「口腔内の細菌が増え」、それが原因で「誤えん性肺炎」を引き起こし亡くなる人が出てくるのです。

〇「K」キッチン 偏った食事の場合
「偏った食事」も要因のひとつです。「栄養が偏って」、「高血圧」が進行する人が増え、「循環器系疾患」につながりやすくなります。

〇「B」ベッド 雑魚寝の場合
避難所での「雑魚寝」も要因です。床で寝ることで大きな「ストレス」を受け、「睡眠不足」に陥ります。その結果「体力や免疫力が低下」して、「呼吸器系疾患」を引き起こす人が出てくるのです。各地の災害では、避難所への段ボールベッドの導入が広がりつつあります。

この他にも、「医療機能や介護サービスの停止」、「地震への恐怖」、「意欲の低下」など、様々な条件が重なることで関連死につながっていました。

震災関連死 南海トラフ巨大地震について試算

国は南海トラフ巨大地震が起きた際の最悪の場合の死者を32万3000人と想定していますが、震災関連死はこの中に含まれていません。
南海トラフ巨大地震で震災関連死はどれほどの規模になるのか、関西大学の奥村教授は、過去の災害時に避難した人の数と関連死の発生件数との関係から初めて試算しました。

その結果、最悪の場合、7万6000人にのぼる可能性があることがわかりました。東日本大震災のおよそ20倍にのぼるという結果です。
この試算は全国でおよそ950万人の避難者が出た想定で行われました。

奥村教授は多くの死者が出る試算について、広い範囲でインフラに被害が出て停電や断水が長期化する上に、避難所や自宅での避難生活が長引き適切な医療や介護を受けられない状態になることが大きな要因として考えられるとしています。

根本的に関連死を減らすためには

奥村教授は、関連死を減らすには行政や医療関係者の対策だけでは不十分で、企業や住民なども協力して社会全体で対策を進めることが必要になると指摘します。

関西大学 奥村与志弘教授
「関連死は、体調を崩した人にどういう医療措置が必要かという問題だけでなく、一人一人を取り巻く環境を変えていかないと根本的に数を大きく減らすというのは難しい。大きな犠牲が出る可能性があるということを1人でも多くの人や多くの企業、多くの関係者が認識し、それぞれの立場でできる対策を進めていくことが大事だ」

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