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痴漢から受験生どう守る 被害者が語る対策 電車に乗るときは? 警察は警戒強化

#本気で痴漢なくすプロジェクトNO.13
  • 2024年1月12日

入学試験などに「遅刻できない」という受験生の心理につけこんだ痴漢の被害が懸念されています。警視庁は鉄道各社と連携して駅構内や電車内での見回りの人員を増やすなどして警戒を強めています。被害に遭わないための対策や被害に遭ってしまったときの対応など詳しくまとめました。

受験生を狙った痴漢をあおるような投稿

警視庁によりますと、数年前から受験シーズンになると、SNSに「痴漢し放題」などと、受験生を狙った痴漢をあおるような投稿が相次いでいるということです。

痴漢に遭っても受験を優先しようと被害を申告しづらい受験生の心理につけこんだものとみられ、警視庁はサイバーパトロールを行ってこうした投稿を見つけしだい、「痴漢は重大な犯罪行為で許されない。犯罪に対して警察は検挙の措置を講じる」などと返信する形で警告しています。

被害者 “少しでも被害に遭う確率を下げるため自衛を”

高校生のときに痴漢の被害に遭ったという25歳の女性が当時の経験を語ってくれました。殿岡たか子さん(仮名・25)が最初に被害に遭ったのは高校に入学して2日目の朝、通学中の電車内でした。

学校の教諭のほか、警察にも相談し、自衛のために、防犯ブザーや、「痴漢です。やめてください」と自分の声を録音したぬいぐるみを持ったりしましたが怖くて鳴らせませんでした。そもそも痴漢に遭わないようにすることが大切だと思うようになったといいます。

「受験生は特に人生の大事な局面で何にも邪魔されたくないと思いますが、痴漢はそうした状況をわかって被害者を襲う、すごくひきょうな手口です。本来なら被害者が頑張ることではないですが、少しでも被害に遭う確率を下げるためにできる自衛をしてほしい」

「痴漢に遭いたくない」痴漢抑止バッジ考案

殿岡さんは痴漢の被害に遭った経験から「痴漢に遭いたくない」「痴漢に遭ったら絶対に泣き寝入りしない」という意思を示してかばんなどに付ける「痴漢抑止バッジ」を考案し、現在は「痴漢抑止活動センター」でバッジの普及を進めています。殿岡さんに、電車で試験場に向かう際のポイントを聞きました。

被害に遭わないために 電車に乗るときの対策

被害に遭わないためにできる対策としては、電車に乗る前に周囲を確認する、電車内の立ち位置に気をつける、できれば制服ではない服装で行くことを心がけてほしいといいます。

電車に乗る前には、女性専用車両がないか確認したり、痴漢は駅のホームでターゲットを選ぶケースがあるため、ホーム上に不審な人がいたら離れた車両を選んだりすること。

また、電車内では、ドア付近や座席横の角になる場所は避けて、できるだけ人目につきやすい座席エリアまで進んだうえで、立ち姿にも気をつけてほしいといいます。

さらに、制服を着ていると受験生だと思われる可能性があるため、可能なら私服で試験会場に向かってほしいとしています。制服を着る場合は、スカートの下に運動着を履くことも有効だということです。

「怖くて自信をなくすと猫背になってしまいます。痴漢は抵抗しなさそうな人を選ぶので『私は抵抗するぞ』というのを姿勢から示すのが有効で背筋を伸ばして立つということを意識してほしい」

被害に遭ってしまったら

では、被害に遭ってしまったときはどうすればいいのか。殿岡さんは恐怖を感じて動かないと行為がエスカレートするため、手で振り払ったり、声を出したりしてほしいといい、「もし偶然当たっているのであれば振り払われたら基本的には二度と触ってこない。『あたっています』とか『やめてください』と言って、それでも偶然を装って触ってくるのであれば確実に痴漢です。満員電車ではなかなか難しいですが、距離を取れるのであれば取ってほしい」と話しました。

また、乗っている車両や時間、立っていた位置を覚えておくと、警察から被害の状況を聞かれる際に役に立つということです。

「受験に行く途中で痴漢の被害に遭ってしまったら絶望してしまうかもしれませんが、受験に関しては救済措置もあることを頭に入れておいてほしいです。被害に遭わないように対策をして、もし被害に遭ったときのことも事前にシミュレーションして会場に向かうことが大切だと思います」

見回り増員 防犯アプリ「DigiPolice」活用を

受験シーズンに懸念される痴漢を防ごうと、警視庁は鉄道各社と連携して駅構内や電車内での見回りの人員を増やすなどして警戒を強めています。

さらに、被害者から、「怖くて声が出ない」とか「逃げることもできない」といった声が寄せられたことを踏まえ、警視庁では、防犯アプリ「Digi Police」(デジポリス)に声を出さなくても痴漢の被害を周囲に訴えられる機能を設けています。
画面をタップすれば、「やめてください」と自動で音声が流れます。警視庁は、痴漢の被害者や目撃者になった場合に備えて、「お守り代わり」としてアプリをダウンロードしてほしいと呼びかけています。

警視庁 二宮健生活安全総務課長
「昨今、受験生に対する痴漢行為をあおる書き込みが多く確認されていて、痴漢撲滅の機運を高めて高校生を守る必要がある。誰でも被害に遭うおそれがあり、周囲が痴漢に遭遇した際には声をかけて被害者を守る行動を取ってほしい」

試験場へ向かう際に被害 共通テスト追試験対象

警視庁が2023年、検挙した痴漢は11月末の時点で759件に上り、このうち65%が電車の中での被害でした。
検挙件数は、2021年1年間の434件に比べておよそ1.7倍に増加していて、新型コロナの5類移行に伴い、人流が回復したことで大幅に増えているとみられます。

また、時間帯別では午前7時台と8時台の朝の通勤通学の時間が最も多く、警視庁は、受験会場に向かう混雑した電車中での被害が特に懸念されるとしています。

大学入学共通テストを実施する大学入試センターは、試験場に向かう途中に痴漢の被害に遭った場合は追試験の対象となることから、受験票に記載されている「問合せ大学」に、速やかに電話で連絡してほしいとしています。

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