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“痴漢”という性暴力 目の前で痴漢が…そのときどうすれば?

#本気で痴漢なくすプロジェクトNO.4
  • 2022年4月18日

「助けなきゃ。自分が声をかけないと女性が長時間苦痛な思いをしてしまう」
帰宅途中の電車の中。ドア付近で男が女子高校生のお尻をなでるように触っていたのを目撃した会社員の男性は、男に声をかけて共に駅を降りました。その後、男性は駅員に警察への通報を依頼。駆けつけた警察官に男を引き渡し、警察署での聴取に応じました。この男性のような行動をとれる人は多くはないかもしれません。
痴漢に遭ったら、被害を目撃したらどうしたらいいのか…。埼玉県では警察が新学期に合わせて高校生たちに被害の対処法などを伝えました。その方法のひとつが「しゃがむこと」です。
(首都圏局/記者 岡部咲・金魯煐 さいたま放送局/記者 海老原悠太)

痴漢・盗撮被害に遭った、または目撃したことはありますか?
あなたの体験やご意見をこちらの 投稿フォーム にお寄せください

痴漢に遭ったら、目撃したら…

痴漢の被害に遭ったら、痴漢を目撃したらどうしたらいいのか。新学期に合わせ埼玉県では警察が直接、高校生に被害防止を呼びかけました。

さいたま市内の埼玉栄中学・高等学校には埼玉県警の鉄道警察隊が訪れ、痴漢の実態について知ってもらおうと埼玉県警が作成した動画を見る時間が設けられました。
コロナ禍でも痴漢はあとを絶たず、埼玉県警には去年253件の痴漢被害にあった、もしくは目撃したなどの相談が寄せられているということです。

生徒たちに見てもらったのは、埼玉県警がことし4月に作成した「てっけい まなびタイム」というタイトルの動画です。痴漢の被害に遭いにくい場所や対処法などをまとめています。

「てっけい まなびタイムより」

たとえば、ドア付近は混雑するため、痴漢被害に遭いやすいと指摘。混雑した場所では被害に遭っているかどうかも分かりづらく、身動きもとりにくいので避けた方が良いとしています。
身動きがとれない場所で、もし痴漢にあったらどうしたらよいのか。その対処法として「しゃがむこと」をアドバイスしています。

「てっけい まなびタイムより」

こうすることで、周りの人も“大丈夫ですか?”など声をかけやすいということです。
動画では、加害者について断片的にしか分からなくても警察に通報すること。そして周りも被害に気づいたら声をかけるなど協力を呼びかけます。
また、声を出さずに周囲の人に助けを求めることができるアプリなども紹介されています。

 

自分も電車に乗ることが多いので、痴漢をとめる勇気を持ちたいと思いました。痴漢されたときに声が出せない人のためのアプリがあると初めて知ってよかった。クラスの人や妹に教えたいです。

 

しゃがんで痴漢を防止するのは知らなかったです。自分もそうだし友だちにも教えてあげたいと思いました。いままで警察に相談しづらいと思っていましたが、少しずつでも警察に伝えていきたい。

 

女性だけではなくて男性が被害に遭うケースも増えていると思うので、ないがしろにするのではなくて、男性として痴漢に対処していくべきだと思いました。

痴漢の被害に遭ったが被害の届け出せず約86%に

痴漢に遭った場合、実際に警察などに相談するのはハードルが高いのが実情です。

埼玉県警が2020年に県内の学校や会社に通っている高校生以上の女性1754人を対象に行ったアンケートでは過去に痴漢の被害に遭ったことがあると回答した人などの86.4%が警察に被害の届け出をしていません。

その理由を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのが「いろいろと面倒だと思った」で36.6%でした。
次いで「時間がなかった」で19.4%、「おおごとにしたくなかった」が14.2%などでした。

埼玉県警鉄道警察隊の隊長、及川直美さんは、生徒たちに「痴漢かもと思った時、されていると思った時など迷った時は気軽に相談してほしい」と呼びかけています。

埼玉県警鉄道警察隊 及川直美隊長
「動画をきっかけに痴漢を許さないという機運を高めて、もし痴漢を見かけた場合は誰かが声をかけたり警察に相談したりしてほしい。鉄道警察隊には、鉄道痴漢被害相談所という電話相談の窓口も設けているので、110番しづらい場合でも気軽に相談をしてほしい」

埼玉県鉄道痴漢被害相談ホットラインの窓口
電車内での痴漢被害に遭い、悩んでいる人などからの相談を受けています。
電話番号:048-641-0599

被害を見かけたら“大丈夫ですか”と声をかけて

痴漢被害者の支援に取り組んでいる岸本学弁護士は、痴漢被害にあった場合は、
・一番安全に被害を食い止めるには、可能であればその場を離れる。
・身動きがとれない場所の場合は「やめてください」とか「しゃがむ」などの意思表示ができれば、被害が止まる可能性が高いと指摘しています。

また、周りの人ができることとして4つのことを提示しています。

(1)大丈夫ですかと声をかける、席をゆずるなどして被害を食い止める。
(2)加害者に注意をする、声をかけて制止する。
(3)手を捕まえるなどして加害者を確保し、駅員などに引き渡す。
(4)捜査への協力。

岸本学弁護士
「被害者のかたはフリーズしてその場から動けない、声も出せないことが多いので、もし見かけたら可能であれば声をかけてあげる。犯罪被害に遭いつづけている人を前にしたら、援助の手を差し伸べることが一定の責任ではないかと思います。被害者をその場から離れさせるでもいいので、自分のできる範囲のことをしてほしい」

混雑していない車内で男が密着し…

痴漢を目撃し、被害に遭っていた女性を助けた男性もいます。
千葉県柏市の山田哲也さんが痴漢を目撃したのは10年ほど前。帰宅途中の電車のなかで、それほど混んでもいないのに、ドア付近にいる女子高校生のすぐ近くに男が密着するように立ち、男の手が不自然に動いているのが見えたのです。
最初は電車が揺れてぶつかっただけなのかなと思っていたものの、そのうち右手の人さし指が高校生のお尻をなでるように触っているのを目撃しました。気づいた山田さんは考えるより先に行動していました。

山田哲也さん
「女性に『触られましたか?』と尋ねると『触られました』というので『2人とも次の駅で降りてください』と声をかけました。被害を受けている子を助けなくてはという気持ちが強くて、迷いはありませんでした」

その後、駅員に警察への通報を依頼し、駆けつけた警察官に男を引き渡して警察署での聴取に応じました。かかった時間は2時間半余り、帰宅したのは深夜でした。

自分の身に起きた痴漢被害

山田さんが痴漢被害を目撃したのは初めてです。しかし女性を助けなくてはとすぐに思ったのには自分の身に起きたつらいできごとがありました。高校生の時に電車で股間を触られる被害にあったのです。そのときは驚きで頭が真っ白になり、何が起きているのか分からず、ことばも出なければ行動もおこせなかったといいます。
その思いも重なり“助けなきゃ、自分が声をかけないと女子生徒が長時間苦痛な思いをする”と感じ行動にうつしていたのでは、と山田さんは当時のことを振り返ります。

“どうか心の傷が癒えていますように”

山田さんが今でもはっきり覚えているのは、女子生徒のおびえた表情です。

山田哲也さん
「自分が痴漢被害にあったから分かりますが、思春期の子がこのような被害にあったときに受ける心の傷は相当大きいと思います。心の傷は体の傷と違って目に見えない分、より深いと感じます。今は穏やかに過ごせてくれていればいいなって、心の傷が癒えてくれたらいいなって、これを願うばかりです。周りで何かが起きても見て見ぬふりをしないで、少しの勇気を振り絞って周りが声をかけてあげられる世の中になってほしいです」

今後も「#本気で痴漢なくすプロジェクト」として痴漢についての取材を継続していきます。
痴漢被害に関するご意見をこちらの投稿フォームにお寄せください。

  • 岡部 咲

    首都圏局 記者

    岡部 咲

    2011年入局。宮崎局、宇都宮局を経て、現在は教育などを担当。

  • 金 魯煐(キム ノヨン)

    首都圏局 記者

    金 魯煐(キム ノヨン)

    通信社記者などを経て2022年入局。 ジェンダーやSRHR(性と生殖に関する健康と権利)について取材。

  • 海老原悠太

    さいたま放送局 記者

    海老原悠太

    2021年入局。主に事件・事故を取材。

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