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  • 2023年11月6日

台東区 国立科学博物館 クラウドファンディングで約9.2億円 支援の動き広がった理由は?

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収蔵している国内最大規模の標本の管理に充てるために、ことし8月からクラウドファンディングを行った東京・台東区にある国立科学博物館。その結果、目標額を大幅に上回る5万6000人あまりからおよそ9億2000万円が集まりました。

なぜ、これほど多くの人たちに支援の動きが広がったのか。 
実際に支援した人たちから話を聞くことができました。

クラウドファンディングで約9億2000万円集まる

国立科学博物館は、光熱費の高騰などを受けて国内最大規模の500万点以上に上る動植物の標本や化石などのコレクションを収集・保管する資金が危機的な状況にあるとして、ことし8月7日から11月5日にかけてクラウドファンディングを実施しました。 
 

一夜明けた11月6日、篠田謙一館長らが記者会見を開き、クラウドファンディングを実施した結果、5万6000人あまりからおよそ9億2000万円が集まったと明らかにしました。

集まった資金のうち3億円あまりは返礼品や手数料などとして使う予定ですが、残りは▼年々増えている標本などを適切に管理するため、茨城県つくば市にある収蔵庫を増築するための建設費や▼コレクションのさらなる充実などに充てる方針だと説明しました。 
 

篠田謙一館長 
「結果は大成功で、支援者の数も予想よりはるかに多く、ご支援をいただきありがとうございました。博物館が経営的に危機だということが見えるようになったことが大きかったと分析しています。今後は賛助会員などからの継続的な寄付を増やしていくことで資金の確保につなげたい」

なぜ支援の動き広がったのか?

なぜこれほど多くの人たちに支援の動きが広がったのか。

11月4日、3連休でにぎわう国立科学博物館で、実際に支援した人たちから話を聞くことができました。

その1人で都内に住む真保義子さん(78歳)です。

国立科学博物館へは、これまでに子どもや孫を連れて何度も訪れており、家族との思い出が詰まった特別な場所だといいます。

真保義子さん 
「ここの展示を見ていると、幼いときの子どもたち孫たちの姿がよみがえります。たびたび訪れるなかで標本はきちんと保存していくものだと思い、支援させていただきました。費用がかかっても次の世代につないでいかないといけないということは、1人2人の上の人が思ってもなかなか進みません。まわりの人がみんな意識を少しでも持つことが大切で、それが1つのきっかけとなれば」

同じく博物館の窮状を知り支援を決めたという西村淳さん(80歳)は「博物館の人たちの熱意やことばが心にしみてクラウドファンディングに応じました。日本には寄付を行って助けようという文化がありませんから、これを機会に日本の寄付文化が育てばいいと思います」と話していました。

また、岩佐高明さん(72歳)は、多くの人の間に支援の動きが広がったことについて「博物館が残ってほしい、いまの状況がきちっと次の世代に伝わってほしいと思ったことが、一番胸を打った部分じゃないかと思います」と分析しています。

そして、「クラウドファンディングもそうですが、それ以外にも民間の力をプラスする方法はあると思うので、少しでも国民全体が関心を持って関与していくことが大事だと思います」と話していました。

国立科学博物館のプロジェクト“過去最高額を更新”

クラウドファンディングを運営する企業によりますと、これまでに実施されてきたおよそ2万5000件のクラウドファンディングのプロジェクトのうち、支援額が最も多かったのは、3年前(2020年)に行われた新型コロナウイルスの感染拡大防止活動の基金を募るプロジェクトで8億7249万円でした。

今回の国立科学博物館のプロジェクトで集まった資金は、11月6日午前7時半の時点で9億1556万円に上り、過去最高額を更新したということです。

支援を行った人の数も5万6000人あまりと、1件のプロジェクトの支援者の数としては過去最多だということです。

今回のプロジェクトはことし8月7日、募集を開始したその日のうちに目標額の1億円を超え、2週間あまり(8月22日)で7億円が集まりました。支援の動きはその後も途切れることはなく、募集が締め切られた11月5日までで、さらに2億円あまりが寄せられました。

クラウドファンディング活用する動き

資金面の厳しさを背景に、クラウドファンディングを活用する動きは国立科学博物館にとどまらず、大学や研究機関にも広がっています。

この秋(9月)には、仙台市にある東北大学の植物園も、標本を管理する資金が危機的な状況にあるとしてクラウドファンディングを始めています。これまでに当初の目標額である400万円を大きく上回るおよそ1500万円が集まっていて、植物園は▼標本がカビなどで劣化しないための除湿機の購入費や▼標本をデジタル化するための費用などに充てたいとしています。

また、茨城県つくば市にある国立環境研究所も絶滅危惧種の動物に関する国内最大の「遺伝資源バンク」の管理に充てる資金面の厳しさからこの夏(8月)にかけてクラウドファンディングで支援を呼びかけ、目標額を上回る900万円余りを集めました。

「遺伝資源バンク」では、▼沖縄本島に固有の鳥で、外来種や交通事故の影響で個体数が減少するリスクがある「ヤンバルクイナ」や、▼小笠原諸島にのみ生息するチョウで、ここ数年、野外での目撃例がない「オガサワラシジミ」といった絶滅危惧種の100種以上の細胞などが凍結保存され、「遺伝的な多様性」を残す取り組みを行っています。

集まった資金を活用して、災害などで一度にすべてが失われるリスクを回避するため、「遺伝資源バンク」を北海道に新たに設け、分散して管理する計画を進めることにしています。

東北大学の植物園も国立環境研究所も今回はクラウドファンディングで目標額を上回る資金集めに成功し、当面の活動にメドがつく形になりますが、標本や資料を次の世代に残していくには安定した財源が必要となります。

多様な財源の1つとしてクラウドファンディングも重要ですが、一過性に終わらない息の長い取り組みが求められています。

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