東京・調布市の住宅街で2020年10月に見つかった道路の陥没で、原因とされる地下のトンネル工事で緩んだ地盤の補修が進む一方、高速道路会社は陥没現場周辺のトンネル工事の再開は見通せる状況ではないとしています。陥没が見つかって3年となり、変わる地域の姿や、地下のトンネル工事をめぐる対応についてまとめました。
東京・調布市の住宅街で陥没が見つかったのは3年前の2020年10月です。その後、地下で空洞も相次いで見つかりました。
周辺の住宅では壁や基礎の一部などに亀裂が確認されたほか、市役所には陥没が起きる前から「家が揺れる」などといった住民からの連絡が相次いでいました。
原因は東日本高速道路が地下深くで行っていた「東京外かく環状道路」のトンネル掘削工事とみられています。
地下深くでトンネル工事を進めていた東日本高速道路は、有識者による委員会を設置して原因を調査し、2021年3月、委員会はシールドマシンで地下を掘り進める際に、土を取り込みすぎた施工ミスが原因となった可能性が高いなどとする報告書をまとめました。
会社ではことし8月からトンネルの真上にあたる幅16メートル、長さ220メートルの範囲で緩んだ地盤の補修工事を行っていて、会社の説明によりますと工事のためにおよそ30軒のうち半数以上と住宅の買い取りや一時移転の交渉を終え、これまでに12軒が転居して建物を解体したということです。
工事現場近くに住み続けている住民の中には、自宅が買い取りや一時移転の対象になっていない人もおり、周りの住民が次々に立ち退いていく状況に不安を募らせています。
そのうちの1人、陥没の場所から数十メートル離れた家に18年住む小寺淑子さん(81)は平穏な生活を取り戻すために事業者はより丁寧に説明を尽くすよう訴えていました。
小寺淑子さん
「近所の家が一斉になくなっていくのは異様な感じがしますし、さみしいです。この地域がこれからどうなっていくのか、青写真を示してほしい。ほかの地域に暮らす家族は陥没があって以降、ここに泊まりに来なくなってしまいました。地面はすべてつながっているので絶対に安心だと言えるのか、信用できる説明をしてもらいたい」
地下のトンネル工事をめぐっては、陥没が見つかった地域を含む一部の区間は去年2月に住民からの仮処分の申し立てを受けて東京地方裁判所が中止を命じ、現在も掘削は止まっています。
地盤の補修には2年ほどかかると見込まれ、会社では中止を命じられた区間のトンネル工事への対応については見通せる状況ではないとしています。
一方、そのほかの区間については削った土の量を厳しく把握するなど、事故を踏まえた再発防止策をとるとしていて、巨大な掘削機、シールドマシンによる掘削を再開しています。三鷹市や調布市では近く地上の中央自動車道にトンネルをつなぐための工事が新たに始まる見通しで、10月、住民を対象にした説明会が開かれました。
会社によりますと、住民からは工事に伴う振動や騒音への不安の声などが寄せられ、振動や騒音を軽減させる工法を徹底することや、必要な場合は一時的な滞在先を提供することなどを説明したということです。
東日本高速道路
「東京外環道の工事における地表面陥没・空洞事故やトンネル工事中の振動・騒音により、住民の皆さまに多大なるご迷惑とご不安を与えてしまい、心よりお詫びを申し上げます。引き続き皆さまのご意見を伺いながら丁寧に説明し、住民の皆さまの不安解消に努めていくとともに、責任を持って工事を実施してまいります」