2028年夏のロサンゼルスオリンピックで実施される追加競技として、IOC=国際オリンピック委員会はインドで開かれた総会で、スカッシュやフラッグフットボールなど5つの競技を採用することを決めました。
フラッグフットボールが採用されたことを受け、日本代表の選手たちは「オリンピック出場が現実的な目標になった」と5年後に向けた意気込んでいました。また、日本スカッシュ協会の強化指定選手も喜びや今後の意気込みを語りました。
記事では、2つの競技についてもまとめています。
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IOCは16日、インドのムンバイで前日に引き続き総会を開き、今後、予定されているオリンピックの準備状況などについて審議しました。
このうち、2028年にアメリカのロサンゼルスで開かれる夏のオリンピックについては、大会組織委員会が追加競技として提案した野球・ソフトボール、クリケット、ラクロス、スカッシュ、フラッグフットボールの5つの競技を実施するかどうか採決が行われました。
採決は5競技一括で行われ、賛成多数で可決されてロスサンゼルス大会で採用されることが決まりました。
野球・ソフトボール
東京大会でも追加競技として実施され、いずれも日本が金メダルを獲得していて、2大会ぶりの実施となります。
クリケット
第2回大会以来128年ぶり。
ラクロス
第4回大会以来120年ぶりで、今回は6人制が採用されました。
フラッグフットボール
初めての実施となります。
スカッシュ
初めての実施となります。
IOCによりますと、追加競技の選手枠は742人分あり、夏の大会の上限とされている選手1万500人の総枠は超えるということで、既存の競技の選手数を削減して調整する見込みだということです。
また、国際競技団体に解決すべき問題があるとして、実施の判断が保留されていたウエイトリフティングと近代五種についてもロサンゼルス大会で実施されることが決まりました。
このうち近代五種は、乗馬に代わって障害物レースを種目に加えるということです。
一方、IOCが認可した国際統括団体がない状態となっているボクシングは引き続き保留となりました。
初めての実施となるフラッグフットボールは、アメリカンフットボールのルールをベースに、タックルなどの接触プレーの代わりに腰の左右につけた『フラッグ』を取り合うことで安全性を高めた競技です。
老若男女が楽しめるスポーツとして日本でも人気が高まっていて、国内の競技人口はおよそ3000人です。
試合は5人対5人でオフェンス側とディフェンス側に分かれ、オフェンス側には4回の攻撃機会が与えられて、ボールを持って走ったりパスを回したりしながらタッチダウンを目指します。
反対にディフェンス側はボールを持った選手の腰のフラッグを奪うか相手のパスをカット、もしくはボールを持った選手をサイドラインから外に追いやれば相手の攻撃機会を1回減らすことができます。
戦略が重要なスポーツで、オフェンス側には攻撃の機会がくるたびに作戦を考える時間が与えられます。こうしたことから「コミュニケーション能力」と「思考判断力」、そして「体力」を同時に育むことができるとして、日本では令和2年度(2020年度)から小学校の体育の授業に本格的に取り入れられています。
フラッグフットボールが採用されたことを受け、日本代表の選手たちは「オリンピック出場が現実的な目標になった」と5年後に向けた意気込みを話しました。
日本フラッグフットボール協会の関係者や日本代表選手などおよそ10人は、都内の会場でIOCの総会を見守りました。
そして、フラッグフットボールが追加競技に採用されることが決まると、拍手をしたり握手を交わしたりして喜びを分かち合っていました。
このあと、会見した協会の岡出美則代表理事は次のように話していました。
岡出美則 代表理事
「これまでの関係者の尽力が思い出されて、喜ばしいのと同時に、この決定に対して私たちがどういうふうに責任を持てるのかが問われる次のステージに進んだと思う」
男子日本代表のキャプテン 植松遼平 選手
「選手として言い表しがたい高揚感を覚えている。オリンピックに出て結果を出せるようにより一層、気を引き締めて取り組んでいきたい」
女子日本代表 近江佑璃夏 選手
「決まるまでは夢を見ているような感覚だったが、きょうの決定でオリンピック出場が現実的な目標になったと強く感じる。女子は男子よりもさらにマイナーなので、これを機に競技が発展していくとうれしい」
また、初めての実施となるスカッシュは、イギリス発祥の球技で、4面を壁に囲まれたコートの中でラケットを持ち、ゴムでできたボールを1対1で打ち合います。
ボールのスピードは最速で時速200キロに達し、1ゲーム11点先取で5ゲームを行い、先に3ゲームを取った方が勝ちとなる形式で行われます。
世界の185の国でおよそ2000万人がプレーしているとされています。
オリンピックでは、2012年のロンドン大会から、リオデジャネイロ大会、東京大会、さらにパリ大会と、実施競技の候補に挙がりながら落選が続いてきましたが、ロサンゼルス大会で初めて採用されることになりました。
スカッシュが採用されたことを受け、日本スカッシュ協会の強化指定選手が喜びを語るとともに、5年後の大会に向けた意気込みを示しました。
日本スカッシュ協会の強化指定選手6人は、東京都内でIOCの総会を見守り追加競技に決まると、ハイタッチや握手などをして喜びを分かち合いました。
このあと、ことし3月の全日本選手権で優勝した26歳の机龍之介選手が取材に応じました。
机龍之介 選手
「スカッシュがオリンピック競技になったという実感はまだないが、スカッシュにとっても僕にとってもきょうがスタートだと思っている。出場してメダルを獲得できるように頑張っていきたい。スカッシュは老若男女問わず楽しんでいる人がいて、トップの選手になるととても激しいスポーツになる。見るスポーツとしても非常に面白いと思う」
また、10月、中国で行われたアジア大会で、日本選手として初となる銅メダルを獲得した24歳の渡邉聡美選手はイギリスの大学に通っているため、オンラインで取材に応じました。
渡邉聡美 選手
「オリンピック競技に追加されることをずっと待ち望んでいた。言葉にするのが難しいくらいうれしい。今、やっと世界のトップ選手と戦えるところまできたので、しっかりこの5年で上に立てるスカッシュを学んでメダル圏内に入りたい」
そして、スカッシュの見どころについて次のように話しました。
「壁を使うので、ボールがどこから飛んでくるかわからない変幻自在なスポーツだ。スピードとパワーがある、躍動感いっぱいなところを見てほしいと思う」