「外環道」のトンネル工事が行われていた東京・調布市の住宅街で道路の陥没が見つかってから2年となりました。高速道路会社が行う周辺の地盤の補修工事に向けて、対象世帯の半数ほどが住宅の買い取りや一時移転の交渉に応じた一方で、住民からは工事への懸念の声も上がっています。原因とされるトンネル工事をめぐるこれまでの動き、先が見えない状況に対しての住民の思いです。
東京・調布市の住宅街で、2020年10月以降、土地の陥没や地下の空洞が相次いで見つかりました。直下の地下深くでは、東日本高速道路による「東京外かく環状道路」=「外環道」のトンネルの掘削工事が行われていて、この工事が原因とみられています。
トンネルは、東京・埼玉・千葉を環状に結ぶ全長85キロの「外環道」のもので、シールドマシンと呼ばれる直径16メートルの大型機械で「大深度地下」と呼ばれる地下40メートル以上の深さで掘削工事が行われていました。
「外環道」のトンネル工事については、2022年2月、東京地方裁判所が陥没した地域を含む東名ジャンクションから中央ジャンクション付近までのおよそ9キロの区間の工事の中止を命じる決定をしていて、この区間での再開の見通しは立っていません。
一方、東日本高速道路は、トンネルの真上部分にある一部の範囲の地盤が工事の影響で緩んでいるとして2年ほどかけて補修工事を行うため、この範囲にある住宅の一時的な移転や買い取りの交渉を進めています。
住民のうち、道路が陥没した場所から70メートルほど離れた住宅に住む近田眞代さん(75)
はこの土地で40年余り暮らしています。15年前には家を建て直し、家族とともに暮らしてきましたが、2020年、家の近くの道路が陥没しているのが見つかり、さらにその後の調査で家のすぐそばの地中で空洞が見つかりました。
近田さんは当初、住み慣れた地域への愛着などから一時的に移転して戻ってこようと考えていました。
しかし、事業者が説明する期間で工事が終わるのか確信が持てず、終わりが見えない状況に疲れたとして、来年の2023年の春、別の地域に引っ越すことを決めたといいます。
近田さん
「住みやすく思い出もあるのでこのまま住んでいたいという気持ちは強いが、私たちには頑張ってずっとここにいる時間も精神力もない。この2年間でたくさんエネルギーを使い、道路の陥没の問題から離れて暮らしたいという気持ちになった」
会社によりますと、これまでに買い取りか一時移転に応じたのは半数ほどの世帯で、現場では住民の引っ越しが始まっています。会社は11月以降、準備が整いしだい、住宅の解体工事に取りかかりたいとしています。
ただ、周辺の地域ではまだ住宅の一時移転などの交渉に応じていない住民もいるほか、周辺の住民からは地盤の補修工事の振動や騒音による生活への影響や、工事による地下水への影響などについて懸念の声が上がっています。
東日本高速道路は早ければ2023年春にも補修工事を始める方針を示していて、「住民のみなさまにご迷惑、心配をおかけしおわび申し上げます。補修工事にあたってはモニタリングを実施し、振動や騒音などの影響を極力少なくするよう努めたい」としています。