頭部落下の巨大こけし クラウドファンディングで復活!【丹沢研二】

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駐車場にゴロンと転がる巨大なこけしの頭部
大崎市鳴子温泉のランドマークの一つですが、
去年2月7日、降りつもった雪の重みに耐えきれず胴体から転がり落ちてしまいました。

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これは落下前日の2月6日に撮影された写真。重そうだ…。

このこけし塔は高さが6メートルもあり、国道沿いのこけし資料館の敷地内に建っています。鳴子温泉に行ったことのある方の多くは「あれね!」と分かるのではないでしょうか。
グラスファイバー製で中身は空洞。老朽化も重なって首がとれやすくなっていました。

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資料館代表の遊佐妙子(ゆさたえこ)さん。
つぶらな目のかわいらしいこけしを作る工人です。
40年前、同じくこけし工人だった夫の博志さんとともに資料館を開きました。
巨大なこけし塔を作ったのは博志さんのアイデアだったそうです。
「夫はアイデアマンで、そういうことを考えるのが好きだったんです」
その博志さんは26年前に亡くなりました。

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こけし塔は2つあって、少し離れた場所に見つめあうように立っています。
頭が落下してしまったこけし塔は宮城県側から来るお客さん
もう一つは山形県側から来るお客さんに顔を向けています。

「夫との思い出が詰まったこけし塔を元の姿に修復したい」
遊佐さんが修復にかかる費用の見積もりを業者にお願いすると、なんと220万円。
コロナ禍で観光客も減るなか、費用が工面できず、一度は撤去するしかないとも考えました。

そんな遊佐さんに地元の仲間たちがすすめたのが
インターネットで広く出資者を募る「クラウドファンディング」でした。
仲間たちはインターネットにあまり詳しくない遊佐さんをフォローし、自己資金ではどうしてもまかなえない100万円を目標額に、9月末から資金の募集を始めました。

結果、3日で目標額を達成!
パソコンで結果を見た遊佐さんは驚き、職人たちと喜び合いました。

出資者から寄せられたコメントはこけし塔への愛であふれていました。
仙台市の女性は、亡くなった夫と鳴子温泉でデートした思い出とともに「夫が生きていれば喜んで支援したことでしょう。夫婦二人の気持ちです」と記しました。
いつも目にするこけし塔に愛着を感じていたという地元の人、鳴子温泉に観光で来たことのある人、首都圏や、遠くは福岡などからも多くの資金が集まりました。
一つ一つのコメントを見て遊佐さんは「こんなに多くの人に愛されていたなんて…」と涙がこぼれたといいます。

最終的に集まった資金は503万7000円。
頭が落ちたこけし塔はもちろん、もう一つのこけし塔も、二度と雪の重みで壊れないよう鉄骨の支柱を入れて補強し、きれいに塗り直すことができました。

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11月末に修復を終えたこけし塔。もう雪にも負けません!

遊佐さんは出資者たちに返礼品のこけしなどを送ったほか、実際に訪ねてくれた時にお土産として渡すため、小さなこけしに一人一人の名前を書いて並べました。

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その数およそ400。出資者の名前やニックネームが記されています。

冬が終わり、5月の大型連休ぐらいから出資者がよく訪ねてくるようになりました。
これまで1割の40人ほどに渡すことが出来たそうです。
「そういう方は資料館に入ってきた瞬間から雰囲気で分かります」と遊佐さんは笑います。
「一度は諦めかけましたが、クラウドファンディングをやってみて良かったです。お客さんとの距離が縮まったような気がして、それが何よりうれしいことです」
ミニこけしは感謝の気持ちを込めて1年半ほど並べるつもりだと遊佐さんは言います。
直接渡せなかった人にはその後に郵送するということです。

亡き夫が建てたこけし塔は、たくさんの思いに支えられてこれからも鳴子温泉を訪れる観光客を迎え続けます。