「親と子のメンタルヘルス」⑤ ~祖父母の役割~

24/05/10まで

健康ライフ

放送日:2024/04/12

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ#家族

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24/05/10まで

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【出演者】
尾久:尾久裕紀(おぎゅう・ひろき)さん(大妻女子大学 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

祖父母とママ・パパ、それぞれ気をつけることは?

――大妻女子大学教授、尾久裕紀さんに伺います。尾久さんは精神医学がご専門で、産業医として働く人のメンタル治療に携わり、また、大学と付属の中学・高校でも、学生や生徒さんの相談にものっていらっしゃいます。
今回のテーマは「祖父母の役割」です。
祖父母は近くにいてくれると、いざというときに頼れるのでとても心強いですし、子育ての先輩としてアドバイスもしてくれる、ありがたい存在ですよね。

尾久:
そうですね。例えば、どうしても仕事が休めない、そういうときに祖父母に子どもの面倒を見てもらった、という経験がある方も多いと思います。親世代の育児負担が軽減されますし、いろいろな大人が子どもに関わることで、子どもの社会性が育まれます。子どもの成長にもいい面があり、祖父母にとっても生きがいや充実感をもたらす機会にもなります。
一方で、祖父母が子育てに介入しすぎてトラブルになることもあります。
また、子育てに関する考え方や育児方法は、生活スタイルや育児環境の変化、医学の進歩など時代によって大きく変化しています。祖父母世代と親世代との間には、子育てに関する常識や考え方に違いが生じていることもあります。

――うーん。確かに、おじいちゃん・おばあちゃんが甘やかすから、祖父母宅から帰ってくると子どもがわがままになって困る、とか、子育てや子どもの教育について介入してくる、とかそういう話も聞きますよね。

尾久:
そうですね。

――まず、祖父母はどんなことに気をつけるといいんでしょうか。

尾久:
まず重要なことは、<子育ての主役は「ママ・パパ」>であるということです。ママとパパはいろいろな経験を通して親になっていきます。はじめは頼りなく見えるかもしれませんが、成長を見守ってください。
お互いが気持ちよく過ごすために、ママ・パパに何を手伝ってほしいのかを聞くといいです。また、祖父母ができること・できないことなどをあらかじめ具体的に伝えることも大事です。無理をしないことですね。

――たしかに、過剰に子育てに介入してくると関係が悪くなることもありますよね。

尾久:
そうですね。例えば、両親は子どものしつけをきちんとしたいと思っていますが、祖父母のほうはなんでも許してしまい、親が、がまんできない子になるんじゃないか、と心配するケースがあります。
祖父母の方は自分のことも大切にしてください。孫の世話は喜びである、あるいは、孫はかわいいからさほど気にならない、という方も、ご自分の健康に気をつけたり、趣味を楽しんだり、自分の時間を大切にすることも大事です。
孫の世話をするときは、体力的にも時間的にも余裕があるときに、短時間から預かって徐々に時間を増やしていくのがよいと思います。

――一方で、ママ・パパが子どもを預けるときに気をつけることはありますか。

尾久:
はい。まず<祖父母を頼りすぎない>ことですね。中には“子どもが苦手”という祖父母もいます。また、祖父母の生活や年齢、体力を気にかけることも大事です。
あと大事な点としては、ありがとう、とか、ごめんなさい、などの言葉を忘れないことですね。

――たとえば祖父母世代とママ・パパ世代で方針が違った場合、どうすればいいんでしょうか。

尾久:
祖父母のほうは自分の育児経験を押しつけないことですね。で、今どきの子育てもきちんと理解することが大事かと思います。あくまでも主役はママ・パパです。
全国の自治体の中には、祖父母世代に向けて現在の育児方法を知るための「祖父母手帳」や「ガイドブック」を作成して、子育て・孫育ての支援事業を行っている地域もあります。こうしたものを確認するのもいいと思います。
一方でママ・パパは、祖父母と育児方法が違うときはそれを頭から否定しないことが大事ですね。育児方法が変化していることなどをちゃんと説明して、理解してもらうことが大事かと思います。

祖父母が近くにいないような場合は?

――祖父母が近くにいないような場合、これはどうすればいいでしょうか。

尾久:
子どもを預けること自体、やはりちょっと難しいかもしれません。ただ、今どきはオンラインを使って、祖父母とお話をする機会を作ってもいいかもしれません。これは、子どもの社会性をつけるために非常に有効な手段かと思います。
それと、祖父母の方がいらっしゃらない場合でも、必ずしも祖父母でなくても、近所の人と会うということが同じようなよい効果が期待できます。

――自分ひとりで悩まずに、いろいろな人の手を借りる、ということも大事だということですね。

尾久:
そうですね。最近は核家族が多くなりまして、地域のつながりも希薄化しています。家族や地域の中で子育ての知恵や経験を共有することがなかなか難しくて、周囲の助けを求めにくくなっていることも確かです。
また、長時間労働、あるいは女性の社会進出などで、子育てが孤立化して負担が大きくなっています。
ですので、大事なことは、<ひとりで抱え込まずに誰かに相談する>ことです。
問題をひとりで抱え込んでしまっては、ますます自分を追い詰めて、解決から遠ざかってしまいます。そういう場合に、信頼できる人や祖父母などにぜひ話をしてみるといいと思います。そうしますと、自分ひとりでは気付かなかった視点や対応に気付くことがあると思います。

――では最後に、今回のポイントをお願いします。

尾久:
あくまでも主役はママ・パパ。祖父母は後方支援を。


【放送】
2024/04/12 「マイあさ!」

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24/05/10まで

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